日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

2015年5月28日(木) 11:00 〜 12:30 304 (3F)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)、座長:及川 輝樹(独)産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、村瀬 雅之(日本大学文理学部地球システム科学科)

12:00 〜 12:15

[SVC45-14] 2014年御獄山噴火に伴う地震メカニズム解の時間変化

*寺川 寿子1加藤 愛太郎1山中 佳子1前田 裕太1堀川 信一郎1松廣 健二郎1奥田 隆1 (1.名古屋大学・環境学研究科)

キーワード:火山, 噴火, 火山構造性地震, 地震のメカニズム解, 応力場

2014年9月27日,御嶽火山で7年ぶりに水蒸気噴火が発生した.名古屋大学では御嶽山周辺域に稠密地震観測網を展開し,WINシステムの自動検出によるイベントリストに基づく再検測を行い,2012年5月以降,定常処理として詳細震源決定とP波初動の押し引きをデータとした地震メカニズム解の推定を行っている.通常,ほとんどの地震活動は,御嶽山の北東麓~東麓~南東麓で発生しているが,2014年8月31日ごろから,山頂直下で微小地震活動(M < 1)が継続して活発化する様子がとらえられた.本研究では,地震のメカニズム解と応力場の関係を分析することにより火山噴火過程を理解することを目指す.
まず,2012年5月~2014年7月までの定常処理で得られた地震のメカニズム解 ,約550個(M > 1)をデータとし,CMTデータインバージョン法(Terakawa & Matsu’ura, 2008)により御嶽山周辺域の広域応力場を推定した.御嶽山周辺域は,西北西―東南東方向に最大圧縮軸を持つ横ずれ型の応力場で特徴づけられる.次に,微小地震のメカニズム解を安定的に推定するために,P波初動の押し引き分布だけでなく,P波とS波の振幅比をデータとして,Hardebeck & Shearer(2003)の手法により噴火火口付近で発生した地震,約70個のメカニズム解(2014年9月から2015年1月)を推定した.これらのメカニズム解をFrohlich (1992)の方法で分類すると,噴火前は主として東西方向にT軸を持つ正断層型地震が卓越するのに対し,噴火後は東西及び南北方向にP軸を持つ逆断層型地震が卓越する.
次に,地震のメカニズム解と応力場の関係を分析するために,「地震は既存弱面でトラクションのせん断方向に発生する(Wallace, 1951; Bott, 1959)」という考えに基づき,観測されたすべりベクトルと応力場から期待される理論すべりベクトルの差を評価した.その結果,噴火前の正断層型地震の多くは広域応力場から期待されるものと逆センスであるが,噴火後の逆断層型地震は広域応力場に合うことがわかった(Terakawa et al., in prep.).噴火前後の震源位置の違いに関しては,噴火後に震源深さが1 km程度浅くなる傾向が見られたが,震央位置の変化は少ない.
噴火前に東西伸長の正断層型地震が発生したことは,噴火火口の配列や震源詳細分布(Kato et al., in prep.)に加え,噴火によるVLPイベントの波形インバージョンの結果(前田ほか,2014火山学会)とも調和的であり,御嶽山直下に存在する熱源による地殻の膨張と関係があると考えられる.また,噴火後の逆断層型地震の発生は,火山噴出物の放出に伴う地殻の収縮過程を広域応力場が支配する現象かもしれない.噴火前に広域応力場と非調和的な正断層型地震が発生したことは,火山噴火の準備過程に伴い山頂直下の深さ2-3 kmの狭い領域(水平面積1 km×1 km程度)で応力場が局所的に時間変化した可能性や,山頂直下に火山活動に起源を持つ応力場の不均質があることを示唆する.いずれにしても,山頂直下の正断層型地震は火山活動の活発化を示す1つの指標となる可能性がありそうである.