日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

2015年5月27日(水) 16:15 〜 18:00 304 (3F)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)、座長:森 俊哉(東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設)、寺田 暁彦(東京工業大学火山流体研究センター)

17:51 〜 17:54

[SVC45-P38] コーダ波干渉法と地震波干渉法の併用により検出した桜島の地震波速度構造の時間変化

ポスター講演3分口頭発表枠

廣瀬 郁1、*中原 恒1西村 太志1 (1.東北大学大学院理学研究科)

キーワード:地震波速度変化, 桜島, コーダ波干渉法, 地震波干渉法

近年,常時微動の地震波干渉法や相似地震記録のコーダ波干渉法により,マグマの貫入などに起因すると考えられる火山体の地震波速度の変化が捉えられている(たとえばBrenguier et al., 2008, Angonno et al., 2012).そのため,これらの手法は火山活動のモニタリングのための有効な手段の一つになり得ると考えられる.桜島は,地震や地殻変動を始めとする多項目観測が行われ,火山性圧力源の時空間変化や火山灰噴出量などの中長期的な変化が現在最もよく調べられている火山である.特に 2008年以降毎年繰り返し発破が実施されている.そこで本研究では,繰り返し発破による相似性の良い波形記録にコーダ波干渉法を適用し,地震波速度の時間変化を測定する.また同時に,常時微動を用いた地震波干渉法解析により地震波速度の時間変化の検出を行い,両者の結果の比較検証を行う.
桜島では2008年以降毎年繰り返し発破が行われており,そのうち2011年,2012年,2013年の3回の発破(筒井・他,2012,2013,2014)は島内にある気象庁の6点の地震計で記録されている.これにコーダ波干渉法を適用した.その結果,発破点に近い桜島の北部から東部で地震波速度変化を検出した.2011-2012年,2012年-2013年の全ての発破間で,地震波速度の増加が卓越しており,その大きさは周波数帯が低いほど大きく,たとえば4Hz付近では最大0.398%,8Hz付近では最大0.141%,16Hz付近では最大0.038%となった.推定誤差が0.02%程度であることからこれらの結果は有意であると考えられる.
次に,地震波速度の連続的な時間変化を求めるため,2012-2013年の常時微動のデータを用いて,1-2,2-4,4-8Hzの周波数帯域で地震波干渉法解析を行った.推定された地震波速度変化には,各観測点ペアで共通する数ヶ月の周期的な変動が見られる.その変化量は観測点ペアによって異なるが,ピーク振幅は周波数とともに小さくなり,1-2Hzで最大約2%,2-4Hzで最大約1%,4-8Hzで最大約0.5%であった.繰り返し発破と同時期の地震波干渉法による結果を調べると,対応する期間で地震波速度増加が見られ,その大きさもコーダ波干渉法から得られた結果と調和的であった.地震波干渉法から求められた地震波速度変化と,ハルタ山における伸縮計による歪の時間変化(第129回火山噴火予知連絡会資料,気象庁,2014)とを比べたところ,伸長時に地震波速度が低下し,短縮時に地震波速度が増加する顕著な相関関係が認められた.地震波干渉法による地震波速度変化の大きさと歪変化の大きさから推定した地震波速度変化の歪感度は,103/strainのオーダーとなり,既往研究の結果と同程度の値が求められた.歪変化の要因として,北岳直下の火山性圧力源であると考えられている(Iguchi et al., 2013)ことから,地震波速度変化のモニタリングにより,火山活動をモニタリングできる可能性がある.なお,特に火口付近の経路では,多量の降水に対応していると考えられる一時的な地震波速度低下も見られた.
本研究では,繰り返し発破と常時微動の2種類の異なる震源を用いて,桜島において地震波速度変化のモニタリングを行い,歪記録と対応する地震波速度の中期的な時間変化を検出した.特にコーダ波干渉法と地震波干渉法を併用し,両者の結果を比較検証することにより,信頼性の高い地震波速度変化の検出が可能となった.

謝辞
本研究では気象庁の6観測点の地震波形を使用させていただきました.繰り返し発破は京都大学防災研究所など全国の9大学と気象庁の協力により実施されたものです.ここに記して感謝いたします.