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★ [SCG56-08] 日本火山学会原子力問題対応委員会「巨大噴火の予測と監視に関する提言」について
キーワード:巨大噴火, 原子力発電所
1.提言にいたる経緯と背景
日本火山学会には、他の地球科学関連学会と同様に、職務上あるいは火山専門家として防災行政や火山活動評価などに関わる会員も多い。2009年に発生したイタリアのラクイラ地震に関する裁判では火山学者1人を含め政府委員会のメンバーであった地球科学者が罪に問われた。この裁判は研究者の行政とのかかわり方を再考させるものであった。わが国では、内閣府が2013年5月16日に「大規模火山災害対策への提言」を取りまとめ、原子力規制委員会が2013年6月19日に制定した「原子力発電所の火山影響評価ガイド」においては、原発に影響する巨大噴火の兆候把握のために事業者が行う火山監視・火山活動モニタリング結果の評価に第三者として火山専門家が関わることが明記された。このような状況を念頭に置いて、日本火山学会では,原子力の問題と巨大噴火に関わる事項全般について、学術的な立場から意見交換・情報共有を行う必要性が認識され,原子力問題対応委員会(臨時)が設置された。同委員会は、2014年4月29日から3回の会合を開催し、「巨大噴火の予測と監視に関する提言」を取りまとめ、11月3日の総会で報告するとともに、日本火山学会会員並びに広く社会に周知・理解され、共有されることを期待して、日本火山学会のHPで公開した。
2.原子力問題対応委員会での検討内容
委員会は、国及び自治体の火山防災に関わった経験、原発に関する知見を有する会員7名で構成されている。第1回の会合で、火山噴火と原発に関わる問題点、火山影響評価ガイド、大規模火山災害対策への提言、気象庁の噴火警報などについて活発な意見を交わし、各委員の意見をもとに論点を絞って第2回会合で集中討議、第3回会合で以下に挙げる基本的認識を全員で共有し、「巨大噴火の予測と監視に関する提言」を取りまとめた。
○ 内閣府の提言では、巨大噴火に関する知見は非常に限られていて、噴火予知や対応策について研究を進める体制も整っていないとしているが、火山影響評価ガイドでは、火山モニタリングにより、原子炉の停止、核燃料の搬出等の措置ができる時間的余裕をもって、巨大噴火の兆候の把握が可能であることを前提としている。また、火山影響評価ガイド作成に当たって、内閣府及び火山監視の公的機関である気象庁との事前協議はなされていない。巨大噴火の監視体制や必要となる調査研究・モニタリング等については関係省庁を含む場で検討されるべきである。
○ 火山研究者は、火山のモニタリングによる噴火予測の可能性,限界や曖昧さ、並びに巨大噴火の予測や監視に関わる現在の状況や今後の取り組みのあり方などを、公開の場で説明する必要がある。
【巨大噴火の予測と監視に関する提言(日本火山学会原子力問題対応委員会)】
巨大噴火の予測や火山監視は,内閣府の大規模火山災害対策への提言(平成25年5月16日)や,原子力発電所の火山評価ガイド(平成25年6月19日)等により,重要な社会問題となっている。
○ 巨大噴火(≧VEI6)の監視体制や噴火予測のあり方について
日本火山学会として取り組むべき重要な課題の一つと考えられる。 巨大噴火については、国(全体)としての対策を講じる必要があるため、関係省庁を含めた協議の場が設けられるべきである。 協議の結果については、原子力施設の安全対策の向上等において活用されることが望ましい。
○ 巨大噴火の予測に必要となる調査・研究について
応用と基礎の両面から推進することが重要である。 成果は、噴火警報に関わる判断基準の見直しや、精度の向上に活用されることが重要である。
○ 火山の監視態勢や噴火警報等の全般に関して
近年の噴火事例において表出した課題や、火山の調査・観測研究の将来(技術・人材育成)を鑑み、国として組織的に検討し、維持・発展させることが重要である。 噴火警報を有効に機能させるためには、噴火予測の可能性、限界、曖昧さの理解が不可欠である。火山影響評価ガイド等の規格・基準類においては、このような噴火予測の特性を十分に考慮し、慎重に検討すべきである。
