日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG32] 熱帯におけるマルチスケール大気海洋相互作用現象

2015年5月26日(火) 14:15 〜 16:00 202 (2F)

コンビーナ:*時長 宏樹(京都大学防災研究所・白眉センター)、長谷川 拓也(独立行政法人海洋研究開発機構)、清木 亜矢子(海洋研究開発機構)、東塚 知己(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、名倉 元樹((独) 海洋研究開発機構)、大庭 雅道(電力中央研究所 環境科学研究所 大気海洋環境領域)、今田 由紀子(東京大学大気海洋研究所)、座長:時長 宏樹(京都大学防災研究所・白眉センター)、大庭 雅道(電力中央研究所 環境科学研究所 大気海洋環境領域)

14:40 〜 14:55

[ACG32-02] 太平洋暖水プール北部におけるコールドサージと海面水温冷却

*長谷川 拓也1荻野 慎也1茂木 耕作1服部 美紀1久保田 尚之1井上 友栄1 (1.海洋研究開発機構)

キーワード:太平洋暖水プール, コールドサージ, 海面水温冷却, 大気海洋相互作用

日本の冬期における寒波の襲来と関連するコールドサージについて、過去の研究では南シナ海沿岸の気象・気候との関連が盛んに研究されてきた。一方、フィリピン海におけるコールドサージについては北風の到来は指摘されていたが、大気や海洋の冷却に関しては過去に研究が行われていない。本研究では、フィリピン海におけるコールドサージの振る舞いについて最近約10年間における大気と海洋の日データを解析した。
 相関解析や回帰解析の結果から、日本南方海域からフィリピン海の北緯15から20Nまでコールドサージに関係する海上気温の低下が見られることが分かった。海上気温の低下時には日本付近に高気圧性の海面気圧偏差場が出現し、それに関係する海上風が日本付近からフィリピン海に向かって吹き込むパターンとなっていた。さらに、海上気温のみならず海面水温の低下もほぼ同じ海域で同時期に見られた。このようなフィリピン海における大気海洋の冷却は、南シナ海のコールドサージよりも約2日程度遅れて開始されることも明らかになった。この時間差は、コールドサージを励起する高気圧の東方移動に関係する。また、フィリピン東部の陸域においてもフィリピン海の冷却時には2℃程度の地表気温の低下が見られた。
 本研究結果から、これまで南シナ海と比較して不明な点が多く残されていたフィリピン海やフィリピン陸域におけるコールドサージの振る舞いが指摘された。フィリピン海は熱帯域と中緯度をつなぐ海域であり、エルニーニョの発生にも寄与する。したがって、フィリピン海におけるコールドサージの強度や発生頻度が年々変調するならば、それらは、エルニーニョなどの経年スケール変動の変調にも影響する可能性がある。