日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS32] 地球掘削科学

2015年5月24日(日) 14:15 〜 16:00 304 (3F)

コンビーナ:*斎藤 実篤(独立行政法人海洋研究開発機構)、道林 克禎(静岡大学理学研究科地球科学専攻)、廣野 哲朗(大阪大学 大学院 理学研究科 宇宙地球科学専攻)、梅津 慶太(独立行政法人海洋研究開発機構)、座長:坂口 有人(山口大学)、小村 健太朗(防災科学技術研究所)

15:30 〜 15:45

[MIS32-20] 掘削コア試料の高品質、長期間保管を可能とする磁場振動型凍結とその評価

*諸野 祐樹1寺田 武志2山本 裕二3肖 楠1廣瀬 丈洋1菅野 正也4大和田 哲男4 (1.海洋研究開発機構 高知コア研究所、2.マリン・ワーク・ジャパン、3.株式会社アビー、4.高知大学海洋コア総合研究センター)

キーワード:海底堆積物, 掘削コア試料, 凍結, CAS

掘削コア試料を含む環境試料を用いた研究を実施する際、最も基礎的かつ重要なことは、試料の物理、化学、生物的な特性を保持した状態で陸上研究施設へ移動し、かつ保存することである。特に掘削試料を用いた生命研究を実施する場合には、船上環境において十分な汚染対策や分子生物学的な実験を行うことは非常に困難であることから、下船後の研究手法に応じた複数の保存法、又は一部の構造的特性が破壊されてしまう凍結保存が実施されてきた。本研究では、上記問題点を解決するため、交流磁場環境で試料を凍結するCell Alive System (CAS)を用いた海底下堆積物試料の凍結を実施し、その評価を行った。地球深部掘削船「ちきゅう」試験航海CK09-03などによって得られた海底下堆積物試料から同一層準を分割して作成したサブサンプルについて、CASおよび-20、-80、-196℃(液体窒素)で凍結し、未凍結冷蔵試料と共に6ヶ月間保管を行った。保管後の試料について微生物細胞を計数したところ、通常の凍結では細胞数が最大90%程度減少したのに対し、CAS凍結試料では初期の細胞数に近い細胞が維持されていた。さらに、CAS凍結によって堆積物試料が保持している残留磁化の強度はやや減少するもの の、方位は影響を受けないことが明らかとなった。次に、培養を行った大腸菌細胞について同様の凍結を行い、2.5ヵ月後にコロニー形成で生存率の評価を行ったところ、CAS凍結が最も高い生存率を示した。本研究の結果により、CAS凍結は生命研究だけでなく、様々な研究を目的とした環境試料の各種特性を保持したまま長期間の保管を可能とする有用なツールであることが示された。