日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS22] ミクロスケール気象現象解明にむけた稠密観測・予報の新展開

2015年5月26日(火) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*古本 淳一(京都大学生存圏研究所)、常松 展充(東京都環境科学研究所)、荒木 健太郎(気象庁気象研究所予報研究部)

18:15 〜 19:30

[AAS22-P04] 比良おろし予報システムの開発に関する研究

*阪本 洋人1東 邦昭1古本 淳一1橋口 浩之1 (1.京都大学生存圏研究所)

キーワード:突風, メソ数値予報モデル, 稠密観測, 接地境界層

本研究では、比良山地から琵琶湖に向かって強風が吹き降りる比良おろしの予報システムの開発を目指し、従来の50%の適中率を約80%にまで向上させた。
比良おろしは、比良山地の麓の幅約10km区間にのみ見られるおろし風である。本研究では、比良おろしを「風向が北西よりで最大瞬間風速が20 m/sをこえる強風」と定義する。
まず、比良おろし域に約20点の超稠密地上観測網を構築し比良おろしの動態を観測的に捉えることに成功した。それをもとに比良おろし域で、データ品質に優れ、比良おろし域での風速場を代表できる4観測点を抽出した。
200m水平分解能の気象シミュレーションを行った。非静力学予報モデルWRF (Weather Research and Forecast)をA-KDKに導入し、気象庁等から配信される客観解析を初期・境界値として12時間の予報システムを構築した。2013年10月1日?2014年3月31日の期間で6時間毎のシミュレーション行った。この期間で従来の気圧配置による予測で比良おろしが発生しやすい気圧配置となったのは31事例だがそのうち実際に発生したのは17事例だった。また気圧配置による予測の見逃しが3事例存在した。
実際に観測で比良おろしが発生したときにのみ、数値シミュレーション結果に現れる特徴的な構造を発見した。まず山脈に垂直な細長い複数の強風域が琵琶湖上から陸地側に延び、その後陸上に達し強風が見られるようになる。逆に終了時には突風域が徐々に陸地から離れてゆく。
この特徴を用いて、数値予報での比良おろし発生の判定方法を開発した。数値シミュレーションが領域・時間平均の風況を示していることを考慮し、本研究では風速閾値を14 m/sと定めた。シミュレーション上で筋状の強風域が近づき湖岸での風速が14m/s以上の期間を比良おろし発生期間とした。この手法で適中率を評価した結果、スレットスコアは約80%に大幅に向上した。さらに、3時間毎時系列予報での精度を調べたところ、実際に突風が吹いた期間より予報は長期間の突風を予測していた。予報閾値がより安全よりであることを示し、閾値改良により正確な発生時間予測が期待される。
本システムは、気象状況予測の汎用技術を技術的基礎とし経験則は用いていないため、世界各地に散在する局地的な突風の予測に有効と期待される。