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[SSS24-P05] リアルタイム地震被害推定システム(J-RISQ)による2014年長野県神城断層地震の被害推定
キーワード:J-RISQ, リアルタイム, 被害推定, 長野県神城断層地震, K-NET, KiK-net
地震発生直後に迅速に被害状況を把握することは、より適切な初動体制を確立するための意志決定や災害対応を行う上で極めて重要である。防災科学技術研究所では、地震ハザードステーション(J-SHIS)の開発にあたり蓄積してきた表層地盤の増幅特性データや人口・建物に関する情報等の基本情報や、地震動の予測手法、建物の被害評価手法と、K-NETやKiK-netから得られるリアルタイム強震データ等の観測データを組み合わせることで、地震発生直後において、これまでよりも更に早い段階で初動対応の適切な意志決定等に役立つ被害推定情報を提供することを目指したリアルタイム地震被害推定システム(J-RISQ)の試作版を構築し、現在試験的な運用を行っている(青井・他, 2013, Nakamura et al., 2013)。このシステムは、基本的に震源の情報は用いず、観測点で得られる震度情報から微地形区分による揺れやすさを考慮した面的な地震動分布を推定し、それを入力とした震度曝露人口の推定や、建物種別や建築年代を属性として持つ建物モデルに被害率曲線を適用することで建物被害推定を行う。こうして得られるリアルタイム推定情報の一部(推定震度分布や震度曝露人口等)は、「J-RISQ地震速報」として、概ね震度3以上を観測した地震に対して、地震発生直後よりWEB公開を行っている(http://www.j-risq.bosai.go.jp/)。本研究では、2014年11月22日に発生した長野県神城断層地震(以下、神城断層地震)におけるJ-RISQの推定状況について報告する。
神城断層地震において、J-RISQでは第1報から5報までの推定を行っている。第1報は地震発生から約27秒後に12観測点の情報(そのうち最大震度は白馬村の震度5強)を用いて推定を行っており、その結果震度5弱以上の曝露人口2万人、建物被害については全壊棟数1棟、半壊棟数10棟という推定結果を得た。最終的に第5報は、地震発生から約11分後に1567観測点の情報(そのうち最大震度は長野市、小川村、小谷村の震度6弱)を用いて推定が行われ、その結果震度5弱以上の曝露人口が20万人、震度6弱以上の曝露人口が2万人、建物被害については、全壊棟数46棟、半壊棟数186棟という推定結果を得た。建物被害推定結果について、実被害の情報となる消防庁の災害情報(第21報)と比較すると、J-RISQの推定結果は過小評価の傾向がみられるものの概ね調和的なものであった。一方、白馬村堀之内地区で見られたような集中的な被害は推定できていない。今後、地震動を推定するための地下構造モデル等の高度化が必要と考える。
謝辞
J-RISQで用いている地方自治体及び気象庁の震度データは気象庁より提供して頂いている。
神城断層地震において、J-RISQでは第1報から5報までの推定を行っている。第1報は地震発生から約27秒後に12観測点の情報(そのうち最大震度は白馬村の震度5強)を用いて推定を行っており、その結果震度5弱以上の曝露人口2万人、建物被害については全壊棟数1棟、半壊棟数10棟という推定結果を得た。最終的に第5報は、地震発生から約11分後に1567観測点の情報(そのうち最大震度は長野市、小川村、小谷村の震度6弱)を用いて推定が行われ、その結果震度5弱以上の曝露人口が20万人、震度6弱以上の曝露人口が2万人、建物被害については、全壊棟数46棟、半壊棟数186棟という推定結果を得た。建物被害推定結果について、実被害の情報となる消防庁の災害情報(第21報)と比較すると、J-RISQの推定結果は過小評価の傾向がみられるものの概ね調和的なものであった。一方、白馬村堀之内地区で見られたような集中的な被害は推定できていない。今後、地震動を推定するための地下構造モデル等の高度化が必要と考える。
謝辞
J-RISQで用いている地方自治体及び気象庁の震度データは気象庁より提供して頂いている。