17:15 〜 17:35
★ [U06-20] 太陽の周期活動およびその長期変動と地球環境
キーワード:太陽, 黒点, 周期活動, 太陽総放射, ダイナモ機構, 磁場観測
太陽は地球環境に対して、様々な波長の電磁波、高エネルギー粒子、太陽風とその擾乱(coronal mass ejection, CME)などにより影響を及ぼす。このうち、太陽フレアやCMEなど短時間の現象がどのようにして地球環境を乱すかは、宇宙天気研究のテーマであり、その過程は複雑であるものの、衛星搭載装置による「その場観測」で理解が大きく進んだ分野である。一方、太陽の長期変動とその地球への影響は、長期間のデータの蓄積を必要とし、また変動の振幅も小さいので、未解明の点が多い。本発表ではこのような「宇宙気候」の研究について論ずる。
太陽の総放射エネルギー(total solar irradiance, TSI)が一定ではないかもしれず、それが気候変動の一因ではないかという考えは19世紀にすでにあった。スミソニアン天文台は20世紀の初めから60年以上にわたってTSIの測定を地上の高山から実施し、太陽黒点の11年周期活動に同期したTSIの変動を検出したと主張したが、今ではこれは、地球大気の透明度変化の補正が不十分であったためと考えられている。TSIの変動と、それが太陽の活動周期と同期していることは、1980年代になって衛星搭載の総放射計により発見された。黒点の多い活動極大期のほうがTSIが大きい(太陽が明るい)のは、黒点は暗いものであるから一見直感とは反するが、現在では、黒点周辺のほか太陽全面にも分布している多数の輝点(白斑)の明るさが上回るためであると解釈されている。
可視光より波長の短い、紫外線やX線では、太陽活動に伴う強度変動はもっと大きく、紫外線で数十%、X線では数十倍にも及ぶ。紫外線の変動は、地球の上層大気での光化学過程への影響が大きいことから、その観測は重要である。紫外域での太陽放射エネルギーの測定は1990年頃から衛星搭載の計測器で始まり現在に至っているが、計測器の経年変化が大きいため困難な計測である。
1980年以前では、太陽の総放射や紫外線放射の直接の観測データはなく、代替えの指標を使ってそれらを推定するしかない。可視光でのHα線やカルシウムK線による太陽彩層の画像からそのような指標が導出できる可能性がある。最も古いのは1904年からあるグリニッジ天文台とインドのコダイカナル天文台のデータだが、国立天文台にも1917年からのデータがあり、すでにデジタル化されている。太陽電波の強度(カナダで1947年から計測されているいわゆるF10.7や、豊川で1951年から計測されている4周波数の電波強度など)や、夜天光(IGY(1957年)以降)のデータも利用できるかもしれない。
太陽の周期活動は、太陽内部で流体運動が磁場を増幅する「磁気流体ダイナモ機構」により維持されていると考えられている。日震学による太陽内部の回転速度分布の診断や、数値シミュレーションによる太陽対流層の流体力学的研究により、ダイナモ機構に関する我々の理解は大きく進展した。観測的には、理論と比べられるものは古くは黒点数の変化(1610年以来のデータがある)や、マグネトグラフによって測られる磁束の変化(1950年代から)に限られていたが、1980年代から活動領域の磁場ベクトルが観測できるようになり、磁場のよじれ(ヘリシティ)の半球符号則が発見された。すなわち、分散は多いものの、活動領域の磁場は北半球では負、南半球では正のヘリシティを示す。この性質は、ダイナモ機構のうち、いわゆるアルファ機構の結果を直接表していると考えられる。一方我々は、ヘリシティの半球則は黒点活動の極小期には逆転する傾向があることを指摘した(Hagino and Sakurai, 2005)。このことが太陽ダイナモの性質にどのような制限をつけるのか、また次の活動サイクルの振幅に影響するものかどうかも論じる。
太陽の総放射エネルギー(total solar irradiance, TSI)が一定ではないかもしれず、それが気候変動の一因ではないかという考えは19世紀にすでにあった。スミソニアン天文台は20世紀の初めから60年以上にわたってTSIの測定を地上の高山から実施し、太陽黒点の11年周期活動に同期したTSIの変動を検出したと主張したが、今ではこれは、地球大気の透明度変化の補正が不十分であったためと考えられている。TSIの変動と、それが太陽の活動周期と同期していることは、1980年代になって衛星搭載の総放射計により発見された。黒点の多い活動極大期のほうがTSIが大きい(太陽が明るい)のは、黒点は暗いものであるから一見直感とは反するが、現在では、黒点周辺のほか太陽全面にも分布している多数の輝点(白斑)の明るさが上回るためであると解釈されている。
可視光より波長の短い、紫外線やX線では、太陽活動に伴う強度変動はもっと大きく、紫外線で数十%、X線では数十倍にも及ぶ。紫外線の変動は、地球の上層大気での光化学過程への影響が大きいことから、その観測は重要である。紫外域での太陽放射エネルギーの測定は1990年頃から衛星搭載の計測器で始まり現在に至っているが、計測器の経年変化が大きいため困難な計測である。
1980年以前では、太陽の総放射や紫外線放射の直接の観測データはなく、代替えの指標を使ってそれらを推定するしかない。可視光でのHα線やカルシウムK線による太陽彩層の画像からそのような指標が導出できる可能性がある。最も古いのは1904年からあるグリニッジ天文台とインドのコダイカナル天文台のデータだが、国立天文台にも1917年からのデータがあり、すでにデジタル化されている。太陽電波の強度(カナダで1947年から計測されているいわゆるF10.7や、豊川で1951年から計測されている4周波数の電波強度など)や、夜天光(IGY(1957年)以降)のデータも利用できるかもしれない。
太陽の周期活動は、太陽内部で流体運動が磁場を増幅する「磁気流体ダイナモ機構」により維持されていると考えられている。日震学による太陽内部の回転速度分布の診断や、数値シミュレーションによる太陽対流層の流体力学的研究により、ダイナモ機構に関する我々の理解は大きく進展した。観測的には、理論と比べられるものは古くは黒点数の変化(1610年以来のデータがある)や、マグネトグラフによって測られる磁束の変化(1950年代から)に限られていたが、1980年代から活動領域の磁場ベクトルが観測できるようになり、磁場のよじれ(ヘリシティ)の半球符号則が発見された。すなわち、分散は多いものの、活動領域の磁場は北半球では負、南半球では正のヘリシティを示す。この性質は、ダイナモ機構のうち、いわゆるアルファ機構の結果を直接表していると考えられる。一方我々は、ヘリシティの半球則は黒点活動の極小期には逆転する傾向があることを指摘した(Hagino and Sakurai, 2005)。このことが太陽ダイナモの性質にどのような制限をつけるのか、また次の活動サイクルの振幅に影響するものかどうかも論じる。