日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS21] 大気化学

2015年5月28日(木) 11:00 〜 12:45 201B (2F)

コンビーナ:*澤 庸介(気象研究所海洋・地球化学研究部)、竹川 暢之(首都大学東京 大学院理工学研究科)、金谷 有剛(独立行政法人海洋研究開発機構地球環境変動領域)、高橋 けんし(京都大学生存圏研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、座長:笹川 基樹(独立行政法人国立環境研究所)

11:00 〜 11:15

[AAS21-13] 八方尾根におけるオゾンおよびCO、CO2、CH4の観測と化学輸送モデルによる起源推定

*岡本 祥子1谷本 浩志1奈良 英樹1池田 恒平1山地 一代2 (1.国立環境研究所、2.神戸大学)

キーワード:オゾン, 一酸化炭素, メタン, 二酸化炭素

東アジア酸性雨モニタリングネットワークEANET(Acid Deposition Monitoring Network in East Asia)のひとつである、長野県白馬村の国設八方尾根酸性雨測定所(36.7oN, 137.8oE, 1840 m asl)では、1998年の観測開始以降、春季に大きなオゾン(O3)濃度の長期増加傾向が確認されている(Tanimoto, 2009)。その原因として、急激な経済成長を遂げる中国からの越境汚染が考えられるが、モデル計算では中国の寄与でその半分を説明できるものの、残り半分は依然として説明できない状況にある(Tanimoto et al., 2009)。また、ソースレセプター解析からは、O3濃度の高濃度イベントによって越境汚染と国内汚染の寄与率が異なる可能性が示唆されている(Wild et al., 2004)。これらの問題の解明のためにはさらなる観測的事実が必要であるため、2013年7月から国設八方尾根酸性雨測定所においてO3、CO、CO2、CH4の連続観測を開始した。
過去の観測結果と比較すると、O3は2007年まで増加傾向が見られたが、その後増加率が減少し、現在は1990年代と同程度の濃度まで減少した。また、COは1990年代に比べて低く、特に夏季には約50 ppb程度低い値を示した。2013年7月から2014年8月までの期間において、全44回のO3増加のイベントが確認できた。これらのイベントの起源を推定するため、それぞれのイベント毎に排出比(ΔCO/ΔCO2とΔCH4/ΔCO2)を計算し、インベントリ(REAS; Kurokawa et al., 2013)から計算される値と比較をおこなった。夏季以外のほとんどのイベントで、ΔCO/ΔCO2の値は起源が東アジアであることを示したが、ΔCH4/ΔCO2の値は日本や韓国起源であることを示し、二つの排出比が示す起源が必ずしも一致するわけではなかったため、この手法だけでの起源推定は難しいことがわかった。
そこで、我々は領域化学輸送モデルCMAQ v4.7.1を用いた起源の推定をおこなった。ここでは気象場の計算には領域気象モデルWRF v3.3.1を用い、水平解像度は80 km、鉛直方向は37層である。モデルでは、COの変動はよく再現されていた。一方、O3の値は夏季に観測よりも高い値を示したものの、増加イベントについてはよく再現されていた。発表では、モデルによるO3増加イベント時の起源推定について紹介する。