14:45 〜 15:00
[PPS23-03] 月の光条クレータからみた過去30億年間の天体衝突史
キーワード:月, クレータ, クレータ年代学
月は過去40億年の天体衝突の記録をクレータとして保存しており、それは太陽系内側の小天体の軌道・衝突進化史を知る上で重要な情報である。天体衝突史の理解は、主にアポロとルナの岩石試料の放射年代とサンプル採取地点のクレータ数密度の関係から得られているが、岩石試料は39億年〜31億年間に集中しているため、過去30億年間の天体衝突の歴史はよく分かっていない。一方で、月の光条クレータや地球クレータの統計研究などから、ここ数億年間にクレータ生成率が上昇または減少しているという対立した仮説が提案されている。
近年、月探査の成功により高解像度の画像データによる月面の詳細画像が蓄積され、個々のクレータの精密な年代決定が可能となった。そこで、本研究では過去10億年間の衝突頻度の変動を検証する為に、月周回衛星「かぐや」の地形カメラ画像を用いて、先行研究で光条を持つと同定された直径20km以上のクレータ67個を対象に相対年代を決定した。年代決定にはクレータ年代学を用いた。クレータ年代学とは、若い地域ほどクレータが多く、古い地域ほど少ないという考えに基づいて、クレータ数密度からその地域の形成年代を見積もる方法である。クレータ (D ≥ 20 km) の形成年代は、クレータの放出物上にある微小クレータの個数密度を計測することで決定できる。
その結果、サンプルから年代が判明しているCopernicusクレータ (8.1億年)より若いクレータが27個、古いクレータが40個となった。そしてWilhelms et al. [1978]で同定されたEratosthenian (32〜8億年前)+Copernican (8.1億年〜現在) クレータと本研究で同定されたCopernicanクレータの数密度から、過去32億年間と過去8億年間の平均のクレータ生成率を比較した。若いクレータの個数から過去8.1億年間のクレータ生成率F (D ≥ 10km) は、3.77×10-6 (km-2 y-1)と見積もられた。一方、過去32億年間のクレータ生成率F (D ≥ 10km)は、5.69×10-6 (km-2 y-1)と見積もられる。このことから、過去32億年間に比べて過去8億年間の平均クレータ生成率は0.66倍と低いことが明らかとなった。地球–月系に衝突する可能性のある天体は地球近傍小天体と呼ばれ、その主なソースは小惑星帯と考えられている。本研究で得られたクレータ生成率の長期的な減少は小惑星帯からの衝突天体の供給が減少していることを意味しており、小惑星帯における小天体の総数が約30億年かけて減少していることを示唆する。
近年、月探査の成功により高解像度の画像データによる月面の詳細画像が蓄積され、個々のクレータの精密な年代決定が可能となった。そこで、本研究では過去10億年間の衝突頻度の変動を検証する為に、月周回衛星「かぐや」の地形カメラ画像を用いて、先行研究で光条を持つと同定された直径20km以上のクレータ67個を対象に相対年代を決定した。年代決定にはクレータ年代学を用いた。クレータ年代学とは、若い地域ほどクレータが多く、古い地域ほど少ないという考えに基づいて、クレータ数密度からその地域の形成年代を見積もる方法である。クレータ (D ≥ 20 km) の形成年代は、クレータの放出物上にある微小クレータの個数密度を計測することで決定できる。
その結果、サンプルから年代が判明しているCopernicusクレータ (8.1億年)より若いクレータが27個、古いクレータが40個となった。そしてWilhelms et al. [1978]で同定されたEratosthenian (32〜8億年前)+Copernican (8.1億年〜現在) クレータと本研究で同定されたCopernicanクレータの数密度から、過去32億年間と過去8億年間の平均のクレータ生成率を比較した。若いクレータの個数から過去8.1億年間のクレータ生成率F (D ≥ 10km) は、3.77×10-6 (km-2 y-1)と見積もられた。一方、過去32億年間のクレータ生成率F (D ≥ 10km)は、5.69×10-6 (km-2 y-1)と見積もられる。このことから、過去32億年間に比べて過去8億年間の平均クレータ生成率は0.66倍と低いことが明らかとなった。地球–月系に衝突する可能性のある天体は地球近傍小天体と呼ばれ、その主なソースは小惑星帯と考えられている。本研究で得られたクレータ生成率の長期的な減少は小惑星帯からの衝突天体の供給が減少していることを意味しており、小惑星帯における小天体の総数が約30億年かけて減少していることを示唆する。