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[MAG38-16] オートラジオグラフィによる実環境を考慮した粘土鉱物のCs吸着挙動の解析
キーワード:福島原発事故, 放射性セシウム, 粘土鉱物, 風化雲母, 吸着, オートラジオグラフィ
福島原発事故により放出された放射性Csの土壌汚染の実態を明らかにするため様々な研究が行われているが、実土壌中に放射性Csがどのように存在しているのかというミクロスコピックなレベルの解析はあまり進んでいない。最近我々は特殊なIPを用いたオートラジオグラフィと電子顕微鏡による解析を組み合わせ、実際に放射性Csを吸着・固定している数十?mレベルの土壌粒子を調べることにより、その中の多くのものはこの地域の地質である阿武隈花崗岩に由来する風化黒雲母(weathered biotite)であることを報告した(Mukai et al., 2014)。一方、実験室でのCsの粘土鉱物等への吸着実験の結果では、風化黒雲母あるいはバーミキュライトへの吸着能は他の鉱物に比べて特別に高くはないことが示されている(例えばhttp://reads.nims.go.jp/)。この違いの原因は、福島の実際の汚染は単一の鉱物と溶液との間の吸着平衡に因るのではなく、もっと複雑な系におけるカイネティックな要因が支配しているためと考えられる。また実際の汚染を実験室で再現するためには、鉱物中の濃度でsub ppmレベルの吸着実験を行う必要がある。そこで我々は、放射性同位元素(Cs-137)とIPオートラジオグラフィを用いて、様々な粘土鉱物種を同時に低濃度のCs-137溶液へ浸漬し、どの鉱物種に放射性Csがよく吸着するのかを調べた。その結果、福島で採取した風化黒雲母が、他の粘土鉱物(同じ地域の未風化の黒雲母、モンモリロナイト、イライト、ハロイサイト、カオリナイト、アロフェン、イモゴライト等)に比べて極めて多くのCsを吸着・固定することが明らかとなった。また短時間で他の粘土鉱物に吸着したCs-137も、時間の経過とともに共存する風化黒雲母に移行していく実験結果も得られ、このことは最近の福島における放射性セシウムの不動化と対応している可能性がある。