日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC48] 火山防災の基礎と応用

2015年5月24日(日) 11:00 〜 11:45 A05 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)、宝田 晋治(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、藤田 英輔(防災科学技術研究所観測・予測研究領域 地震・火山防災研究ユニット)、佐々木 寿(アジア航測株式会社)、座長:萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)

11:30 〜 11:33

[SVC48-P01] 石基SiO2量簡便推定法によるマグマデータベースのデータ拡充

ポスター講演3分口頭発表枠

*竹内 晋吾1土志田 潔1三浦 大助1 (1.電力中央研究所)

キーワード:マグマ, 岩石学的解析, 噴火規模, データーベース

過去10万年間に国内で発生した大規模噴火を中心に噴出マグマのマグマ学的性質に関するデータベース(マグマDB)の構築を進めている.マグマDBにより,マグマ学的パラメーター(全岩組成・メルト組成・斑晶量等)と噴火規模(M)・噴火様式等との関係を多数の噴火事例について検討することにより,両者の間の普遍的な関連性を明らかにし,火山活動評価のための経験則を得ることを目指している.

 マグマデータベースは,M≧6以上の噴火をできる限り網羅しているものの,全体として噴火様式が火砕噴火に偏っており,溶岩噴火が少ない.一方で,溶岩試料の全岩組成や斑晶量といった記載岩石学的データは既往研究が多くある.そこで石基SiO2量(マグマ溜まり条件でのメルトSiO2量)を簡便に推定する方法を構築し,文献データを用いて,溶岩噴火事例を中心にデータの拡充を試みた.

 石基SiO2量簡便推定法は,全岩SiO2量と斑晶量から石基SiO2量を推定する方法である.この推定法は全岩SiO2量・石基SiO2量・全斑晶SiO2量のマスバランス計算に基づく.マグマDBに含まれる44事例の軽石および溶岩試料の全岩・石基・全斑晶のSiO2量の関係を調べた.全斑晶のSiO2量は斑晶モード組成と斑晶の代表的組成を用いて計算した.斑晶モード組成は主要成分すべてを用いたマスバランス計算あるいはEPMAによる電子像・元素像の画像解析により得られた.その結果,石英を斑晶として含まない30試料の全斑晶のSiO2量が47.4 wt%を平均値,1.5 wt%を標準偏差として比較的一定であることが分かった.石英斑晶を含む場合,全斑晶のSiO2量は石英斑晶の割合に応じて増大し,全斑晶SiO2量は最大で64 wt%に達した.このことから,石英斑晶を含まない場合には,全斑晶SiO2量を47.4 wt%とし,全岩・斑晶量のSiO2量に関するマスバランス計算を行うことによって,石基SiO2量を簡便に求めることができる.

 石基SiO2量簡便推定法を用いて文献データから約40の噴火事例について石基SiO2量(メルトSiO2量)を求めて,これまでのマグマDBのデータと合わせて,噴火規模とメルトSiO2量との関係を調べた.その結果,玄武岩から流紋岩質メルトを持つM=3-5のデータが増大した.玄武岩からデイサイト質メルトの噴火の規模の上限がM=5程度という,これまでのマグマDBの特徴には影響を与えなかった.