17:45 〜 17:48
[SSS29-P06] 岐阜県南東部に位置する屏風山断層の破砕・変質履歴
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:屏風山断層, 断層岩, 破砕, 変質, 粘土鉱物
中部地方には数多くの活断層が存在し, 日本でも有数の活断層密集地帯である. これらは, 大局的にNE-SW走向とNW-SE走向の直交する断層帯に大別でき,複雑な断層幾何学系を構成している. その中でも屏風山断層は, 三河高原と美濃高原の境界に位置し, 長さ32 km, 確実度Ⅰ, 活動度B級の活断層であり(活断層研究会編, 1991), 周辺に分布する新第三紀鮮新統の瀬戸層群土岐砂礫層に, 約500 mの垂直変位を与えている. また, 同断層北東端は, A級活断層の阿寺断層の南端部と接し, 互いに止め合う関係を示す. 以上より, 屏風山断層の運動は現地形発達史に大きな影響を与え, 中部地方の複雑な断層幾何学系の一端を担う重要な活構造であると考える. そこで本研究では, 屏風山断層を事例に,その運動史を解明する調査技術開発を目的とした断層岩の構造解析および化学分析を行った.
対象とした露頭は, 岐阜県瑞浪市東部の論栃地域沢沿いに露出する断層露頭で, 既存報告のない新露頭である. この露頭では, 土岐砂礫層(新第三紀鮮新統)と, 伊奈川花崗岩(後期白亜紀)が断層関係で接し, 幅広い脆性破砕帯を観察することができる. 断層面の姿勢は, N42E50SEである. 本研究では, 断層面の姿勢, 破砕帯の規模, 土岐砂礫層と花崗岩が接していること, 活断層トレースに一致することなどから, 本露頭が屏風山断層の中軸(Master fault)であると考えた. 本露頭は下盤より, 幅30 cm以上明褐色を呈す土岐砂礫層起源の断層角礫, 幅約30 cmの茶褐色?暗灰色を呈す土岐砂礫層起源の断層ガウジ, 幅約5 cmの赤褐色を呈す土岐砂礫層起源の断層ガウジ, 幅約40 cmの白濁色を呈す花崗岩起源の面状カタクレーサイト, 幅約30 cmで白色を呈すカタクレーサイト, その上盤には花崗岩起源の弱破砕岩が連続する. 花崗岩起源の面状カタクレーサイトには, 濃緑色の断層ガウジが流動的に入り込む. 本露頭において断層岩の定方位試料の採取および分析用試料の採取を行った. 断層岩試料は多量の膨潤性粘土を含み, 大変脆弱なため取り扱いには細心の注意を要する. 試料の採取, 固化および切断・研磨においては高木・小林(1996)および大橋ほか(2008)を参考にした. 化学分析では, 粘土鉱物の同定を目的としたXRD分析, 化学組成の比較を目的としたXRF分析を行った. XRD分析では, 沈降法(Sedimentation method)により抽出した粘土試料を自然乾燥させ, 秤量したものをスライドガラスに塗布し定方位試料を作成した. この定方位試料を無処理・エチレングリコール処理・加熱処理を施し, 分析値のピークシフトにより粘土鉱物の同定, 積分強度・半値幅の比較を行った. さらに, 粒度ごとの構成鉱物の違いを把握するため, 粒度ごとに分離した試料のXRD分析を行った. XRF分析では, ガラスビードを作成し主要および微量元素の全岩化学分析を行った.
以上の解析・分析の結果, 花崗岩起源のカタクレーサイトでは左ずれ, 花崗岩起源の断層ガウジおよび土岐砂礫層起源の断層ガウジ・断層角礫では右ずれの剪断センスを示し, 屏風山断層が複数の応力場で活動していたことが明らかとなった. 破砕帯にはスメクタイト(Sm)・イライト(Ill)・カオリナイト(Kln)を全体に含み, 花崗岩起源の断層岩では沸石(Zeo)がみられた. 積分強度について花崗岩起源の断層岩の傾向をみると, Smは弱破砕岩で, Illはカタクレーサイトで, Klnは断層ガウジにおいて最大値をとる. 土岐砂礫層起源の断層岩では, Sm・Ill・Klnともに茶褐色?暗灰色断層ガウジで最大値をとり, 赤褐色断層ガウジで最小値をとるように段階的な変化がみられる. 半値幅について花崗岩起源の断層岩の傾向をみると, Sm・Illともにカタクレーサイトにおいて最大値をとる. 土岐砂礫層起源の断層岩では, Sm・Illともに赤褐色断層ガウジで最大値をとる. XRF分析結果から, Mg・Ca・LOIの顕著な増加がみられ, 元素変動率は中軸部に近づくほど大きい傾向にある.
