日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] 火山・火成活動と長期予測

2015年5月26日(火) 09:00 〜 10:45 303 (3F)

コンビーナ:*及川 輝樹(独)産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、長谷川 健(茨城大学理学部地球環境科学コース)、三浦 大助(財団法人電力中央研究所 地球工学研究所 地圏科学領域)、石塚 吉浩(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、下司 信夫(産業技術総合研究所 地質情報研究部門)、座長:下司 信夫(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、田島 靖久(日本工営株式会社)

10:33 〜 10:36

[SVC47-P02] 阿蘇-4火砕噴火直前に活動した高遊原溶岩の定置過程

ポスター講演3分口頭発表枠

*椎原 航介1長谷中 利昭1森 康2 (1.熊本大学大学院自然科学研究科、2.北九州市立自然史・歴史博物館)

キーワード:阿蘇, 大峰火山, 高遊原溶岩, 流出率

阿蘇-4火砕噴火直前にカルデラの西方5 kmで, 大峰火山の噴火, 高遊原溶岩の流出が起こり, 比高200 mの火砕丘と厚さ約100 m, 表面積28 km2の塊状溶岩(block lava)からなる溶岩台地が形成した. 阿蘇-4軽石と高遊原溶岩は共にデイサイトで似通った組成であるが, 前者が爆発的な噴火を起こしたのに対し, 後者は流出的な噴火を起こした.
熊本河川国道事務所(1994)のボーリングコアのデータから高遊原溶岩の断面図を作成したところ, 大峰火砕丘の基底部(標高200 m)から西方向3 km(標高15 m)まで溶岩流出前の地形面が傾斜し, この地点には窪地が存在していることがわかった. 高遊原溶岩の厚さは窪地で最大140 mとなり, そこから西方に向かって減ずる. 溶岩の表面は全域でほぼ平らな地形になっており最西端(標高85 m)での溶岩の厚さは10 mである. 南北方向の断面図から, 地表面が南に傾いていることが確認できた. すなわち南北3.5 kmで南が50~100 m低くなっている. この傾きは布田川断層による傾動によるものである.
ボーリングコアは上から土壌, 阿蘇-4テフラ, 土壌を挟まないで高遊原溶岩の自破砕部(中心部で15 m), 塊状部(同80 m), 自破砕部(同2 m)があり, その下に布田層が観察できた. 塊状部は均質で, 間に自破砕部を挟んでいなかった. 鉱物モード組成では上部から下部にかけて顕著な違いが見られなかった. 気泡は, 溶岩の先端のコアではほぼ全て確認されたが, 中心部, 根元のコアでは上部と底部にしか見られなかった. 溶岩の先端部, 中央部, 根元, 全ての全岩化学組成はSiO2で約2wt.%の組成幅におさまった. 鉛直方向で見ると, 特に塊状部ではほとんど変化はなかった(SiO2<1 %).斜長石は方向性を示すが, 方向性の角度のばらつきには鉛直方向の変化はなかった. 高遊原溶岩に含まれる斜長石斑晶は顕著な虫食い状の溶融組織を示す. 斜長石の溶融の度合いを鉛直方向で比べると, 上部の溶融度が高いことがわかった. 以上の観察結果は, 高遊原溶岩が複合溶岩流ではなく単一の溶岩流であることを強く示唆している.
単一の溶岩流の長さと流出率の関係式L=10^3.11 E^0.47(Calvari & Pinkerton, 1998)を用いて高遊原溶岩の流出率を求めた. 高遊原溶岩は長さ7.5 kmであるので, 流出率は約42 m3 /sであると求められた. また, 高遊原溶岩の体積は約2 km3であることから, 高遊原溶岩の流れた期間は約1.4年と計算された. 速度一定と仮定すると, 約0.6 m/hrである.