日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-06] 宇宙・太陽から地球表層までのシームレスな科学の新展開

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*松見 豊(名古屋大学太陽地球環境研究所)、草野 完也(名古屋大学太陽地球環境研究所)、石坂 丞二(名古屋大学地球水循環研究センター)、坪木 和久(名古屋大学・地球水循環研究センター)、榎並 正樹(名古屋大学 年代測定総合研究センター)

18:15 〜 19:30

[U06-P19] 北欧トロムソにおけるEISCATレーダーを中心とした電離圏・熱圏・中間圏拠点観測

*野澤 悟徳1宮岡 宏2大山 伸一郎1小川 泰信2堤 雅基2塩川 和夫1大塚 雄一1津田 卓雄3川原 琢也4斎藤 徳人5和田 智之5川端 哲也1藤原 均6高橋 透1水野 亮1ホール クリス7ブレッケ アスゲイア8藤井 良一1 (1.名古屋大学太陽地球環境研究所、2.国立極地研究所、3.電気通信大学、4.信州大学工学部、5.理化学研究所光量子工学研究領域、6.成蹊大学理工学部、7.トロムソ大学TGO、8.トロムソ大学理学部)

キーワード:熱圏, 電離圏, 中間圏, EISCATレーダー, ナトリウムライダー, 北極域

我々は、ノルウェー・トロムソ(北緯69.6度、東経19.2度)のEISCATレーダートロムソ観測所に、複数の観測装置を設置、運用し、北極域中間圏・熱圏・電離圏の総合観測を実施している。本講演では、トロムソでの拠点観測の概要を紹介し、代表的な研究成果を紹介する。また、将来計画についても述べる。
 欧州非干渉散乱(EISCAT)レーダーシステムは、スカンジナヴィア北部トロムソ(ノルウェー)、キルナ(スウェーデン)、ソダンキラ(フィンランド)とスヴァールバル諸島ロングイアビンに設置されている世界で第一級の非干渉散乱レーダーシステムである。このレーダーシステムは、極冠域からカスプ、オーロラ帯、サブオーロラ帯にまでいたる広い領域をカバーしている。中心サイトであるトロムソには、EISCAT UHFレーダーとVHFレーダーが稼働している。EISCAT UHFレーダーは、通常高度90 kmより500 km領域において、基本的なプラズマパラメーター(電子密度、イオン温度、電子温度、イオン速度)を取得している。これらのデータは、オーロラダイナミクス、電離圏電流、電離圏電気伝導度、電場変動、下部熱圏大気ダイナミクスなどの研究に広く使われている。一方、EISCAT VHFレーダーは、D領域の観測(高度60 km以上)や、トップサイド(高度約300-1000 km)の観測に主に利用され、降下高エネルギー粒子やイオン上昇流の研究等に広く利用されている。様々な現象のより深い理解のため、我々は1998年以降各種の観測装置をトロムソに設置し、主にトロムソ大学とEISCAT科学協会との連携のもと運用している。具体的には、下層大気から伝搬する大気波動の高度変動を詳しく調べるため、中間圏風速変動観測用のMFレーダーや流星レーダーの運用、オーロラの時間・空間変動やオーロラ降下粒子の観測のための、全天イメージャーやフォトメータの運用である。下部熱圏(90-120 km)風速を高度・時間分解能良く導出できる地上観測装置は、非干渉散乱レーダーだけであり、中間圏風速測定を加えることにより、高度70 kmから120 kmまでの大気波動の高度変動の観測が可能となる。また、EISCATレーダーは、高度方向に精度良く観測できるが、面的な観測には向いていない。そこで、空間的広がりを抑えることができるイメージャーを併用することにより、EISCATレーダーの観測領域が、オーロラのどの部分に対応しているかが判別でき、オーロラダイナミクスや電流系についての詳細な研究が可能となる。
 名古屋大学太陽地球環境研究所(STEL)のグループは、1998年から中間圏風速測定用のMFレーダーの共同運用に参加した。それ以降、オーロラ観測用のフォトメータ、プロトンイメジャーを設置した。さらに、2009年には、熱圏風速測定用のファブリペローイメージャ(FPI)や大気波動観測用の大気光イメージャーを設置した。これらの観測装置は、冬期自動観測により運用している。そして、2010年秋から、ナトリウムライダーにより高度80-110 kmの大気温度・ナトリウム密度の詳細観測を暗夜期間(10月から3月)に実施している。2012年秋からは、風速測定も実施している。一方国立極地研究所(NIPR)のグループは、2003年冬に高度 80-100 km の風速を測定する流星レーダーの運用を開始し、さらに、オーロラ観測用の高速イメージャー群を2003年以降に整備・拡張している。また、STELとNIPRが中心となり、衛星ビーコン受信機や多点のGPS受信機等による電離圏シンチレーション観測を2008年3月から実施している。これらの観測装置の運用により、トロムソ観測所は、中間圏・熱圏・電離圏の世界屈指の観測拠点となっている。講演では、これらの観測機器を紹介するとともに、代表的な研究成果について紹介する。さらに、成層圏・中間圏大気微量成分観測用のミリ波受信器の設置やEISCAT_3D計画など、将来計画についても報告する予定である。