日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT32] 地理情報システム

2015年5月26日(火) 11:00 〜 12:45 203 (2F)

コンビーナ:*小口 高(東京大学空間情報科学研究センター)、村山 祐司(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球環境科学専攻)、柴崎 亮介(東京大学空間情報科学研究センター)、吉川 眞(大阪工業大学工学部)、座長:吉川 眞(大阪工業大学工学部)、小荒井 衛(国土交通大学校測量部)

12:15 〜 12:30

[HTT32-06] 鉄道サインの空間構造モデル化による屋内位置推定手法の検討

*清水 智弘1吉川 眞2 (1.ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社、2.大阪工業大学)

キーワード:鉄道空間, 鉄道サイン, 屋内測位, 計算幾何学

屋外での位置情報取得は、衛星測位システムの出現と発展により正確かつ簡便なものとなった。とくに近年、2010年の準天頂衛星初号機(愛称:みちびき)の打ち上げによってセンチメートル級のより高精度な測位となった。そのため、位置情報を活用するさまざまなサービスが出現してきている。このように、位置情報がますます重要となり、また、社会インフラの1つとして欠くことのできないものになってきている。このような状況のもと、衛星電波の届かない屋内環境における位置情報の取得が次の重要なステップだと広くみなされている。
本研究では、鉄道駅に着目した屋内測位推定技術について検討しようとしている。鉄道駅では、アメニティ性の向上や歩行者移動の円滑化、高齢化社会に伴うユニバーサルデザイン化と人口減少社会におけるコンパクトな空間の創出など、さまざまなニーズが求められている。とくに、最近では、さまざまな種類の業務に対応できる複数の機能を持つ鉄道駅の開発が、大都市圏で進められてきている。そのため、利用者(都市生活者)にとってより多様な日常的役割を果たすことが求められ、鉄道駅の空間構造は複雑になってきている。とくに、位置情報の正確な取得は、複雑さを増してきているだけでなく、公共性の高い大規模な鉄道駅のような屋内環境においてより重要である。
そこで、著者らは鉄道空間における屋内位置推定技術について検討してきた。とくに、著者らは、鉄道駅において「空間の位置関係」を示す重要な情報であるサインに注目した。本研究は、「写真からサインの抽出」、「有効視野範囲からエリアの推定」、「写真測量技術によるポイント位置の推定」の先行研究を通じて屋内測位技術として一定の成果を得てきた。とくに著者らは、サインのサイズや方向、ピクトグラムの種類や数量、ピクトグラムの中心座標などが格納されたサインデータベースを活用することが自己位置推定のために有効であることを明らかにした。
本研究では、著者らは、引き続きサインデータベースを活用して鉄道駅における空間構造をモデル化することによって屋内測位技術を検討する。具体的には、屋内環境における自己位置を推定するために計算幾何学の手法を活用して「サインの影響する範囲」と「サインのつながり」を設定しようとしている。まず、鉄道サインの空間構造を表現するために、空間分割分析を用いてボロノイ図とドロネー三角形分割を生成している。さらに、GISを活用して実空間に近い領域を抽出した。
今後は、建物の柱や壁などのサイン以外の空間構成要素を考慮することによって空間構造モデルの精度の向上させていく必要がある。また、写真から自動的に屋内位置を推定することができるICTを活用したシステムを構築する必要がある。