日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS32] 地球掘削科学

2015年5月24日(日) 14:15 〜 16:00 304 (3F)

コンビーナ:*斎藤 実篤(独立行政法人海洋研究開発機構)、道林 克禎(静岡大学理学研究科地球科学専攻)、廣野 哲朗(大阪大学 大学院 理学研究科 宇宙地球科学専攻)、梅津 慶太(独立行政法人海洋研究開発機構)、座長:坂口 有人(山口大学)、小村 健太朗(防災科学技術研究所)

14:15 〜 14:30

[MIS32-15] 断層の活動性評価手法を構築するための破砕帯掘削プロジェクトの概要

*宮脇 昌弘1内田 淳一1 (1.原子力規制庁技術基盤グループ)

キーワード:破砕帯掘削, 断層の活動性評価, 野島断層, 郷村・山田断層

断層の活動性はトレンチ調査等により断層上部を被覆する地層の切断関係や地層の年代から特定すること(いわゆる上載地層法)が多い。しかし、地域によっては地層の欠如や年代試料が採取できないなどの理由により、このような方法が適用できないことがある。この場合、破砕帯を用いた年代測定や破砕帯の性状に基づいた活動性の評価を行うこともあるが、十分に精度の高い評価手法が確立しているわけではない。例えば、地表付近の露頭で採取した破砕帯の年代測定値は、実際よりも古い時代に活動した年代値を示すこともある。この現状に鑑み、原子力規制庁では上載地層法の適用が困難な場合における断層の活動性評価手法を整備することを目的として破砕帯掘削プロジェクトに着手した。
本プロジェクトは「ボーリング調査」、「年代分析」、「室内試験」、「総合評価」の4つの視点から総合的に実施される。ボーリング調査では、活動時期が分かっている断層を対象として破砕帯を貫く大深度のボーリング掘削や物理検層、孔内試験、各種地質構造解析等を行い、信頼できる年代試料が採取できる温度・圧力条件や地質条件などを検証する。掘削候補地点としては、現在、郷村・山田断層や野島断層等で実施することを検討している。郷村・山田断層は1927年の北丹後地震、野島断層は1995年の兵庫県南部地震で活動した断層である。各地点において、年代のリセット条件等を把握するために深度1,000m-2,000mのボーリングを掘削する予定である。年代分析では採取した破砕帯試料を用いた最新活動面付近でのルミネッセンス年代やESR年代等の年代測定を行う。さらに、室内試験では採取した断層ガウジを用いた水圧環境下での高速せん断摩擦試験も行い、断層の摩擦特性や年代のリセット条件の特定についても実施する予定である。これらと合わせて、従来から行われてきた破砕帯の性状に基づいた活動性評価手法の高度化についても検討する。これらの複数の手法から得られた結果を比較・検証し、断層の活動性に関する総合解釈を行う。
今後数年程度を目途に、断層の活動性評価に係る重点的な調査を実施し、評価精度の向上を図る。