日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT03] Structure and dynamics of Earth and Planetary deep interiors

2015年5月26日(火) 09:00 〜 10:45 106 (1F)

コンビーナ:*芳野 極(岡山大学地球物質科学研究センター)、田中 聡(海洋研究開発機構 地球深部ダイナミクス研究分野)、趙 大鵬(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)、亀山 真典(国立大学法人愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、John Hernlund(Earth-Life Science Institute, Tokyo Institute of Technology)、座長:亀山 真典(国立大学法人愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、John Hernlund(Earth-Life Science Institute, Tokyo Institute of Technology)

09:15 〜 09:30

[SIT03-16] 慣性変化法によるマントルの熱対流シミュレーション

*竹山 浩介1斎藤 貴之2牧野 淳一郎3 (1.東京工業大学、2.地球生命研究所、3.理化学研究所 計算科学研究機構)

キーワード:マントル対流, 数値シミュレーション

地球のマントル対流を理解することは非常に重要であり、近年では三次元の数値シミュレーションが盛んに行われている。ほとんど全てのマントル対流のシミュレーションでは、非弾性近似、または(拡張)ブジネスク近似が使われてきた。この方法は陰解法であり、CFL条件に制限されない長い時間ステップを可能にする、という利点がある。その反面、これにより導出される行列は計算に悪条件であり、特に粘性の空間変化が大きい場合への対応が極めて困難である。また、この行列を解くためには、計算ステップごとにメモリ間のグローバルな通信を必要とし、近年の大規模な並列計算機に向かない。そこで、我々はマントル対流を陽解法で解くための新たな方法を考案した。

近年、太陽の熱対流を解くため、Rempel (2005) により音速抑制法が提案された。従来、太陽の対流では非圧縮性近似が使われてきたが、それは結果的に陰解法となる。音速抑制法は、その名が示すように、連続の式に変更を加えることで音速を抑制し、物理的なCFL条件から制約されるよりも長い時間ステップを可能にする方法である。Hotta et al.(2012)では、これにより、マッハ数が0.7未満では流れの基本的性質は変わらない事を示した。また、音速抑制法を使うことにより、太陽の超高解像度シミュレーションに成功した。(Hotta et al. 2014, 2015)

マントルでは、マッハ数だけではなく、レイノルズ数も非常に小さいので、これら2つのパラメータを独立に変化させることが可能な方法(慣性変化法)を考案した。まず、我々はレイノルズ数とマッハ数が1よりも小さい範囲では、流れの性質は変わらない事に注目し、慣性項に粘性依存の係数を乗じる定式化をした。さらに、熱伝導率と粘性を同時にスケーリングし、対流の特徴が変わらない定式化を行った。これら2つの定式化により、マッハ数とレイノルズ数を独立に変化させる事が可能であり、理論的にはこれらのパラメータが1より小さい範囲では対流の性質は変わらない事が予想される。

結果、慣性変化法によりレイノルズ数・マッハ数を1近くにしても、熱対流の性質は変わらなかった。また、粘性が5桁以上変化する場合においても計算可能である事が確認できた。慣性変化法により、CFL条件やvon-Neumann条件から制限される時間ステップを緩和することができるため、非常に速い計算時間でシミュレーションを行う事ができる。さらに、この方法は陽解法であるため、近年の大規模な並列計算機に適しており、将来的に、非常に高解像度のマントル対流シミュレーションを行えることが期待される。