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[BPT27-01] ガスキエス氷期の続成痕跡とそのエディアカラ紀層序に対する意義
地球史を通じて頻繁に生じた無機炭素同位体のエクスカーションは,生物進化と絶滅イベントと同調する一方で,大規模環境変動にも対応する. 多細胞動物が大きく進化したエディアカラ紀 (635 ? 542 Ma)においても,いくつかのエクスカーションが記録されている.南中国に分布するエディアカラ系堆積岩である揚子プラットフォームは変成度が低く,解像度の高い無機炭素同位体比プロファイルが多く報告されている (e.g. Sawaki et al., 2010).その多くは汎世界的であると認定できるが,Doushantuo層中部に確認された負のエクスカーションは南部中国に特有のものであり,ガスキエス氷期に対比される (Tahata et al., 2013).本研究では,湖南省北西部Yangjiapingセクションで確認された約15‰で細かな変動を持つ負のエクスカーション(Kunimitsu et al., 2011)について,セメントなどの続成成分を詳細に検討した.特異なエクスカーションが確認されたのは,YangjiapingセクションのDoushantuo 層Unit 3中部?上部である.ここでは,方解石セメントの無機炭素同位体が~25‰,酸素同位体が~2‰ほど全岩の値より低いことが分った.これを説明するための最も有力なプロセスは,天水続成環境での有機物酸化である.方解石セメントを生成するためには,やや嫌気的な環境で起こる硫酸還元とのカップリングが想定され,共産するパイライトはそれを支持している.Yangjiapingセクションは化石産出で有名な貴州省Wenganとともに南中国プラットフォーム内でも最も浅い位置にあり,海水準低下により堆積場は陸上に露出したと思われる.この負のエクスカーションのいくつかの特徴は模式値のDoushantuo 層中部やWenganの古土壌層下位のエクスカーションとも共通する.すなわち陸上露出はエディアカラ紀中頃(580 Ma)に起きたガスキエス氷期にともなうものと考えられる.Doushantuo層Unit 3にはリン酸に富む堆積物があり,氷期に伴う湧昇水強化を暗示する。ガスキエス氷期は栄養塩と酸素を海洋に効率的に循環させ,その後の動物進化を促したと考えられる.