日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT42] 地球惑星科学における地図・空間表現

2015年5月26日(火) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*小荒井 衛(国土交通大学校測量部)、鈴木 厚志(立正大学地球環境科学部)

18:15 〜 19:30

[MTT42-P05] 宮古島におけるマラリア有病地の地理的環境とかんがい排水事業の空間表現

*鈴木 厚志1 (1.立正大学)

キーワード:マラリア有病地, 地理的環境, かんがい排水事業, 空間表現, 宮古島

本研究では、20世紀前半に刊行された5万分の1地形図と現在の高精度DEM、さらに表層地質図を組み合わせ、それらから2次元・3次元の地図を作成してマラリア有病地の地理的環境復元と、1972年の本土復帰後に実施されたかんがい排水事業の空間表現を試みた。
20世紀前半の先島諸島では、年間1,000人から2,000人の熱帯熱マラリア患者の発生が報告されている。これまでの研究から、先島諸島のマラリア有病地は、起伏があり水系の発達した「高島」と呼ばれる大陸性の島もしくは火山島において多く分布したことが明らかにされている。マラリア媒介蚊のコガタハマダラ蚊は、表層を非石灰岩の地質が広く覆う場所や、水たまりや水田が形成されやすい湿地帯を好み、こうした地理的環境を有する地域が有病地となった。
本研究では、礁性の石灰岩が表層の90%を覆う「低島」の宮古島を対象とする。島の性格からマラリア有病地の分布は限定される。しかし、粘土質堆積物が表層を覆い、かつ断層地形の受けた凹地状の土地では有病地が確認されている。本報告では、それらの一つである宮古島市東仲宗根添集落を事例地域とする。この地域では表層地質の影響から水が溜まりやすく、さらに大野山林を中心とする森林の存在により、島内最大の有病地が形成された。第2次世界大戦後に米軍の実施したDDT散布等によって熱帯熱マラリアは撲滅されるが、抜本的な解決は本土復帰後の土地改良事業、具体的には「かんがい排水事業」によるところが大きい。本報告では、東仲宗根添集落で実施された「県営かんがい排水事業宮原地区」の事業内容の地図化を試み、復元された20世紀前半のマラリア有病地の地理的環境との関係を考察する。