11:45 〜 12:00
[U07-09] 御嶽山噴火後の国・自治体の取り組みと課題
キーワード:火山噴火, 御嶽火山, 防災対策, 行政, 政府, 自治体
はじめに 2014年9月27日御嶽山が水蒸気噴火し、火口からあふれ出した火砕流に続いて大量の噴石が火口から1kmの範囲に飛散し、山頂付近でくつろいでいた多くの登山者を襲った。死者57名、行方不明6名(2014年末現在)という大惨事となった。噴火の規模は、多くのマグマ噴火に比較して小規模であったが、登山ブームで山頂火口付近に人が集まる季節と時間帯であったため多くの犠牲者が出た。噴火の3週間前に山頂直下での地震活動の高まりがあったものの噴火警戒レベルを1から2に上げることができず、さらに火山活動の高まった情報が登山者に周知されなかったことが被害を大きくした。また御嶽山は文科省の選定した重点的に観測研究を行う火山にも含まれていなかった。この事態を受け、気象庁・文部科学省・中央防災会議に加え、地元の長野県・岐阜県も火山防災対策の見直しを進めることとなった。筆者はこの動きの多くに学識経験者として参加することとなった。本講演では、国や自治体の取り組みを紹介するとともに、そのなかで明らかになった課題も指摘したい。
御嶽山噴火後の国・自治体の対応 御嶽山噴火をきっかけとして、国や自治体が火山防災対策の見直しを進め始めた。気象庁は、従来の観測網が比較的前兆の出にくい水蒸気噴火に十分対応できていなかったことを認識し、噴火予知連絡会の下の火山観測体制等に関する検討会と火山情報の提供に関する検討会で、監視・観測のあり方および防災情報提供のあり方について検討を始めた。文部科学省では測地学分科会地震火山部会において、火山観測研究に関する現状の課題を整理し,今後の対応の検討を行った。中央防災会議では、全国の常時観測火山について火山防災協議会の設置を改めて求めるとともに、火山防災対策推進ワーキンググループを組織して国としての対策を検討することになった。御嶽のまたがる長野県と岐阜県では、それぞれ対策を打ち出した。長野県では御嶽山噴火災害への今後の対応を発表した。また岐阜県では火山防災対策検討会議を組織して、県としての火山防災上の諸課題を洗い出して今後の噴火に備えについて検討を行った。また従来、長野県と岐阜県とそれぞれが独自に設置をしていた御嶽山火山防災協議会を、両県合同の協議会としてあらためて設立した。
現状の課題 現状の火山防災においては、上記の組織がそれぞれの所掌の範囲で最大限の努力をしている。文部科学省は火山災害軽減のための基礎的・学術的研究を推進している。気象庁は火山活動の監視・観測を行っている。内閣府では国全体としての火山防災を推し進めている。上記以外の組織においても、産業技術総合研究所では火山地質やガスの調査を行っている。国土地理院はGNSSや合成開口レーダの解析を通じ測地学的調査を行っている。また国土交通省の砂防部は火山の土砂移動に関する防災対策を進めている。しかしながら、現状では、個々の火山噴火の個性がある中で、効果的に総合的期火山防災を進めていく戦略性に欠けていると言わざるを得ない。例えば、地震防災では行われてきた全国の活断層の調査に対応する、全国の活火山調査のような防災のための基礎的調査さえも戦略的に議論されたことは無い。火山防災対策の戦略的推進は、個々の火山においては火山防災協議会が担うべきものかも知れないが、実力・予算ともに不充分である。
連合に求められること 地球惑星科学連合は、研究者の集まりである。火山防災においては、基礎研究・学術研究の発展に責任を負う立場であるが、それだけでは戦略的な火山災害軽減策に十分貢献できているとは言えない。基礎的調査研究から防災インフラや監視観測までふくめて、ローカルからグローバルに、短期から長期に、あるべき姿を描くことは、行政とは離れた位置にある学協会等の組織にしかできない任務である。
御嶽山噴火後の国・自治体の対応 御嶽山噴火をきっかけとして、国や自治体が火山防災対策の見直しを進め始めた。気象庁は、従来の観測網が比較的前兆の出にくい水蒸気噴火に十分対応できていなかったことを認識し、噴火予知連絡会の下の火山観測体制等に関する検討会と火山情報の提供に関する検討会で、監視・観測のあり方および防災情報提供のあり方について検討を始めた。文部科学省では測地学分科会地震火山部会において、火山観測研究に関する現状の課題を整理し,今後の対応の検討を行った。中央防災会議では、全国の常時観測火山について火山防災協議会の設置を改めて求めるとともに、火山防災対策推進ワーキンググループを組織して国としての対策を検討することになった。御嶽のまたがる長野県と岐阜県では、それぞれ対策を打ち出した。長野県では御嶽山噴火災害への今後の対応を発表した。また岐阜県では火山防災対策検討会議を組織して、県としての火山防災上の諸課題を洗い出して今後の噴火に備えについて検討を行った。また従来、長野県と岐阜県とそれぞれが独自に設置をしていた御嶽山火山防災協議会を、両県合同の協議会としてあらためて設立した。
現状の課題 現状の火山防災においては、上記の組織がそれぞれの所掌の範囲で最大限の努力をしている。文部科学省は火山災害軽減のための基礎的・学術的研究を推進している。気象庁は火山活動の監視・観測を行っている。内閣府では国全体としての火山防災を推し進めている。上記以外の組織においても、産業技術総合研究所では火山地質やガスの調査を行っている。国土地理院はGNSSや合成開口レーダの解析を通じ測地学的調査を行っている。また国土交通省の砂防部は火山の土砂移動に関する防災対策を進めている。しかしながら、現状では、個々の火山噴火の個性がある中で、効果的に総合的期火山防災を進めていく戦略性に欠けていると言わざるを得ない。例えば、地震防災では行われてきた全国の活断層の調査に対応する、全国の活火山調査のような防災のための基礎的調査さえも戦略的に議論されたことは無い。火山防災対策の戦略的推進は、個々の火山においては火山防災協議会が担うべきものかも知れないが、実力・予算ともに不充分である。
連合に求められること 地球惑星科学連合は、研究者の集まりである。火山防災においては、基礎研究・学術研究の発展に責任を負う立場であるが、それだけでは戦略的な火山災害軽減策に十分貢献できているとは言えない。基礎的調査研究から防災インフラや監視観測までふくめて、ローカルからグローバルに、短期から長期に、あるべき姿を描くことは、行政とは離れた位置にある学協会等の組織にしかできない任務である。