18:15 〜 19:30
[HSC24-P09] 日本全国を対象とした確率論的津波ハザード評価 ―日本海溝を対象とした試作―
キーワード:津波, 確率論的津波ハザード評価, 日本海溝
独)防災科学技術研究所では、2012年4月から全国を概観した確率論的津波ハザード評価の研究に取り組んできた(例えば、藤原ほか、2013JpGU、平田ほか、2014JpGU)。ここでは、日本海溝の海溝型地震を例に、確率論的津波ハザード評価のための特性化断層モデル群の設定と、そのモデル群による試算結果について報告する。
確率論的津波ハザード評価の方法の概要は以下の通りである:(I)将来発生し得るすべての地震を対象とし、その発生確率を考慮し、(II)あらかじめ定められたルールに基づき特性化断層モデル群を設定し, (III)最小50mメッシュサイズの陸上・海底地形データを用いて、(IV)津波初期水位を計算のうえ、陸側は遡上境界条件、海側は完全透過条件を課し、海底摩擦項、移流項、全水深項を含む非線形長波理論による差分法で津波予測計算を実施、(V) 津波予測計算結果の不確実性やすべり不均質の不確実性を考慮した確率論的手法を用いて、沿岸津波高を対象としたハザード評価を実施する。
日本海溝沿いで発生し得る津波波源として海溝型の地震(プレート間地震、津波地震、およびプレート内地震(正断層型))を考え、地震調査研究推進本部によって長期評価されている地震に、長期評価されていない地震を加えた地震群を考慮した。津波ハザード評価のための単純化した特性化断層モデル群では、長期評価における地震活動領域程度もしくは複数の領域を震源域とする地震の場合には領域の外形を震源域とし、地震活動領域の面積以下となる規模の地震の震源域は矩形(ほぼ正方形)としている。このモデル群では、平均すべり量の2倍のすべり量となる大すべり域があるものとした。一つ以上の地震発生領域を震源域とするMw8.3以上の地震では、地震発生の多様性を考慮し、複数のシナリオを想定した。それ以外のやや規模の小さな地震(今回の試作では、Mw7.0から Mw8.3までの地震で、震源不特定地震とした)については、大すべり域を震源域の中央部1カ所とするモデルで代表させ、海溝沿いの領域以外の地震発生領域でプレート上面深さ60kmまでの太平洋プレート上面のどこにでも発生しうると考えた。さらに、大すべり域が海溝軸に沿って位置する場合には、超大すべり域(平均すべり量の4倍)を設定した。地震の規模(地震モーメント)と断層面積には経験的な関係(遠山ほか、2014 JpGU)を適用し、大すべり域の面積は断層面積全体の約30%、超大すべり域の面積は断層面積全体の約10%とした。これらの設定により想定したシナリオの総数は、Mw7.0からMw9.4までの1890通りとなった。
一つのシナリオから計算される沿岸での最大津波水位の推定には、計算式の近似度、地形モデルの精粗など計算システム全体として避けられない不確実さ(偶然的不確実性)が伴っていると考えられる。ここでは、地震発生の多様性を考慮した場合には、再現誤差(東北地方太平洋沖地震のインバージョンによる波源モデルから計算される津波高さと観測痕跡の整合度;是永ほか、2014)を、また震源不特定地震については、再現誤差に加えてすべり分布の多様性を一つのモデルで代表させたことによる不確実さ(阿部ほか、2014 JpGU)があるものとした。
地震発生モデルとして2通りの場合(BPTモデルとPoissonモデル)を考え、認識論的不確実性に対応するものとした。BPTモデルでは、長期評価されている地震については、直近の地震発生時からの経過年数に応じBPT過程による発生確率を付与し、その他の地震には、想定する地震の規模に応じ、G-R則(b=0.9)に従った発生頻度とした。Poissonモデルでは、想定する地震すべてをG-R則(b=0.9)に従った発生頻度を持ったPoisson過程で発生するものとした。
確率論的津波ハザード評価では、地震発生確率と偶然的不確実性を考慮した沿岸での津波高さの出現頻度をもとに、30年超過確率ハザードカーブを作成した。BPTモデル(2014年1月1日起点)では、東北地方太平洋沖型の地震によるハザードは、地震発生直後であるためほとんどゼロとなっている。日本海溝に面した東北から関東の沿岸の南部では、東北地方太平洋沖地震を上回る規模の地震による寄与などが高水位範囲で顕著であり、沿岸北部ではこれに加え、三陸沖北部に想定される地震による寄与などが高くなることが示されている。
