日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

2015年5月28日(木) 09:00 〜 10:30 304 (3F)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)、座長:大倉 敬宏(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)、宮城 磯治(産業技術総合研究所 地質情報研究部門)

09:45 〜 10:00

[SVC45-07] 阿蘇中岳2014年11月以降の噴出物の岩石学的記載

*長谷中 利昭1磯部 博志1杉山 芙実子1永田 紘樹2永松 允積3森 康4 (1.熊本大学大学院自然科学研究科、2.阿蘇ジオパーク推進協議会、3.熊本市北区、4.北九州市立自然史・歴史博物館)

キーワード:阿蘇火山, 中岳, 噴火, 岩石記載, 化学組成

阿蘇中岳は2014年11月25日にスコリア噴出を伴うマグマ噴火をした.今回の噴火は早いステージでストロンボリ式噴火が始まったことが特徴で,11月26日夜?27日には直径最大30cmのスコリアを火口周辺に放出した.11月27日に火口縁で採集されたスコリアと火山灰の岩石学的な記載と化学組成を報告する.
 入手した約5cm径のスコリアの顕微鏡下の特徴は,多孔質で,球形の気泡に富み,それらが互いに接しており,気泡間の隙間や壁に斑晶,微斑晶および石基が見られた.斑晶鉱物,微斑晶鉱物ともに自形のかんらん石,単斜輝石,斜長石を含む.さらに反応縁を持つ斜方輝石斑晶をまれに,斑晶?微斑晶サイズの不透明鉱物をわずか含む.石基は淡褐色のガラスが大部分を占め,ハイアロピリティック組織を示す.全岩化学分析の結果,MgOが少ない玄武岩質安山岩であることがわかった.比較のために火口北西で採集された1989年頃のスコリア転石を記載,分析した.これらも多孔質であるが,今回噴火のスコリア試料に比べると気泡がやや少なく,気泡同士が接していない.斑晶鉱物,微斑晶鉱物には自形のかんらん石,単斜輝石,斜長石を含む.反応縁を持つ斜方輝石斑晶,微斑晶?石基サイズの不透明鉱物をわずかに含む.斜長石の中には虫食い状組織を示すものがあり,虫食い部分はガラスが占めている.石基はインターサータル組織を示し,マイクロライトと濃褐色ガラスが占める.MgOが少ない玄武岩である.
 火口縁で11月27日に採集された火山灰はかんらん石,単斜輝石,斜長石を含み,観察した中には斜方輝石は認められなかった.斜長石の中には虫食い状組織を示すものもいくらか含まれていた.鉱物片に石基組織が付着した火山岩片も多く認められた.発泡しているものは少なかった.今回噴出したスコリアの石基に見られた淡褐色ガラス片も含まれていたが数は少なく,濃褐色ガラス片あるいはマイクロライトを含む火山岩片が多く観察された.新鮮な火山岩片だけでなく変質した火山岩片,鉱物片もいくらか含まれていた.
 三好ら(2005)はカルデラ形成後,中央火口丘群で活動したマグマを化学組成,鉱物組合せなどが異なる7種類のグループに分類した.今回分析したスコリア試料はそれらのうちのグループVII(斜方輝石かんらん石単斜輝石玄武岩?玄武岩質安山岩)に含まれる.グループVIIの火山岩は主に中岳,高岳,往生岳,杵島岳,米塚などに産し,単斜輝石の反応縁を持つ斜方輝石や虫食い状の斜長石が特徴的に観察される.今回観察したスコリア試料にもまれではあるが,反応縁を持つ斜方輝石が認められたが.虫食い状の斜長石は認められず,火山灰粒子にのみ認められた.阿蘇の火山噴出物の岩石学的特徴は,深部から供給されるマフィックマグマと浅部に存在するフェルシックマグマ溜りが反応するマグマ供給系モデルを考えれば,説明が可能である.