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[SVC47-06] 斜長石およびメルト包有物組成からみた阿蘇-4火砕流マグマ溜りの層構造
キーワード:阿蘇-4火砕流, マグマ溜り, メルト包有物, 斜長石
日本における最大規模の噴火である阿蘇-4火砕噴火は,噴出物の層序学的関係が多くの研究者によって明らかにされており,巨大火砕噴火の推移を研究するのに適している.阿蘇-4火砕噴火第1サイクルの小谷軽石流堆積物(以下,小谷),肥猪火山灰流堆積物(以下,肥猪),八女軽石流堆積物(以下,八女),弁利スコリア流堆積物(以下,弁利スコリア,軽石)の斜長石斑晶,および斑晶鉱物に含まれるメルト包有物の組成をEPMAによって測定し,小谷,肥猪のメルト包有物の含水量をFT-IRによって測定した.
軽石中に含まれる斜長石の組成分布は,単一ピーク(肥猪)から二山ピーク(小谷,八女)に変化し,また単一ピークになる(弁利軽石).斜長石の組成幅はより時間推移とともに広くなり弁利軽石,スコリアで最大になる.最大ピークの中央値は,An=35%(肥猪),An45%(小谷,八女,弁利軽石),An90%(弁利スコリア)であるが,すべての試料にAn55%組成の斜長石が少量含まれる.コアとリムの組成に顕著な違いは見つからなかった.
軽石の全岩化学組成は肥猪,八女ではSiO2=68~70%,小谷はSiO2=67~70%,弁利軽石はSiO2=66~67%であった.しかし,斜長石,斜方輝石斑晶に含まれるメルト包有物のガラスでは,分析した肥猪と小谷の間で明瞭な違いが認められた.肥猪のメルト包有物はSiO2=73~74%の狭い組成領域に分布するが,小谷のメルト包有物は肥猪の組成領域を含み,SiO2=71~74%のやや広い組成範囲を示す.椎原(2014)が,カルデラ東方のAso-4Aテフラで同様の関係をもつ2種のガラス組成,すなわちGroup1(SiO2=73-74%), Group2(SiO2=71-72.5%)を報告しており,それぞれ肥猪と八女の火砕流堆積物のガラスに対応すると議論した.椎原(2014)の肥猪と八女ガラスが,本論の肥猪および小谷メルト包有物とほぼ同じ組成を示すことから,両者はそれぞれ,同じメルトを代表することが推定された.すなわち,西方に流れた小谷火砕流と東および北西方向に流れた八女火砕流は,ほぼ同じマグマ供給系由来である可能性がある.
含水量は肥猪のメルト包有物は4%以上,シリカにやや乏しい小谷ガラス包有物は2~4%であった.塩素濃度は肥猪のメルト包有物の方が小谷より高いが,硫黄はシリカに乏しい小谷の方がやや高い含有量を示す.
以上をまとめると,肥猪は1つのマグマ液相を,小谷,八女,弁利軽石は2つのマグマ液相を代表すると考えられる.わずかな量のAn55組成の斜長石と平衡なややマフィックなマグマは検出されていないが,噴火前の混合過程の端成分であったことが示唆される.さらに第1サイクルの最後のステージで弁利スコリア(斜長石はAn90)に代表される最もマフィックなメルトが出現した.阿蘇-4の成層マグマ溜りは上部から肥猪メルト,小谷・八女メルト,"An55"メルト,弁利スコリアメルトがあったことが,岩石学的につきとめられた.これらのデータを最も説明しやすいモデルは成層マグマ溜まりの上層からの段階的なマグマ混合,排出であろう.
軽石中に含まれる斜長石の組成分布は,単一ピーク(肥猪)から二山ピーク(小谷,八女)に変化し,また単一ピークになる(弁利軽石).斜長石の組成幅はより時間推移とともに広くなり弁利軽石,スコリアで最大になる.最大ピークの中央値は,An=35%(肥猪),An45%(小谷,八女,弁利軽石),An90%(弁利スコリア)であるが,すべての試料にAn55%組成の斜長石が少量含まれる.コアとリムの組成に顕著な違いは見つからなかった.
軽石の全岩化学組成は肥猪,八女ではSiO2=68~70%,小谷はSiO2=67~70%,弁利軽石はSiO2=66~67%であった.しかし,斜長石,斜方輝石斑晶に含まれるメルト包有物のガラスでは,分析した肥猪と小谷の間で明瞭な違いが認められた.肥猪のメルト包有物はSiO2=73~74%の狭い組成領域に分布するが,小谷のメルト包有物は肥猪の組成領域を含み,SiO2=71~74%のやや広い組成範囲を示す.椎原(2014)が,カルデラ東方のAso-4Aテフラで同様の関係をもつ2種のガラス組成,すなわちGroup1(SiO2=73-74%), Group2(SiO2=71-72.5%)を報告しており,それぞれ肥猪と八女の火砕流堆積物のガラスに対応すると議論した.椎原(2014)の肥猪と八女ガラスが,本論の肥猪および小谷メルト包有物とほぼ同じ組成を示すことから,両者はそれぞれ,同じメルトを代表することが推定された.すなわち,西方に流れた小谷火砕流と東および北西方向に流れた八女火砕流は,ほぼ同じマグマ供給系由来である可能性がある.
含水量は肥猪のメルト包有物は4%以上,シリカにやや乏しい小谷ガラス包有物は2~4%であった.塩素濃度は肥猪のメルト包有物の方が小谷より高いが,硫黄はシリカに乏しい小谷の方がやや高い含有量を示す.
以上をまとめると,肥猪は1つのマグマ液相を,小谷,八女,弁利軽石は2つのマグマ液相を代表すると考えられる.わずかな量のAn55組成の斜長石と平衡なややマフィックなマグマは検出されていないが,噴火前の混合過程の端成分であったことが示唆される.さらに第1サイクルの最後のステージで弁利スコリア(斜長石はAn90)に代表される最もマフィックなメルトが出現した.阿蘇-4の成層マグマ溜りは上部から肥猪メルト,小谷・八女メルト,"An55"メルト,弁利スコリアメルトがあったことが,岩石学的につきとめられた.これらのデータを最も説明しやすいモデルは成層マグマ溜まりの上層からの段階的なマグマ混合,排出であろう.