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[MIS34-22] 急激な気候変動が生じた5.2 kaの西太平洋熱帯域における塩分変動
これまでに完新世の5 ka以前に相当する初期完新世から、より冷涼な後期完新世に遷移する時期である5.2 kaにおいて、熱帯域の複数の地域において急激な気候変動が報告されている。その大部分は急激な寒冷化を示すものであるが、水循環に関しては急激に乾燥した証拠が残る場所もあれば、湿潤になったことを示唆するものもあり、一様ではない。これらの証拠は山岳氷河や湖水面変動など主に陸域に残された記録が多く、熱帯域海洋からのデータはほとんどないのが現状である。特に、塩分に近似される海水中の酸素同位体比(δ18O)の熱帯域における変動は、全球の気候変動を考える上でも重要である。本研究では西太平洋熱帯域のバヌアツから採取された化石サンゴ試料中のストロンチウム・カルシウム(Sr/Ca)比とδ18Oを測定し、海水温と塩分を復元した。この化石サンゴは精密なU-Th年代測定法により、5212 ± 10年前に生息していたことが分かっており、5.2 kaの海洋環境復元を行うことが可能な試料である。Sr/Ca比とδ18Oは約2ヶ月に相当する時間分解能で測定を行い、SEM観察やXRD分析の結果から本化石試料はアラゴナイトのみで構成されていることを確認している。測定の結果、5.2 kaは海水温がわずかに高く、海水中のδ18Oが0.5‰も高かったことが分かった。つまりこの時期に大幅に塩分が高かったことが推察される。これはグレートバリアリーフの5.3 kaの化石サンゴを用いた結果とも整合的で、高い海水温により蒸発が促進されたことが示唆される。