日本地球惑星科学連合2015年大会

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インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT03] Biocalcification and the Geochemistry of Proxies -Field ecology, Laboratory culture and Paleo

2015年5月26日(火) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*豊福 高志(独立行政法人海洋研究開発機構)、北里 洋(独立行政法人海洋研究開発機構海洋・極限環境生物圏領域)、Jelle Bijma(アルフレッドウェゲナー極域海洋研究所)

18:15 〜 19:30

[BPT03-P02] コユビミドリイシ({i}Acropora digitifera{/i})骨格中化学成分の温度指標としての評価

*阪田 祥子1井上 麻夕里1田中 泰章2中村 崇3酒井 一彦2池原 実4鈴木 淳5 (1.岡山大学大学院自然科学研究科、2.琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設、3.琉球大学理学部、4.高知大学海洋コア総合研究センター、5.産業技術総合研究所 地質情報研究部門)

はじめに
炭酸塩生物殻による古環境復元は、古気候・古海洋学の分野で威力を発揮しており、造礁サンゴも、有孔虫や円石藻などと同様に広く用いられており,熱帯から亜熱帯の海洋環境を月単位の高時間分解能で復元できるという特徴を持っている。実際に骨格中の酸素同位体比(δ18O)やストロンチウム・カルシウム比(Sr/Ca比)などを用いて、海水温や塩分などの海洋環境変動に関する数多くの研究成果がこれまでに報告されている。現状の古気候・古環境学分野では、骨格に明瞭な年輪が刻まれる塊状のハマサンゴ属(Porites spp.)が古くから用いられているが、本研究ではコユビミドリイシ(A. digitifera)を研究対象とし、その環境指標、特に温度指標としての有用性を評価することを目的とした。
試料と方法
試料となるA. digitiferaの3群体は琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設前のサンゴ礁にて採取した。飼育水槽の水温は、18、21、24、27、30℃に設定し、各温度区に水槽を2セット設置した(1つの水槽に3片×3群体)。 骨格成長率は2週間に一度、水中重量測定を行うことで算出した。骨格中の酸素・炭素同位体比(δ18O, δ13C)と各元素比(Sr/Ca, Mg/Ca, U/Ca, Ba/Ca)はそれぞれ、安定同位体比質量分析計と誘導結合プラズマ質量分析計によって測定を行った。
結果と考察
温度指標としてよく用いられているδ18O に関しては、3群体とも温度と明瞭な逆相関関係が見られ、温度依存性もハマサンゴと整合的であった。よってミドリイシのδ18Oは精度の高い海水温指標として有用であることが示唆される。Sr/Ca比についてもハマサンゴと整合的な温度との逆相関関係が見られたが、相関はδ18Oほど強くはなかった。しかし、Sr/Ca比は骨格成長率への依存性は無く、Sr/Ca比は温度のみに影響されることへの信頼性は高まったと言える。以上より、ミドリイシ属の中でも少なくともA. digitiferaのδ18Oはハマサンゴと同様に温度指標として有用であることが示された。Sr/Ca比については今後もさらに調査が必要である。