17:00 〜 17:15
[SSS25-23] 地震波干渉法結果のデコンボリューションに基づく位相情報の抽出―数値計算に基づく手法の検証と実記録への適用―
キーワード:地震波干渉法, デコンボリューション
1.はじめに
地震波干渉法の適用例として、長時間の微動記録から2地点間の群速度が評価されている。地震波干渉法によってグリーン関数が再現できるとすれば、表面波の波群の情報だけでなく、位相情報も有効に活用することができると考えられる。Behm et al.(2014)は地震波干渉法の結果による近傍観測点の位相の時間差は、群速度から求められる時間差よりもばらつきが小さいことを示しているが、実記録に基づくのみで検証はなされていない。本検討では、地震波干渉法によって得られる波の位相伝播を活用するための評価法を示し、解析的な検討から適用性を確認した後、実観測記録に適用した事例を示す。
2.評価法について
グリーン関数の位相を用いて地下構造モデルとの関連付けを行うためには、伝播する波を追跡できるように、波長に対して観測点間隔を充分に短くすることが望ましい。しかし、地震波干渉法によって評価できる波長範囲は、空間エリアジングが起きる短波長のみに限られる。そこで本検討では、対象地域の外の観測点に対して、対象地域内の観測点の相互相関関数を求める。対象地域の端の評価波形と、対象地域内の評価波形のデコンボリューションにより、対象地域内の波の伝播を評価する。本検討では、上下成分を対象とした。
解析的検討では擬似的にequipartitionを表現するために、周辺からの波を相反定理により有限差分法を用いて評価する。周辺の発振点は40km×90kmのエリアに0.2km間隔に90651地点を配置する。4kmの測線を対象地域として0.4km間隔で評価点(以降、評価点)を配置し、地震波干渉法を適用するための点は、測線の延長上に18km離れた点(以降、基準点)を測線の両側に配置した。モデルは単純化のために2層モデルとし、水平成層構造モデル、測線に対して直交する方向に不整形なモデル(2次元不整形モデル)、堆積層の形状が盆地となるような3次元不整形モデルと、徐々に不整形性が強くなるモデルを設定した。基準点を加振した時の各評価点の差分法の結果をグリーン関数として、地震波干渉法による結果をデコンボリューションして波の伝播を評価する手法の適用性について検討した。
3.解析的検討による適用性の確認
水平成層構造モデルの場合、相互相関関数のデコンボリューション波形は、グリーン関数のデコンボリューション波形に近く再現性は高い。2次元不整形の場合、デコンボリューションをとる方向、すなわち波の伝播方向によって結果が異なった。硬い地盤上の評価波形に対するデコンボリューション波形においては、地震波干渉法の結果はグリーン関数とよく対応する。軟らかい層上の評価波形に対するデコンボリューション波形は、層境界に達するまでの波の伝播は地震波干渉法とグリーン関数でよく対応するものの、層境界で反射する位相については地震波干渉法とグリーン関数で若干の位相ずれが生じた。3次元不整形の場合は、デコンボリューションをとる方向に加え、地震波干渉法を適用する際の波の伝播方向によって結果が異なる。硬い地盤から軟らかい地盤へ波が伝播することを評価する際は、地震波干渉法を適用する際の伝播方向と、デコンボリューションをとる方向を合わせると、地震波干渉法の結果はグリーン関数の結果とよく対応する結果が得られた。しかし、やわらかい層から硬い層へ伝播する方向に対しては、解析の方向を合わせても地震波干渉法の結果とグリーン関数の結果は対応せず、グリーン関数を再現することはできなかった。硬い地盤から軟らかい地盤への波の伝播であれば、解析する処理の方向に注意を払えば、3次元不整形地盤においても地震波干渉法によって波の伝播を評価できることを示した。
4.実データへの適用例
実記録の検討では、Hi-net一関西(N.ICWH)と一関東(N.ICEH)間を対象地域として、その2点の延長線上近くに位置している藤沢(N.FSWH)と東和(N.TOWH)を、地震波干渉法を適用するための基準点として選定した。1か月間の記録を用いて、地震波干渉法を適用した。記録は計器特性を補正し、データ処理方法は地元・山中(2012)の方法を参照した。記録から求めた波形とJ-SHISの3次元地下構造モデルを用いた解析解の比較を行った。
藤沢を基準として地震波干渉法の結果をデコンボリューションした波形と、東和を基準として処理した結果の波形はよく対応しており、基準点によらず安定して波形が求められることを確認した。3次元地下構造モデルによる解析解と、観測記録から得られた波形は概ね対応する結果が得られ、実観測記録でも適用できることを示した。