日本火山学会には、他の地球科学関連学会と同様に、職務上あるいは火山専門家として防災行政や火山活動評価などに関わる会員も多い。2009年に発生したイタリアのラクイラ地震に関する裁判では火山学者1人を含め政府委員会のメンバーであった地球科学者が罪に問われた。この裁判は研究者の行政とのかかわり方を再考させるものであった。わが国では、内閣府が2013年5月16日に「大規模火山災害対策への提言」を取りまとめ、原子力規制委員会が2013年6月19日に制定した「原子力発電所の火山影響評価ガイド」においては、原発に影響する巨大噴火の兆候把握のために事業者が行う火山監視・火山活動モニタリング結果の評価に第三者として火山専門家が関わることが明記された。このような状況を念頭に置いて、日本火山学会では,原子力の問題と巨大噴火に関わる事項全般について、学術的な立場から意見交換・情報共有を行う必要性が認識され,原子力問題対応委員会(臨時)が設置された。同委員会は、2014年4月29日から3回の会合を開催し、「巨大噴火の予測と監視に関する提言」を取りまとめ、11月3日の総会で報告するとともに、日本火山学会会員並びに広く社会に周知・理解され、共有されることを期待して、日本火山学会のHPで公開した。
2.原子力問題対応委員会での検討内容
委員会は、国及び自治体の火山防災に関わった経験、原発に関する知見を有する会員7名で構成されている。第1回の会合で、火山噴火と原発に関わる問題点、火山影響評価ガイド、大規模火山災害対策への提言、気象庁の噴火警報などについて活発な意見を交わし、各委員の意見をもとに論点を絞って第2回会合で集中討議、第3回会合で以下に挙げる基本的認識を全員で共有し、「巨大噴火の予測と監視に関する提言」を取りまとめた。
○ 内閣府の提言では、巨大噴火に関する知見は非常に限られていて、噴火予知や対応策について研究を進める体制も整っていないとしているが、火山影響評価ガイドでは、火山モニタリングにより、原子炉の停止、核燃料の搬出等の措置ができる時間的余裕をもって、巨大噴火の兆候の把握が可能であることを前提としている。また、火山影響評価ガイド作成に当たって、内閣府及び火山監視の公的機関である気象庁との事前協議はなされていない。巨大噴火の監視体制や必要となる調査研究・モニタリング等については関係省庁を含む場で検討されるべきである。
○ 火山研究者は、火山のモニタリングによる噴火予測の可能性,限界や曖昧さ、並びに巨大噴火の予測や監視に関わる現在の状況や今後の取り組みのあり方などを、公開の場で説明する必要がある。
【巨大噴火の予測と監視に関する提言(日本火山学会原子力問題対応委員会)】
巨大噴火の予測や火山監視は,内閣府の大規模火山災害対策への提言(平成25年5月16日)や,原子力発電所の火山評価ガイド(平成25年6月19日)等により,重要な社会問題となっている。
○ 巨大噴火(≧VEI6)の監視体制や噴火予測のあり方について
日本火山学会として取り組むべき重要な課題の一つと考えられる。 巨大噴火については、国(全体)としての対策を講じる必要があるため、関係省庁を含めた協議の場が設けられるべきである。 協議の結果については、原子力施設の安全対策の向上等において活用されることが望ましい。
○ 巨大噴火の予測に必要となる調査・研究について
応用と基礎の両面から推進することが重要である。 成果は、噴火警報に関わる判断基準の見直しや、精度の向上に活用されることが重要である。
○ 火山の監視態勢や噴火警報等の全般に関して
近年の噴火事例において表出した課題や、火山の調査・観測研究の将来(技術・人材育成)を鑑み、国として組織的に検討し、維持・発展させることが重要である。 噴火警報を有効に機能させるためには、噴火予測の可能性、限界、曖昧さの理解が不可欠である。火山影響評価ガイド等の規格・基準類においては、このような噴火予測の特性を十分に考慮し、慎重に検討すべきである。