18:15 〜 19:30
[SCG64-P01] 沖縄トラフ海底熱水域の堆積物中に見られる熱水性カオリン鉱物
キーワード:海底熱水鉱床, 粘土鉱物, 海底掘削
はじめに
カオリン鉱物は、熱水性変質鉱物として陸上では地熱噴気地帯などでしばしば確認される鉱物であるが、海底熱水地域における研究例は少ない。沖縄トラフの海底熱水域では、カオリン鉱物の産出と、その堆積層で金属元素の濃度が高いことが伊是名海穴のJade siteで報告されている (Marumo and Hattori 1999)。近年、海底掘削調査が伊平屋北海丘で行われ、その熱水域近傍から採取された堆積物試料の中にカオリン鉱物が含まれていることが明らかになった。本発表では、熱水域海底下の堆積物中のカオリン鉱物の分布と金属元素の濃度分布の関係に着目して、X線回折法(XRD)による鉱物同定と走査型電子顕微鏡(SEM)による鉱物観察を行った結果を報告する。
方法
研究に用いた試料は、2014年7月に行われたCK14-04航海において伊平屋北海丘のアキサイト熱水域から150m離れた掘削孔C9016B(27° 46.6' N, 126° 54.6' E, 水深1124m)で得られた堆積物試料と、2011年6月に行われたTAIGA11航海において伊平屋北海丘オリジナルサイトの約200m東に位置する掘削孔BMS-I-4(27° 47.4' N, 126° 53.9' E, 水深1048m)で得られた堆積物試料を用いた。堆積物試料から、水簸により2μm以下の画分を分離したものを用いて粘土鉱物の同定をX線回折法で行った。また、SEMによる観察は、堆積物のバルク試料より小片を割り出して行った。
結果と考察
アキサイト近傍で得られた堆積物に含まれる主な粘土鉱物は、以下のように深度による変化を示した; 0~9 mbsf : スメクタイト・イライト、9~11 mbsf : カオリン鉱物・イライト、11~91 mbsf : クロライト・イライト。このうち、9~11 mbsf に見られたカオリン鉱物層に注目してSEM観察を行ったところ、上部(8.88 mbsf)では球状のカオリン鉱物が主に存在するのに対し、中部(9.18 mbsf)では板状のカオリン鉱物と管状のハロイサイトが共存しており、下部(10.83 mbsf)では結晶度の良いカオリン鉱物が存在する、といった深度による変化があることが明らかになった。堆積物中の熱水鉱物としては、上部で閃亜鉛鉱と重晶石がSEM観察により同定されたが、下部ではこれらの鉱物は見つからなかった。これらの熱水性鉱物の存在は、堆積物の化学組成の鉛直プロファイル (野崎ほか、本連合大会)においてBa, Zn, Pbが1wt%を超える高い濃度を示すことに対応している。また下部では、CuやAgがやや高い濃度になっているが、これらの元素を含む硫化鉱物は未同定である。
オリジナルサイト東側で得られた堆積物は、海底直下の数十cmbsfから3.5 mbsfに至るまでほとんどカオリン鉱物に占められる強い変質を受けていた。これらの堆積物中にも閃亜鉛鉱や方鉛鉱が含まれており、さらに最上部では重晶石が同定された。
海底下の比較的浅い深度で主にカオリン鉱物からなる熱水変質作用を受けた堆積層があり、そこに閃亜鉛鉱や重晶石などの熱水性鉱物が伴われる現象が、沖縄トラフの海底熱水域の熱水噴出孔から数百m離れた地点で共通して見られている。
カオリン鉱物は、熱水性変質鉱物として陸上では地熱噴気地帯などでしばしば確認される鉱物であるが、海底熱水地域における研究例は少ない。沖縄トラフの海底熱水域では、カオリン鉱物の産出と、その堆積層で金属元素の濃度が高いことが伊是名海穴のJade siteで報告されている (Marumo and Hattori 1999)。近年、海底掘削調査が伊平屋北海丘で行われ、その熱水域近傍から採取された堆積物試料の中にカオリン鉱物が含まれていることが明らかになった。本発表では、熱水域海底下の堆積物中のカオリン鉱物の分布と金属元素の濃度分布の関係に着目して、X線回折法(XRD)による鉱物同定と走査型電子顕微鏡(SEM)による鉱物観察を行った結果を報告する。
方法
研究に用いた試料は、2014年7月に行われたCK14-04航海において伊平屋北海丘のアキサイト熱水域から150m離れた掘削孔C9016B(27° 46.6' N, 126° 54.6' E, 水深1124m)で得られた堆積物試料と、2011年6月に行われたTAIGA11航海において伊平屋北海丘オリジナルサイトの約200m東に位置する掘削孔BMS-I-4(27° 47.4' N, 126° 53.9' E, 水深1048m)で得られた堆積物試料を用いた。堆積物試料から、水簸により2μm以下の画分を分離したものを用いて粘土鉱物の同定をX線回折法で行った。また、SEMによる観察は、堆積物のバルク試料より小片を割り出して行った。
結果と考察
アキサイト近傍で得られた堆積物に含まれる主な粘土鉱物は、以下のように深度による変化を示した; 0~9 mbsf : スメクタイト・イライト、9~11 mbsf : カオリン鉱物・イライト、11~91 mbsf : クロライト・イライト。このうち、9~11 mbsf に見られたカオリン鉱物層に注目してSEM観察を行ったところ、上部(8.88 mbsf)では球状のカオリン鉱物が主に存在するのに対し、中部(9.18 mbsf)では板状のカオリン鉱物と管状のハロイサイトが共存しており、下部(10.83 mbsf)では結晶度の良いカオリン鉱物が存在する、といった深度による変化があることが明らかになった。堆積物中の熱水鉱物としては、上部で閃亜鉛鉱と重晶石がSEM観察により同定されたが、下部ではこれらの鉱物は見つからなかった。これらの熱水性鉱物の存在は、堆積物の化学組成の鉛直プロファイル (野崎ほか、本連合大会)においてBa, Zn, Pbが1wt%を超える高い濃度を示すことに対応している。また下部では、CuやAgがやや高い濃度になっているが、これらの元素を含む硫化鉱物は未同定である。
オリジナルサイト東側で得られた堆積物は、海底直下の数十cmbsfから3.5 mbsfに至るまでほとんどカオリン鉱物に占められる強い変質を受けていた。これらの堆積物中にも閃亜鉛鉱や方鉛鉱が含まれており、さらに最上部では重晶石が同定された。
海底下の比較的浅い深度で主にカオリン鉱物からなる熱水変質作用を受けた堆積層があり、そこに閃亜鉛鉱や重晶石などの熱水性鉱物が伴われる現象が、沖縄トラフの海底熱水域の熱水噴出孔から数百m離れた地点で共通して見られている。