日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG09] Satellite Earth Environment Observation

2015年5月28日(木) 09:00 〜 10:45 301B (3F)

コンビーナ:*沖 理子(宇宙航空研究開発機構)、早坂 忠裕(東北大学大学院理学研究科)、佐藤 薫(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)、佐藤 正樹(東京大学大気海洋研究所)、高橋 暢宏(独立行政法人 情報通信研究機構)、本多 嘉明(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、奈佐原 顕郎(筑波大学生命環境系)、中島 孝(東海大学情報理工学部情報科学科)、沖 大幹(東京大学生産技術研究所)、横田 達也(独立行政法人国立環境研究所)、高薮 縁(東京大学 大気海洋研究所)、村上 浩(宇宙航空研究開発機構地球観測研究センター)、岡本 創(九州大学)、座長:久保田 拓志(宇宙航空研究開発機構 地球観測研究センター)

10:30 〜 10:45

[ACG09-19] GPM版全球降水マップ(GPM-GSMaP)の作成と改良計画

*可知 美佐子1久保田 拓志1青梨 和正2牛尾 知雄3重 尚一4妻鹿 友昭3山本 宗尚4高薮 縁5 (1.宇宙航空研究開発機構地球観測研究センター、2.気象研究所、3.大阪大学大学院 工学研究科、4.京都大学大学院 理学研究科、5.東京大学 大気海洋研究所)

キーワード:衛星観測, 降水量, 高解像度, 高頻度, GSMaP, GPM

日米が主導する全球降水観測(GPM)計画において、最終出力ともいえる、全球降水マップについては、日米合同の標準プロダクトは存在せず、日米それぞれのニーズに基づき、独自のプロダクトとして個別に開発されている。日本の全球合成降水マッププロダクトは、Global Satellite Mapping of Precipitation (GSMaP) が採用されている。GSMaPは、衛星搭載のマイクロ波放射計のデータを用い、信頼できる降水物理モデルに基づいて開発された降水強度推定アルゴリズムを用い、熱帯降雨観測衛星(TRMM)搭載の降雨レーダや雷観測装置の情報によるデータベースや、静止気象衛星のIR放射計データも総合的に利用した全球降雨分布のプロダクトである。2007年以降、GSMaPは、準リアルタイム版「世界の雨分布速報」(GSMaP_NRT)及び標準版(GSMaP_MVK)として、JAXAのウェブサイトから公開されている(http://www.eorc.jaxa.jp/GSMaP/)。観測から約4時間後に、0.1度格子の分解能で、1時間毎の全球降雨マップのブラウズ画像や、バイナリやテキスト形式のデータ等を、ウェブサイトから公開している。2015年1月末現在の利用登録者数は1214名である。GPM主衛星打ち上げ時点でのGSMaPアルゴリズムのバージョンは5であり、GPM計画での標準プロダクト化に向けて、GPMマップアルゴリズムチームによって改良が進められてきた。
GPM版GSMaP(GPM-GSMaP)は、2014年9月2日にJAXAのデータ提供システムG-Portalからアルゴリズムバージョン6(プロダクトバージョンはV03)の一般公開が開始された。同時に、これまでの「世界の雨分布速報」のウェブサイトからも、G-Portalで提供しているのと同じデータが、これまでどおりのフォーマットで引き続き提供されている。今後、GCOM-W/AMSR2のレベル1プロダクトのバージョンアップが計画されているため、SSM/Iリトリーバルの修正を含めて、2015年3~4月にマイナーバージョンアップを行う予定である。
現在、G-Portalでは、2014年2月以降の期間のGPM-GSMaPしか公開していないが、これ以前の期間についても、2000年3月以降の期間について、同じアルゴリズムを適用したGSMaP気候プロダクト(GSMaP_CLM)を公開する予定で、現在処理を行っている。GSMaP_CLMは、ルックアップテーブル作成に利用している気象情報が長期間必要なため、数年毎にモデルが変わってしまう気象庁客観解析ではなく、55年長期再解析(JRA55)データを利用した。これらのデータについては、準備ができ次第、順次公開していく予定である。
GSMaPについて、利用者からの要求が最も多いのは、提供時間の短縮と、空間分解能の向上である。このうち提供時間の短縮については、現在、静止気象衛星「ひまわり」域に限定して、待ち合わせ時間を1時間として、その間に取得可能なマイクロ波放射計データのみで作成するGSMaP速報版プロダクト(GSMaP_NOW)の開発を進めている。さらに、雲移動ベクトルによる未来方向への1時間の外挿を追加すると、ほぼ実時間のアジア域の降雨分布を得ることができる。現在、来年度の定常運用に向けて、システムの構築と検証を進めている。