18:15 〜 19:30
[SVC46-P04] 浅間火山天仁噴火の降下火砕堆積物の石基組織
キーワード:結晶サイズ分布, マイクロライト, 軽石, サブプリニー式噴火, 浅間火山
噴火活動は,爆発的噴火から非爆発的噴火,あるいは爆発的噴火でも異なる様式の噴火に遷移することがある.そのような噴火様式の変化を支配する重要なパラメータの一つがマグマの上昇速度である.上昇速度が高ければマグマは脱ガスせずに爆発性を維持し,逆に速度が低いと脱ガスが進行し非爆発的噴火へと推移すると考えられている(例えばJaupart and Allegre,1991).そこで,本研究では火山噴出物の解析からマグマ上昇速度と噴火様式の関係を調べるために,減圧に伴って形成されるマイクロライトのサイズ分布(CSD)に注目した.対象としたのは,浅間火山天仁噴火(サブプリニー式噴火)による降下軽石である.この噴火で噴出したB 降下火砕堆積物は下位から B-1-B-8の8層に分けられている.B-1,B-5 層は火山灰,B-3,B-7層は黒色の石質岩片,B-2,B-4,B-6,B-8層は軽石で構成されている.軽石層は主に灰色及び褐色軽石から成り,B-4,B-6,B-8層には緻密な岩片も含まれている.そして,B-4,B-6,B-8層の褐色軽石について斜長石マイクロライトのCSD解析を行った.対象とした全ての試料で全岩化学組成に明確な差異は見られない(本郷他,2013年日本火山学会).CSDは以下の方法で得た.まず,800倍の電子像を用いて斜長石マイクロライトのサイズと数を測定する.次に,CSD Slice5(Morgan and Jerram,2006)を用いてマイクロライトの形状推定を行った.最後にCSD Corrections(Higgins,2000)を用いて形状などの補正を行ったCSDを得た.B-4,B-6層の発泡度と結晶度は,B-8層のものよりやや低いことが分かった.CSDの傾きは,B-8層がB-4,B-6層より大きかった.さらに,同じ分析手法を用いてこれまでに報告されているCSDデータをコンパイルし,今回得られたCSDデータと比較した.その結果,CSDの傾きは爆発的噴火で大きく,本研究で得られたデータは爆発的噴火の示す領域とおおよそ一致する事が分かった.平均的な上昇速度が大きいとCSDの傾きは急になることから,この結果は噴火様式と上昇速度には大まかな相関があり,上昇速度が大きいほど爆発的噴火になると考えることができる.一方で,サブプリニー式噴火と溶岩ドーム噴火ではCSDに違いが見られないという例も報告されており(Castro and Gardner,2008),今後より多くのケースについてデータの蓄積が必要である.