日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS22] ミクロスケール気象現象解明にむけた稠密観測・予報の新展開

2015年5月26日(火) 09:00 〜 10:45 301A (3F)

コンビーナ:*古本 淳一(京都大学生存圏研究所)、常松 展充(東京都環境科学研究所)、荒木 健太郎(気象庁気象研究所予報研究部)、座長:東 邦昭(京都大学生存圏研究所)

10:42 〜 10:45

[AAS22-P03] 地上稠密観測 POTEKA で観測した2014年8月22日のダウンバースト

ポスター講演3分口頭発表枠

*佐藤 香枝1矢田 拓也1呉 宏堯1小林 文明2 (1.明星電気株式会社、2.防衛大学校)

キーワード:稠密観測, ダウンバースト

明星電気株式会社は、小型気象計POTEKA Sta.(ポテカ:Point Tenki Kansoku、以下POTEKA)を開発し、2013年度から群馬県を中心に地上稠密気象観測を実施している。2014年度は、POTEKAを改良し新たに風向風速と雨量を観測可能とした。また、既存の観測網を拡大し小学校を中心に約2km間隔で93ヵ所に追加設置を行い、計145ヶ所で1分毎の地上観測網を構築した。本稿では、2014年8月22日に発生したダウンバーストの観測結果について紹介する。
ダウンバーストは活発な積乱雲が通過したことによるもので、18時10分ごろに高崎市から前橋市にかけて発生した。気温に着目すると、17時45分頃から気温の急低下が見られ、平均で-0.47℃/分の気温減率を観測した。気象庁の現地調査結果との比較では、気温低下地域の拡大方向・時刻は一致した。また、最初の気温低下は被害発生時刻の約25分前に確認した。気圧は気温急低下とほぼ同時に急上昇を観測し、平均で+0.34hPa/分であった。この気圧の急上昇は活発な積乱雲の下で観測されていたため、冷気の下降流を捉えたものと考えられる。
2013年8月11日に発生したダウンバーストの観測結果(佐藤ほか,2013・野呂瀬ほか,2013)と今回の観測結果を比較した。気温減率を見ると、2013年度は平均-1.15℃/分であり、低下率は約2倍であった。また、2つの観測事例とも被害発生時刻より前に気温の急低下を観測できた。気圧は1~2hPa程度の一時的な上昇がみられる点は両者とも一致しているが、2014年度は上昇後の顕著な気圧低下はなく、ダウンバースト発生前よりも気圧が高い状態を維持していた。突風発生の要因は両者とも活発な積乱雲通過によるものであったが、2014年度の方が相対的に大きな積乱雲が確認でき、この積乱雲によるダウンバーストが継続的に発生した結果、高圧状態が維持されたものと推測される。今後は風向風速や湿度など他の要素を用いて、突風発生時の地上気象変化についてより詳しく解析していく。

参考文献
1. 佐藤香枝,呉宏堯,矢田拓也,小島慎也,森田敏明,岩崎博之.2013.地上稠密観測POTEKAで観測した2013年8月11日のダウンバースト(1).日本気象学会春季大会予稿集,105,223pp
2. 野呂瀬敬子,小林文明,呉宏堯,森田敏明.2013.地上稠密観測POTEKAで観測した2013年8月11日のダウンバースト(2).日本気象学会春季大会予稿集,105,224pp