日本地球惑星科学連合2015年大会

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[O-01] ジオパークへ行こう

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

18:15 〜 19:30

[O01-P14] くにびきジオパーク構想地域における,学校教育でのジオサイトの活用事例

*辻本 彰1野村 律夫1高須 晃1入月 俊明1林 広樹1田坂 郁夫1 (1.島根大学くにびきジオパーク・プロジェクトセンター)

キーワード:国引き神話, 出雲国風土記, 島根半島, 斐伊川, 流水の働き, 土地のつくりと変化

くにびきジオパーク構想では,島根半島,大山,三瓶山を結ぶ,“国引き神話の地”をエリアとして設定している.“国引き神話”とは,西暦733年に完成した「出雲国風土記」に記されている神話であり,朝鮮半島の土地などが引かれ,つなぎ合わされて島根半島ができたものと描写されている.くにびきジオパーク構想地域では,①大陸の時代 ②大陸からの分裂 ③日本海の形成 ④列島での火山活動 ⑤沖積平野・汽水湖の形成といった,国引き神話に通じる大地の変動を見ることができ,神話と地質学を融合させたジオパーク構想として推進している.
くにびきジオパーク構想地域では,八岐大蛇伝説やたたら製鉄とのかかわりで地域になじみの深い一級河川斐伊川や,1500~1400万年前の砂泥互層からなるタービダイト層を良く観察できる.これらのサイトはアクセスが容易であり,小学校5年生の「流水の働き」および小学校6年生の「土地のつくりと変化」の単元にそれぞれ活用することができる.一方,多様な自然を対象とした野外学習では,専門的知識の不足や地域素材の活用法に対する困難さが野外学習実施教員の問題として生じている.そこで,島根大学くにびきジオパーク・プロジェクトセンターでは,地域の教育委員会との連携のもと,地域の小学校を対象にこれらのサイトを活用した野外授業実践を行った.
斐伊川水系周辺ではたたら製鉄のためのかんな流しが古くから行われており,その痕跡をかんな流し跡や河川堆積物中の鉄滓に見ることができる.磁石が岩石に引き付けられることを示すことで,たたら製鉄のもとになる磁鉄鉱が花崗岩の中に含まれていることを実感させることができる.また,かんな流しの影響による「暴れ川」としての斐伊川は,八岐大蛇伝説を生んだ.つまり,大地の成り立ちが人の暮らしや文化に直接結びついているというジオパークの視点を与えることができるサイトとして価値が高い.