日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS28] 活断層と古地震

2015年5月28日(木) 16:15 〜 18:00 A04 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*吾妻 崇(独立行政法人産業技術総合研究所)、杉戸 信彦(法政大学人間環境学部)、藤内 智士(高知大学理学部応用理学科)、吉岡 敏和(独立行政法人産業技術総合研究所活断層・地震研究センター)、座長:吾妻 崇(独立行政法人産業技術総合研究所)

17:30 〜 17:45

[SSS28-30] 2014年長野県神城断層地震と活断層-何を学ぶべきか?-

*鈴木 康弘12014年神城断層地震地形調査グループ *1 (1.名古屋大学)

キーワード:活断層, 地震断層, 神城断層地震

東日本大震災以降、内陸における地震活動もやや活発化している中で、2014年長野県北部の地震が起きた。この地震の規模はM6.7で大きな人的被害を出さずに済んだが、活断層が起こす地震においては局所的に極めて大きな被害を及ぼすことが改めて示され、阪神・淡路大震災から20年目にあたり重要な教訓を投げかけた。地震を起こした活断層は地震調査研究推進本部が検討対象としている主要活断層であったが、実際に起きた地震は予測とは大きく食い違っていた。単に規模が小さすぎて検討対象外だったということでは済まされない。これまでのトレンチ調査や変動地形学的調査、あるいは地殻変動研究の考え方を再整理する必要もある。さらに近年、様々な計測機器やリモセン調査手法の進歩があり、地震断層調査に関する緊急調査の体制を議論する機会ともなった。
この地震は、地震調査研究推進本部が選んだ110の「主要活断層」のうち、糸魚川-静岡構造線(糸静線)の北部が活動して起きたものである。震源断層面が浅かったために局地的に強い揺れが発生し、地表のずれ(地表地震断層)は、既存の活断層地図に示された位置に出現した。しかし、地震本部が予測した地震よりも明らかに「ひとまわり小さい地震」であり、活断層評価に再考を促した。
地震本部は1996年に糸静線の評価結果を公表している。その内容は「現在を含めた今後数百年以内に、M8程度(M7.5~8.5)の規模の地震が発生する可能性が高い。しかし、地震を発生させる断層区間(場所)がどこまでかは判断できない」というものであった。今回の地震はこれに比べて明らかに「ひとまわり」規模が小さい。予測より規模が小さければ良いという問題ではない。マグニチュードを過大評価すると、その反動で地震発生確率が過小評価される。すなわち、「千年に一度だけM7.5の地震が起きる」と考えれば発生確率は低いが、「M6.7~6.9程度の地震が数百年に一度起きる」とすれば発生確率は高まることに留意する必要がある。
白馬村堀之内地区に甚大な被害が集中した。家屋倒壊率は3割を超えたことから、震度7相当と見られる。その原因は、逆断層直近の上盤側で発生した強震動にある可能性が高い。神城盆地の地盤が軟弱であることを理由にする意見も多々あるが、堀之内地区は上盤側(隆起側)で段丘化しているため、地盤がとくに軟弱だとは言えない。堀之内地区周辺の活断層は複数列あり、少なくとも数列は今回の地震時にずれを生じた。集落内に逆向き(西側隆起)の副次的な断層も認められ、堀之内地区は複雑な変形帯に位置する。歴史記録によれば、1714年の信濃小谷地震の際にも堀之内地区の被害は甚大であった。そのことから約300年ごとにこの程度の地震が繰り返しているのではないかという意見もあり、今後の課題である。
2014年神城断層地震地形調査グループ:松多信尚(岡山大)・杉戸信彦(法政大)・廣内大助(信州大)・渡辺満久(東洋大)・中田 高・後藤秀昭・熊原康博(広島大学)・澤 祥(鶴岡高専)・石黒聡士(国環研)・宮内崇裕・金田平太郎(千葉大学)・楮原京子(山口大)・石山達也(東大)・鈴木康弘(名古屋大)