17:30 〜 17:33
[SCG57-P24] GNSSデータを用いた2003年十勝沖地震以降の北海道の地殻変動解析
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:余効変動, 粘弾性緩和, 2003年十勝沖地震, GNSS
2003年9月26日に発生した2003年十勝沖地震(Mw8.0,以下十勝沖地震)は千島海溝におけるプレート境界型地震である.このような大規模なプレート境界型地震は一般に余効変動を伴うとされており,本地震の余効変動はGNSSによって詳細に観測されている.余効変動の主な原因は余効すべりと粘弾性緩和が支配的であるとされている.余効すべりは本震発生後の震源域及び周辺域でのすべりで,影響期間は数日~数年とされている.また,粘弾性緩和は本震による応力場の変化による粘弾性媒質の流動によって起こる地殻変動で,影響期間は数年~数十年とされており,余効すべりに比べて広域に影響するとされている(例えば,Scholz, 2002).粘弾性緩和による影響はプレート間の固着状態,特に本震後の固着の回復過程を推定する上で系統誤差となるため,余効変動のデータからその影響を分離することが重要である.そのために,それぞれによる影響の時定数の違いが利用できる.しかし実際には余効すべりに比べて粘弾性緩和の影響が卓越し始める具体的な時期は分かっていない.
十勝沖地震の余効変動は,Miyazaki et al. (2003)やOzawa et al. (2004),Baba et al. (2006)等で原因を余効すべりと仮定したインバージョン解析が行われている.また,Tanaka (2007)は余効変動に含まれる粘弾性緩和の影響が検出可能な大きさになりつつあることをフォワード計算で示している.しかし,これらの研究で解析された期間はBaba et al. (2006)で1年間,Tanaka (2007)で2年間に限られている.そこで本研究では,本震発生から東北地方太平沖地震までの7年間のGEONET観測点で観測されたGNSSによる地殻変動データの解析を行い,十勝沖地震後の地殻変動に対する余効すべり及び粘弾性緩和の影響を調べた.それにあたり,本予稿ではGNSSデータ解析の結果から得られた地震後の変動の特徴について述べる.
十勝沖地震以降の地殻変動の速度を計算する前に,1999年3月1日~2003年9月1日の観測データの線形トレンドを計算し,この期間の変動速度はプレートの定常的な沈み込みによるものと考えて以降のデータより除去した.その後,周辺域において本震後にGEONETが捉えた地震(木村・宮原,2013)のうち,2006年11月15日,2008年9月11日,2009年6月5日に発生したものの地震時の変動をオフセット補正した.以上の処理の後に折れ線近似で十勝沖地震以降の地殻変動速度を得た.水平成分に関しては1年毎の速度を計算した.また,上下成分に関しては地震直後から3年間は1年毎,その後は2年毎に計算した.
十勝・釧路・根室地域では,2004年11月29日,12月6日(十勝沖地震の約1年2ヶ月後)に釧路沖で発生した地震(M7.1,M6.9,以下釧路沖地震)の影響が見られた.この地震によるとみられる影響は,震源に近い十勝西部・釧路・根室地域の観測点では2年程度続いている様子が見られた.また,十勝地域の観測点のうち襟裳岬に近いところでは,時系列データに釧路沖地震に伴う変動が1年程度続いている様子がみられた.地震の3年後以降では,十勝・釧路地域での隆起量が襟裳岬付近の隆起量よりも大きくなったこともわかった.このことから,3年後以降では襟裳岬付近で粘弾性緩和の影響が相対的に大きくなっている可能性や余効すべり域が北東へと移動している可能性が考えられる.
十勝沖地震の震源の北西に位置する道央地域では,地震の4年後以降の水平速度の距離減衰が,震源より北方向や北東方向への水平速度の距離減衰に比べて非常に小さいことがわかった.
以上の解析結果から,十勝沖地震発生から3~7年後のデータでは粘弾性緩和の影響が卓越すると考え,弾性層と半無限粘弾性層の水平成層2層構造を仮定し,弾性層の厚さと粘弾性層の粘性率をgrid searchで推定した.その結果,弾性層の厚さ60km,粘弾性層の粘性率8.0×1018Pa・sが推定され,4~7年後で旭川付近を中心にして北西方向と南東方向にある内陸の観測点での変動を概ね説明できた.
謝辞:本解析では国土地理院から公開されているGEONETの日々の座標値(F3解)を利用させて頂きました.
十勝沖地震の余効変動は,Miyazaki et al. (2003)やOzawa et al. (2004),Baba et al. (2006)等で原因を余効すべりと仮定したインバージョン解析が行われている.また,Tanaka (2007)は余効変動に含まれる粘弾性緩和の影響が検出可能な大きさになりつつあることをフォワード計算で示している.しかし,これらの研究で解析された期間はBaba et al. (2006)で1年間,Tanaka (2007)で2年間に限られている.そこで本研究では,本震発生から東北地方太平沖地震までの7年間のGEONET観測点で観測されたGNSSによる地殻変動データの解析を行い,十勝沖地震後の地殻変動に対する余効すべり及び粘弾性緩和の影響を調べた.それにあたり,本予稿ではGNSSデータ解析の結果から得られた地震後の変動の特徴について述べる.
十勝沖地震以降の地殻変動の速度を計算する前に,1999年3月1日~2003年9月1日の観測データの線形トレンドを計算し,この期間の変動速度はプレートの定常的な沈み込みによるものと考えて以降のデータより除去した.その後,周辺域において本震後にGEONETが捉えた地震(木村・宮原,2013)のうち,2006年11月15日,2008年9月11日,2009年6月5日に発生したものの地震時の変動をオフセット補正した.以上の処理の後に折れ線近似で十勝沖地震以降の地殻変動速度を得た.水平成分に関しては1年毎の速度を計算した.また,上下成分に関しては地震直後から3年間は1年毎,その後は2年毎に計算した.
十勝・釧路・根室地域では,2004年11月29日,12月6日(十勝沖地震の約1年2ヶ月後)に釧路沖で発生した地震(M7.1,M6.9,以下釧路沖地震)の影響が見られた.この地震によるとみられる影響は,震源に近い十勝西部・釧路・根室地域の観測点では2年程度続いている様子が見られた.また,十勝地域の観測点のうち襟裳岬に近いところでは,時系列データに釧路沖地震に伴う変動が1年程度続いている様子がみられた.地震の3年後以降では,十勝・釧路地域での隆起量が襟裳岬付近の隆起量よりも大きくなったこともわかった.このことから,3年後以降では襟裳岬付近で粘弾性緩和の影響が相対的に大きくなっている可能性や余効すべり域が北東へと移動している可能性が考えられる.
十勝沖地震の震源の北西に位置する道央地域では,地震の4年後以降の水平速度の距離減衰が,震源より北方向や北東方向への水平速度の距離減衰に比べて非常に小さいことがわかった.
以上の解析結果から,十勝沖地震発生から3~7年後のデータでは粘弾性緩和の影響が卓越すると考え,弾性層と半無限粘弾性層の水平成層2層構造を仮定し,弾性層の厚さと粘弾性層の粘性率をgrid searchで推定した.その結果,弾性層の厚さ60km,粘弾性層の粘性率8.0×1018Pa・sが推定され,4~7年後で旭川付近を中心にして北西方向と南東方向にある内陸の観測点での変動を概ね説明できた.
謝辞:本解析では国土地理院から公開されているGEONETの日々の座標値(F3解)を利用させて頂きました.