日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC28] 雪氷学

2015年5月25日(月) 11:00 〜 12:45 201B (2F)

コンビーナ:*鈴木 啓助(信州大学理学部)、兒玉 裕二(国立極地研究所)、座長:鈴木 啓助(信州大学理学部)

12:00 〜 12:15

[ACC28-12] ICESatレーザー高度計を用いた氷河涵養域の表面高度変化の補正と評価

*縫村 崇行1藤田 耕史2坂井 亜規子2 (1.千葉科学大学、2.名古屋大学)

キーワード:氷河, DEM, ICESat, ヒマラヤ

リモートセンシングによるDEMはその計測手法により異なる様々な誤差が含まれていることが知られている。ASTERやALOS PRISMなど写真測量法で作成されたDEMは、表面のコントラストの大きい氷河消耗域での精度は良いが、汚れのない氷に覆われ表面のコントラストが小さい氷河涵養域では精度が悪いことがわかっている。そのため、写真測量法によるDEMから求められた氷河涵養域の氷河表面高度変化は別の測地学的手法による検証が必要となる。本発表ではICESatレーザー高度計による2003~2008年の高度データを用いて、写真測量法によるDEMから求められた氷河表面高度変化に対して評価及び補正を行った結果を報告する。
 Nuimura et al. (2012)にて使用されている2000年のSRTM、2000-2008年のASTER DEMに加えて、2008~2012年のASTER DEMを2007年に実施したDGPS測量データにより位置補正をしたうえで、2000~2012年の氷河表面高度の変化30mグリッドごとを線形近似で求めた。それからICESatがクンブ地域を通過する時間(2003~2008年に30回)における氷河表面高度を推定し、ICESatで得られた高度との比較を行った。高度差の評価は氷河外と氷河上に分けて行い、高度差の高度分布を求めた。
 多時期のDEMにより推定された氷河表面高度(Zeval)とICESat(ZICESat)で得られた同じ時間での高度との比較を行った結果、氷河外においてはばらつきは大きいが差の平均値はほぼ0ラインに沿っていた。一方、氷河上では5300 m a.s.l.以下の氷河消耗域では差の平均値は0ラインに近いが、5300 m a.s.l.以上ではICESat高度よりも多時期のDEMによる推定高度が高いことが明らかとなった。このことは従来の氷河表面高度変化の評価は氷河涵養域においては負の方向にバイアスが存在した可能性を示唆する。
 これまで現地観測による検証が困難なため不確定性の大きかった氷河涵養域において、従来の手法により求められた氷河表面高度変化のICESatデータによる検証を行った結果、氷河涵養域でのバイアスを確認することができた。発表時には高度別の評価以外にもICESatの精度が左右される表面傾斜、写真測量法の精度を決める表面のコントラストも含めた評価及び補正についても紹介する。