日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS35] この星は、なぜ地球なのか? -水の役割-

2015年5月24日(日) 09:00 〜 10:45 201A (2F)

コンビーナ:*島 伸和(神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻)、巽 好幸(海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、大槻 圭史(神戸大学大学院理学研究科)、中川 貴司(海洋研究開発機構数理科学・先端技術研究分野)、片山 郁夫(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、藤江 剛(海洋研究開発機構)、中村 昭子(神戸大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、座長:大槻 圭史(神戸大学大学院理学研究科)、島 伸和(神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻)

09:15 〜 09:30

[MIS35-02] すばる望遠鏡のHSC戦略枠サーベイが目指す太陽系小天体研究

*吉田 二美1 (1.国立天文台)

キーワード:太陽系小天体, 広視野サーベイ, 測光, 小惑星, トロヤ群天体, 太陽系外縁天体

2014年3月よりHyper Suprime-Cam (HSC)による戦略枠プログラムが始まり、約1500平方度という広い領域のサーベイが行われる。すばるのような大型望遠鏡を使った広領域のサーベイはこれが初めてで、r'=22-27等の太陽系小天体が多数検出されると予想される。今までの広視野サーベイに比べてはるかに小さい天体まで検出可能であり、太陽系小天体グループごとのサイズ分布のフェイントエンドを決定するための格好の機会である。

これまで太陽系小天体のフェイントエンドのサイズ分布を決める観測は、同じくすばる望遠鏡に搭載されているSuprime-Camで行われてきたが、全サーベイ領域は10平方度程度と狭く、もっと多くの天体を検出してサイズ分布の決定精度を高める必要があった。HSCサーベイでは一桁多いサインプ数を見込めるので、メインベルトの区画(内側(S型小惑星が大半)/中央(S・C型)/外側(C型小惑星が大半))毎のサイズ分布を決定し、小惑星組成と壊れやすさの関係を明らかにし、小惑星帯全体としての、小惑星組成・内部構造を明らかにすることをめざす。また、天体像の広がり具合を調べて、メインベルト内の水分布を明らかにするために重要なメインベルト彗星候補の検出もめざす。メインベルト領域の天体の一部は、近地球天体(NEOs)へと軌道進化することが知られており、それらが地球へ水を供給したかもしれない。したがって、HSCサーベイにより観測的にメインベルト全体の物質組成・分布を明らかにすることは、惑星形成に伴う天体移動やその他の小天体の軌道進化の計算と合わせて、地球への物質輸送の様相を明らかにするための重要な手がかりとなる。

さらに、HSCサーベイではメインベルトの外側の木星トロヤ群や太陽系外縁天体(TNOs)についても十分な検出数が見込める。トロヤ群天体については、L4とL5群の違いについて、TNOについては、cold/hot集団間のサイズ分布差の定量的な評価を行うことを計画している。

講演ではSuprime-Camで行われたサーベイ結果の紹介も交えながら、HSCサーベイで期待される太陽系小天体研究について述べる。