今回の試算では、日本海溝で発生する海溝型地震を対象に確率論的津波ハザード評価の手法の開発ならびに評価の全体像を把握することに力点をおいてきた。今後、ここでの手法にもとづいて南海トラフなどの他の海域での地震について俯瞰してゆく予定であるが、あわせて評価手法や確率の設定手法などの高度化についても検討を重ねてゆきたい。
確率論的津波ハザード評価の方法の概要は以下の通りである:(I)将来発生し得るすべての地震を対象とし、その発生確率を考慮し、(II)あらかじめ定められたルールに基づき特性化断層モデル群を設定し, (III)最小50mメッシュサイズの陸上・海底地形データを用いて、(IV)津波初期水位を計算のうえ、陸側は遡上境界条件、海側は完全透過条件を課し、海底摩擦項、移流項、全水深項を含む非線形長波理論による差分法で津波予測計算を実施、(V) 津波予測計算結果の不確実性やすべり不均質の不確実性を考慮した確率論的手法を用いて、沿岸津波高を対象としたハザード評価を実施する。
日本海溝沿いで発生し得る津波波源として海溝型の地震(プレート間地震、津波地震、およびプレート内地震(正断層型))を考え、地震調査研究推進本部によって長期評価されている地震に、長期評価されていない地震を加えた地震群を考慮した。津波ハザード評価のための単純化した特性化断層モデル群では、長期評価における地震活動領域程度もしくは複数の領域を震源域とする地震の場合には領域の外形を震源域とし、地震活動領域の面積以下となる規模の地震の震源域は矩形(ほぼ正方形)としている。このモデル群では、平均すべり量の2倍のすべり量となる大すべり域があるものとした。一つ以上の地震発生領域を震源域とするMw8.3以上の地震では、地震発生の多様性を考慮し、複数のシナリオを想定した。それ以外のやや規模の小さな地震(今回の試作では、Mw7.0から Mw8.3までの地震で、震源不特定地震とした)については、大すべり域を震源域の中央部1カ所とするモデルで代表させ、海溝沿いの領域以外の地震発生領域でプレート上面深さ60kmまでの太平洋プレート上面のどこにでも発生しうると考えた。さらに、大すべり域が海溝軸に沿って位置する場合には、超大すべり域(平均すべり量の4倍)を設定した。地震の規模(地震モーメント)と断層面積には経験的な関係(遠山ほか、2014 JpGU)を適用し、大すべり域の面積は断層面積全体の約30%、超大すべり域の面積は断層面積全体の約10%とした。これらの設定により想定したシナリオの総数は、Mw7.0からMw9.4までの1890通りとなった。
一つのシナリオから計算される沿岸での最大津波水位の推定には、計算式の近似度、地形モデルの精粗など計算システム全体として避けられない不確実さ(偶然的不確実性)が伴っていると考えられる。ここでは、地震発生の多様性を考慮した場合には、再現誤差(東北地方太平洋沖地震のインバージョンによる波源モデルから計算される津波高さと観測痕跡の整合度;是永ほか、2014)を、また震源不特定地震については、再現誤差に加えてすべり分布の多様性を一つのモデルで代表させたことによる不確実さ(阿部ほか、2014 JpGU)があるものとした。
地震発生モデルとして2通りの場合(BPTモデルとPoissonモデル)を考え、認識論的不確実性に対応するものとした。BPTモデルでは、長期評価されている地震については、直近の地震発生時からの経過年数に応じBPT過程による発生確率を付与し、その他の地震には、想定する地震の規模に応じ、G-R則(b=0.9)に従った発生頻度とした。Poissonモデルでは、想定する地震すべてをG-R則(b=0.9)に従った発生頻度を持ったPoisson過程で発生するものとした。
確率論的津波ハザード評価では、地震発生確率と偶然的不確実性を考慮した沿岸での津波高さの出現頻度をもとに、30年超過確率ハザードカーブを作成した。BPTモデル(2014年1月1日起点)では、東北地方太平洋沖型の地震によるハザードは、地震発生直後であるためほとんどゼロとなっている。日本海溝に面した東北から関東の沿岸の南部では、東北地方太平洋沖地震を上回る規模の地震による寄与などが高水位範囲で顕著であり、沿岸北部ではこれに加え、三陸沖北部に想定される地震による寄与などが高くなることが示されている。
今回の試算では、日本海溝で発生する海溝型地震を対象に確率論的津波ハザード評価の手法の開発ならびに評価の全体像を把握することに力点をおいてきた。今後、ここでの手法にもとづいて南海トラフなどの他の海域での地震について俯瞰してゆく予定であるが、あわせて評価手法や確率の設定手法などの高度化についても検討を重ねてゆきたい。