断層岩ごとの形成レジュームを考慮すると, 左ずれセンスを示す花崗岩起源のカタクレーサイトやその外縁部の弱破砕岩は, 南北圧縮東西引張応力場で形成されたと考えられる. その後, 東西圧縮南北引張応力場で屏風山断層は右ずれを伴う逆断層運動を開始し, 土岐砂礫層に垂直隔離を与え, 断層ガウジが形成されたと考える. 本発表では, 屏風山断層の活動史と, それに伴う破砕・変質履歴について議論する.
なお,本研究は、平成26年度地層処分技術調査等事業「地質環境長期安定性評価確証技術開発」(経済産業省資源エネルギー庁)で得られた成果の一部を使用した.
対象とした露頭は, 岐阜県瑞浪市東部の論栃地域沢沿いに露出する断層露頭で, 既存報告のない新露頭である. この露頭では, 土岐砂礫層(新第三紀鮮新統)と, 伊奈川花崗岩(後期白亜紀)が断層関係で接し, 幅広い脆性破砕帯を観察することができる. 断層面の姿勢は, N42E50SEである. 本研究では, 断層面の姿勢, 破砕帯の規模, 土岐砂礫層と花崗岩が接していること, 活断層トレースに一致することなどから, 本露頭が屏風山断層の中軸(Master fault)であると考えた. 本露頭は下盤より, 幅30 cm以上明褐色を呈す土岐砂礫層起源の断層角礫, 幅約30 cmの茶褐色?暗灰色を呈す土岐砂礫層起源の断層ガウジ, 幅約5 cmの赤褐色を呈す土岐砂礫層起源の断層ガウジ, 幅約40 cmの白濁色を呈す花崗岩起源の面状カタクレーサイト, 幅約30 cmで白色を呈すカタクレーサイト, その上盤には花崗岩起源の弱破砕岩が連続する. 花崗岩起源の面状カタクレーサイトには, 濃緑色の断層ガウジが流動的に入り込む. 本露頭において断層岩の定方位試料の採取および分析用試料の採取を行った. 断層岩試料は多量の膨潤性粘土を含み, 大変脆弱なため取り扱いには細心の注意を要する. 試料の採取, 固化および切断・研磨においては高木・小林(1996)および大橋ほか(2008)を参考にした. 化学分析では, 粘土鉱物の同定を目的としたXRD分析, 化学組成の比較を目的としたXRF分析を行った. XRD分析では, 沈降法(Sedimentation method)により抽出した粘土試料を自然乾燥させ, 秤量したものをスライドガラスに塗布し定方位試料を作成した. この定方位試料を無処理・エチレングリコール処理・加熱処理を施し, 分析値のピークシフトにより粘土鉱物の同定, 積分強度・半値幅の比較を行った. さらに, 粒度ごとの構成鉱物の違いを把握するため, 粒度ごとに分離した試料のXRD分析を行った. XRF分析では, ガラスビードを作成し主要および微量元素の全岩化学分析を行った.
以上の解析・分析の結果, 花崗岩起源のカタクレーサイトでは左ずれ, 花崗岩起源の断層ガウジおよび土岐砂礫層起源の断層ガウジ・断層角礫では右ずれの剪断センスを示し, 屏風山断層が複数の応力場で活動していたことが明らかとなった. 破砕帯にはスメクタイト(Sm)・イライト(Ill)・カオリナイト(Kln)を全体に含み, 花崗岩起源の断層岩では沸石(Zeo)がみられた. 積分強度について花崗岩起源の断層岩の傾向をみると, Smは弱破砕岩で, Illはカタクレーサイトで, Klnは断層ガウジにおいて最大値をとる. 土岐砂礫層起源の断層岩では, Sm・Ill・Klnともに茶褐色?暗灰色断層ガウジで最大値をとり, 赤褐色断層ガウジで最小値をとるように段階的な変化がみられる. 半値幅について花崗岩起源の断層岩の傾向をみると, Sm・Illともにカタクレーサイトにおいて最大値をとる. 土岐砂礫層起源の断層岩では, Sm・Illともに赤褐色断層ガウジで最大値をとる. XRF分析結果から, Mg・Ca・LOIの顕著な増加がみられ, 元素変動率は中軸部に近づくほど大きい傾向にある.
断層岩ごとの形成レジュームを考慮すると, 左ずれセンスを示す花崗岩起源のカタクレーサイトやその外縁部の弱破砕岩は, 南北圧縮東西引張応力場で形成されたと考えられる. その後, 東西圧縮南北引張応力場で屏風山断層は右ずれを伴う逆断層運動を開始し, 土岐砂礫層に垂直隔離を与え, 断層ガウジが形成されたと考える. 本発表では, 屏風山断層の活動史と, それに伴う破砕・変質履歴について議論する.
なお,本研究は、平成26年度地層処分技術調査等事業「地質環境長期安定性評価確証技術開発」(経済産業省資源エネルギー庁)で得られた成果の一部を使用した.