今後の課題として、例えば関東平野の盆地端部付近の観測点に適用して表面波の生成が本手法で追跡できるかどうかの検討を行いたい。
地震波干渉法の適用例として、長時間の微動記録から2地点間の群速度が評価されている。地震波干渉法によってグリーン関数が再現できるとすれば、表面波の波群の情報だけでなく、位相情報も有効に活用することができると考えられる。Behm et al.(2014)は地震波干渉法の結果による近傍観測点の位相の時間差は、群速度から求められる時間差よりもばらつきが小さいことを示しているが、実記録に基づくのみで検証はなされていない。本検討では、地震波干渉法によって得られる波の位相伝播を活用するための評価法を示し、解析的な検討から適用性を確認した後、実観測記録に適用した事例を示す。
2.評価法について
グリーン関数の位相を用いて地下構造モデルとの関連付けを行うためには、伝播する波を追跡できるように、波長に対して観測点間隔を充分に短くすることが望ましい。しかし、地震波干渉法によって評価できる波長範囲は、空間エリアジングが起きる短波長のみに限られる。そこで本検討では、対象地域の外の観測点に対して、対象地域内の観測点の相互相関関数を求める。対象地域の端の評価波形と、対象地域内の評価波形のデコンボリューションにより、対象地域内の波の伝播を評価する。本検討では、上下成分を対象とした。
解析的検討では擬似的にequipartitionを表現するために、周辺からの波を相反定理により有限差分法を用いて評価する。周辺の発振点は40km×90kmのエリアに0.2km間隔に90651地点を配置する。4kmの測線を対象地域として0.4km間隔で評価点(以降、評価点)を配置し、地震波干渉法を適用するための点は、測線の延長上に18km離れた点(以降、基準点)を測線の両側に配置した。モデルは単純化のために2層モデルとし、水平成層構造モデル、測線に対して直交する方向に不整形なモデル(2次元不整形モデル)、堆積層の形状が盆地となるような3次元不整形モデルと、徐々に不整形性が強くなるモデルを設定した。基準点を加振した時の各評価点の差分法の結果をグリーン関数として、地震波干渉法による結果をデコンボリューションして波の伝播を評価する手法の適用性について検討した。
3.解析的検討による適用性の確認
水平成層構造モデルの場合、相互相関関数のデコンボリューション波形は、グリーン関数のデコンボリューション波形に近く再現性は高い。2次元不整形の場合、デコンボリューションをとる方向、すなわち波の伝播方向によって結果が異なった。硬い地盤上の評価波形に対するデコンボリューション波形においては、地震波干渉法の結果はグリーン関数とよく対応する。軟らかい層上の評価波形に対するデコンボリューション波形は、層境界に達するまでの波の伝播は地震波干渉法とグリーン関数でよく対応するものの、層境界で反射する位相については地震波干渉法とグリーン関数で若干の位相ずれが生じた。3次元不整形の場合は、デコンボリューションをとる方向に加え、地震波干渉法を適用する際の波の伝播方向によって結果が異なる。硬い地盤から軟らかい地盤へ波が伝播することを評価する際は、地震波干渉法を適用する際の伝播方向と、デコンボリューションをとる方向を合わせると、地震波干渉法の結果はグリーン関数の結果とよく対応する結果が得られた。しかし、やわらかい層から硬い層へ伝播する方向に対しては、解析の方向を合わせても地震波干渉法の結果とグリーン関数の結果は対応せず、グリーン関数を再現することはできなかった。硬い地盤から軟らかい地盤への波の伝播であれば、解析する処理の方向に注意を払えば、3次元不整形地盤においても地震波干渉法によって波の伝播を評価できることを示した。
4.実データへの適用例
実記録の検討では、Hi-net一関西(N.ICWH)と一関東(N.ICEH)間を対象地域として、その2点の延長線上近くに位置している藤沢(N.FSWH)と東和(N.TOWH)を、地震波干渉法を適用するための基準点として選定した。1か月間の記録を用いて、地震波干渉法を適用した。記録は計器特性を補正し、データ処理方法は地元・山中(2012)の方法を参照した。記録から求めた波形とJ-SHISの3次元地下構造モデルを用いた解析解の比較を行った。
藤沢を基準として地震波干渉法の結果をデコンボリューションした波形と、東和を基準として処理した結果の波形はよく対応しており、基準点によらず安定して波形が求められることを確認した。3次元地下構造モデルによる解析解と、観測記録から得られた波形は概ね対応する結果が得られ、実観測記録でも適用できることを示した。
今後の課題として、例えば関東平野の盆地端部付近の観測点に適用して表面波の生成が本手法で追跡できるかどうかの検討を行いたい。