日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD21] 測地学一般

2015年5月28日(木) 11:00 〜 12:45 303 (3F)

コンビーナ:*風間 卓仁(京都大学理学研究科)、松尾 功二(国土地理院)、座長:太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)、関戸 衛(情報通信研究機構鹿島宇宙技術センター)

11:00 〜 11:15

[SGD21-01] アラスカ南東部で観測された絶対重力変化の再検討

*風間 卓仁1福田 洋一1佐藤 忠弘2太田 雄策2三浦 哲2 (1.京都大学 理学研究科、2.東北大学 地震・噴火予知研究観測センター)

キーワード:絶対重力, アラスカ南東部, 後氷期回復, 氷河, 積雪, 土壌水

地上重力観測は後氷期地殻変動および現代の氷河融解を理解する上で最も有効な方法の1つである。一方で、重力は陸水・大気・海洋といった環境擾乱にも敏感なので、重力観測データから目的のシグナルを抽出するにはこれら環境擾乱の寄与を定量的に評価し補正する必要がある。
例えば、アラスカ南東部では2006-08年の夏季に絶対重力測定が毎年実施され、後氷期回復および現代の氷河融解に伴う最大-5.6 micro-Gal/yearの線形的な重力減少が確認された(Sun et al., 2010)。しかしながら、2012-13年に得られた絶対重力値はSun et al. (2010)の回帰直線で予想される重力値よりも最大20 micro-Gal程度大きいことが分かった(Kazama et al., 2013)。この原因には2011-12年冬季の異常降雪に伴う積雪荷重変形が考えられ、異常降雪から1年以上経過した2013年夏季の時点でも荷重超過の状態が継続していたと示唆される。そこでKazama et al. (2013)では、衛星重力(GRACE)・地殻変動(GPS)の時系列から擬似的な地上重力連続データを作成し、実際に観測された地上重力変化の陸水成分を補正する試みがなされた。一方で、彼らは大気・海洋変動の寄与を考慮しておらず、環境擾乱補正が不十分であった可能性がある。
以上の先行研究を踏まえ、本研究はアラスカ南東部で観測された絶対重力データについて、陸水・大気・海洋変動に伴う重力擾乱を定量的に評価し、後氷期地殻変動および氷河融解に伴う重力減少レートを再検討する。具体的には、大気・海洋の全球モデルAOD1B (Flechtner, 2007)を用いて大気・海洋変動の寄与を、また重力衛星GRACEのデータや陸水モデル(例えばGLDAS: Rodell et al., 2004; G-WATER [3D]: Kazama et al., 2015)を用いて陸水変動の寄与を見積もる。その上で絶対重力観測データから後氷期地殻変動および氷河融解に伴う重力変化(2006-13年)を抽出し、先行研究(Sun et al., 2010)で得られた2006-08年の重力変化と比較する。