16:30 〜 16:45
[ACG30-20] 北極陸域モデル相互比較とサイト間差異-物理・物質循環過程に着目して-
キーワード:環北極域, 陸面モデル
「北極陸域モデル相互比較プロジェクト(GTMIP)」はGRENE-ACCRP(グリーンネットワークオブエクセレンス事業北極気候変動分野)の「環北極陸域システムの変動と気候への影響」研究課題(GRENE-TEA)のモデリンググループの活動の一つである。北極域全体の気候変動への役割を評価するには、数値モデルを用いた手法が有効であると考えられる。しかし、積雪や凍土といった北極陸域に特徴的な物理過程の反映が不十分であることにより、地温や水分移動、炭素収支などの再現状況は十分とはいえず,また現地観測例も少ないためモデル出力結果の検証も限られている。
GTMIP stage1では、北極陸域の複数のGRENE-TEA観測サイトについて、同サイトで得られた現地観測値を入力及び検証データとして用いるサイトシミュレーションを行う.陸面の物理的プロセスと生態プロセスを扱う複数のモデルのモデル間比較を行うことにより、各モデルの特徴と課題を明らかにし,モデルの改良やサイト間の差異を評価することを目的の一つとしている。
現在の参加モデルは、積雪、凍土の一次元モデル(FROST, SMAP, SNOWPACK), 一次元陸面モデル(2LM, SPAC),地球システムモデルなどとの結合が可能な多点対応陸面物理モデル(HAL, MATSIRO, JULES, PB-SDM), 陸面生態系モデル(BEAMS, Biome-BGC, STEM1, VISIT)、陸面植生動態モデル(LPJ, SEIB-DGVM,)及び水文生態結合モデル(CHANGE)である。比較検証を行うGRENE-TEAサイトは、環北極域に位置するFairbanks(米国)、Kevo(フィンランド), Tiksi(ロシア),Yakutsk(ロシア)の4カ所である。これら4地点はそれぞれ積雪量や永久凍土状態、大陸度、植生において異なっている。入力データは、観測値が得られる期間が短いため、再解析データを利用して作成した。まず、各観測点について、環北極域の観測値と比較的よく一致するERA-Interimをベースとし、気温をCRU, 降水量をGPCP、短波放射を経度で補正した30分間隔のデータセット(Level 0.2)を作成した。このデータセットをさらに現地観測値と比較して補正し、サイトの観測値を比較的良く再現する連続的なデータセット(Level1.0)を作成した。対象とする期間は1980年?2013年の34年間とした。評価項目は、熱収支、積雪(最大積雪深、積雪期間など)、植物季節、土壌の凍結・融解(地温プロファイル、活動層/季節凍土層厚など)、炭素収支である。
モデル出力結果と観測値とを比較すると、潜熱フラックスの年平均値は物理モデルとFairbanksとYakutskにおける観測値とが良く一致した。Kevoでは生態系モデル間でばらつきが大きくなっていた。年最大積雪深は、物理モデルのなかでも特に積雪モデルは観測値に近い値を示すものが多い。積雪密度の時間変化を考慮に入れていないモデルの出力値が観測値より小さい値を示すが、これは積雪密度の評価に起因している可能性が考えられる.また、北極海沿岸ツンドラのTiksiについては、すべてのモデルが過大評価をしていた。GPP (総生産量) の年積算値のモデル出力結果はYakutskで観測値と近い値であったが、Fairbanksではモデル出力値の分布幅が大きく、観測値の4倍以上の値を示すモデル出力結果もあった。NEP (生態系純生産量) の年積算値は、Yakutskではモデル出力値が観測値より吸収量が少なめであったが、Fairbanksでは観測値の方がモデル出力より吸収量が少なめであった。モデル間では、Tiksiで、年々変動の大きいモデルと小さいモデルの二つのグループに大きく分けられた。このように、サイト間、要素間においてモデル出力結果のばらつき具合や再現性が異なっている。本発表ではその原因についてさらに考察を加える。
GTMIP stage1では、北極陸域の複数のGRENE-TEA観測サイトについて、同サイトで得られた現地観測値を入力及び検証データとして用いるサイトシミュレーションを行う.陸面の物理的プロセスと生態プロセスを扱う複数のモデルのモデル間比較を行うことにより、各モデルの特徴と課題を明らかにし,モデルの改良やサイト間の差異を評価することを目的の一つとしている。
現在の参加モデルは、積雪、凍土の一次元モデル(FROST, SMAP, SNOWPACK), 一次元陸面モデル(2LM, SPAC),地球システムモデルなどとの結合が可能な多点対応陸面物理モデル(HAL, MATSIRO, JULES, PB-SDM), 陸面生態系モデル(BEAMS, Biome-BGC, STEM1, VISIT)、陸面植生動態モデル(LPJ, SEIB-DGVM,)及び水文生態結合モデル(CHANGE)である。比較検証を行うGRENE-TEAサイトは、環北極域に位置するFairbanks(米国)、Kevo(フィンランド), Tiksi(ロシア),Yakutsk(ロシア)の4カ所である。これら4地点はそれぞれ積雪量や永久凍土状態、大陸度、植生において異なっている。入力データは、観測値が得られる期間が短いため、再解析データを利用して作成した。まず、各観測点について、環北極域の観測値と比較的よく一致するERA-Interimをベースとし、気温をCRU, 降水量をGPCP、短波放射を経度で補正した30分間隔のデータセット(Level 0.2)を作成した。このデータセットをさらに現地観測値と比較して補正し、サイトの観測値を比較的良く再現する連続的なデータセット(Level1.0)を作成した。対象とする期間は1980年?2013年の34年間とした。評価項目は、熱収支、積雪(最大積雪深、積雪期間など)、植物季節、土壌の凍結・融解(地温プロファイル、活動層/季節凍土層厚など)、炭素収支である。
モデル出力結果と観測値とを比較すると、潜熱フラックスの年平均値は物理モデルとFairbanksとYakutskにおける観測値とが良く一致した。Kevoでは生態系モデル間でばらつきが大きくなっていた。年最大積雪深は、物理モデルのなかでも特に積雪モデルは観測値に近い値を示すものが多い。積雪密度の時間変化を考慮に入れていないモデルの出力値が観測値より小さい値を示すが、これは積雪密度の評価に起因している可能性が考えられる.また、北極海沿岸ツンドラのTiksiについては、すべてのモデルが過大評価をしていた。GPP (総生産量) の年積算値のモデル出力結果はYakutskで観測値と近い値であったが、Fairbanksではモデル出力値の分布幅が大きく、観測値の4倍以上の値を示すモデル出力結果もあった。NEP (生態系純生産量) の年積算値は、Yakutskではモデル出力値が観測値より吸収量が少なめであったが、Fairbanksでは観測値の方がモデル出力より吸収量が少なめであった。モデル間では、Tiksiで、年々変動の大きいモデルと小さいモデルの二つのグループに大きく分けられた。このように、サイト間、要素間においてモデル出力結果のばらつき具合や再現性が異なっている。本発表ではその原因についてさらに考察を加える。