日本地球惑星科学連合2015年大会

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[U-07] 連合は環境・災害にどう向き合っていくのか?

2015年5月28日(木) 14:15 〜 15:45 103 (1F)

コンビーナ:*田中 賢治(京都大学防災研究所)、作野 裕司(広島大学大学院工学研究院)、後藤 真太郎(立正大学地球環境科学部環境システム学科)、座長:田中 賢治(京都大学防災研究所)、作野 裕司(広島大学大学院工学研究院)、後藤 真太郎(立正大学地球環境科学部環境システム学科)

14:30 〜 14:45

[U07-13] 2014年広島豪雨土砂災害について

*千木良 雅弘1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:斜面崩壊, 土石流, 豪雨, 災害

2014年8月20日の集中豪雨によって、広島市安佐北区と安佐南区で多くの崩壊・土石流が発生し、その結果、74人の犠牲者を含む甚大な災害が引き起こされた。筆者は、京都大学防災研究所山地災害環境研究室と日本応用地質学会広島調査団のグループメンバーとして、災害当日のヘリからの観察、現地調査、空中レーザー計測データ(詳細DEM)を用いた地形解析を行った。土石流のほとんどは、最上部に崩壊を持ち、それが流下するに従って体積を増加したものと判断される。崩壊・土石流は、北東-南西に伸びる幅3㎞、長さ12㎞の範囲に140個所以上発生した。崩壊の発生密度は1?あたり最大30か所であった。崩壊密度の高い領域は3時間当たりの雨量が150㎜以上の領域とほぼ一致している。調査地の地質は、ジュラ紀の堆積岩、その上に載る白亜紀の高田流紋岩類と花崗岩類および貫入岩類で構成されている。堆積岩は、花崗岩の接触変成作用によってホルンフェルス化している。
崩壊には主に3つのタイプが認められた。一つは、平板状の崩壊であり、深さ1m内外で薄い板状の土層の崩壊である。次に、噴出孔状の崩壊で、斜面内部から水が噴出して穴が開いたような形態の崩壊である。その崩壊内部の底部には細粒分が少なく隙間の多い岩片集合部が見られる。次に、細長く楔状の横断面を示す崩壊で、これは谷の傾斜方向に長い崩壊で、片側を谷方向の断層あるいは節理に区切られている場合が多い。特に被害の大きかった八木3丁目の県営住宅の沢では、上流部で発生した崩壊土砂が土石流となり、下流部の花崗岩大岩塊を巻き込んで破壊力を増加したものと判断される。巻き込まれた岩塊は、シーティングと高角節理によって緩んだ中粒花崗岩であった。緑井8丁目の上流の沢でも、同様のことが起こった。これら以外の花崗岩地域の沢では、多くの場合、大岩塊は細粒花崗岩であった。花崗岩地域では表層の平板状の崩壊が多かったのに対して、ホルンフェルス地域では、阿武山北方の尾根沿いを除いて、水が噴出して発生したと考えられる崩壊が多く認められた。
花崗岩地域の崩壊・土石流の特徴は、花崗岩の風化状態によって異なるが、今回の災害の場合、相対的に高標高部にマイクロシーティングの発達した風化花崗岩があり、一部の沢では、それを下刻して下位の新鮮な花崗岩が露出していた。そして、この新鮮な花崗岩がシーティングと高角節理で分離され、沢沿いで緩んだ大岩塊として露出していた。そこに斜面上方で崩壊した土層が土石流となって流れ下り、これらの岩塊を巻き込み、結果的に破壊力の大きな土石流として沖積錐上の住宅を襲い、大災害を引き起こした。また、中粒花崗岩に比べて風化しにくい細粒花崗岩の岩塊が土砂に含まれていたことも災害を大きくした一因であった。ホルンンフェルス地域の噴出孔型の崩壊では、通常は土層下部の隙間の多い岩片集合部を水は流れているが、強い降雨によってこの部分の流水が排水能力を超えたために水が噴出して崩壊に至ったものと考えられる。