11:30 〜 11:45
[SGD21-03] VLBI 周波数比較への応用とGALA-V システムの開発(V)
キーワード:超長基線電波干渉計, 時刻周波数比較
1.はじめに
NICT は、遠隔周波数比較技術の一つとして広帯域VLBIを使った周波数比較技術の開発を進めている。このプロジェクト(GALA-V)は、遠距離に置かれた複数のアンテナを使って3-14GHzの電波星からの電波を受信し、複数のアンテナ間の原子時計の周波数差を精密に比較する計画である。VLBI周波数比較は、既にある周波数比較技術としての衛星双方向に比べて、多地点の比較が一度に可能で通信衛星の有無に依存せず、GPSを使った方法に比べて衛星の軌道情報の誤差に影響されないなどの利点がある。広帯域観測という点では次世代の測地VLBI 技術の国際標準仕様として各国が開発をすすめているVGOS(VLBI2010 Global Observing System)に準拠しており、周波数比較だけでなく精密測地学にも利用できる。NICTは広帯域フィードと受信機を独自に開発して34mアンテナに搭載し、小型のVLBIアンテナをつくばの産業技術総合研究所(以下、産総研)と、東京小金井市のNICTに設置し、NICTの維持する日本標準時であるNICTのUTC[NICT]と産総研の維持するUTC[NMIJ]との比較実験を行っている。測地学への寄与としては、国内のVGOS局として完成した国土地理院の石岡測地観測局との試験観測を実施し、世界初となる8GHz帯域幅の超広帯域信号の合成に成功した。これによりVLBIの遅延計測精度が格段に向上することが期待される。また米国MITのWestford局との9500kmの基線で広帯域VLBIシステムを使った初の国際観測を実施して、MITとNICTそれぞれの相関処理でフリンジを検出し、システムの互換性の調整確認を実施している。
2.産総研―NICT小金井間の周波数比較VLBI実験
GALA-V周波数比較プロジェクトでは、日本標準時を維持するNICTと原子周波数標準を開発している産総研に小型VLBIアンテナを設置し、VLBI技術を使った周波数比較のテストベッドとしてUTC[NICT] とUTC[NMIJ]の比較実験を行っている。8GHzの周波数で1GHz帯域幅を使った観測では、GPSとほぼ同程度の比較ができることを確認した。今後、長期の周波数比較試験や、以下に述べる広帯域の受信システムへ帯域幅を広げた実験を行っていく予定である。
3.国土地理院石岡局との超広帯域のVLBI試験観測
国土地理院が2014年に石岡測地観測局に完成したVGOS仕様の口径13mの広帯域VLBIアンテナ(以下「石岡13mアンテナ」)は、鹿島34mアンテナに次いで国内で2番目に大きな広帯域観測が可能なVLBI観測局である。我々は2014年末から2015年はじめに掛けて、 NICT鹿島34mアンテナと石岡13mアンテナの基線で試験観測を実施した。電波星から来る6-14GHzの周波数帯域の電波を、6つのバンド(バンド幅1GHz)でデータ取得し、相関処理した結果すべてのチャンネルでフリンジを検出した。更に広帯域のバンド幅合成ソフトによって6つのバンドのトータル8GHz帯域幅の位相を合成することに成功した。このような超広帯域のVLBI計測は世界初であり、理論的には数十フェムト秒の遅延計測精度となる。しかし実際にはさまざまな誤差要因により精度は低下するため、今後実際の計測精度検証を進めていく。
4.広帯域VLBIシステム初の国際VLBI実験
NICTの進めるGALA-Vプロジェクトでは、ダイレクトサンプリング方式の新しい独自のデータ取得系を開発するのと並行して、VGOSとの共同観測も視野に入れたデータ収集システムの開発を進めている。2015年1月には、米国MITのHaystack観測所のWestford18mアンテナと鹿島34mアンテナとの間で世界初となる、広帯域VLBIシステムを使った9500km基線の国際VLBI観測を成功させた。Haystack観測所とNICTそれぞれの取得データはJGN-X, APAN, Internet2 の高速インターネット回線を通して交換され、検証のため両機関でデータ処理を行ってフリンジが確認された。
5. まとめ
GALA-V周波数比較プロジェクトでは、広帯域VLBI観測システムを使って、国土地理院石岡測地観測局との広帯域観測や、米国との試験観測に成功し、VGOSシステムとの互換性を考慮しつつ、新しい広帯域のVLBI観測システムの整備を進めている。2015年度はこのシステムを使って広帯域化の効果を確認し、長期の周波数比較実験等を行ってVLBI周波数比較の精度検証を進める。
NICT は、遠隔周波数比較技術の一つとして広帯域VLBIを使った周波数比較技術の開発を進めている。このプロジェクト(GALA-V)は、遠距離に置かれた複数のアンテナを使って3-14GHzの電波星からの電波を受信し、複数のアンテナ間の原子時計の周波数差を精密に比較する計画である。VLBI周波数比較は、既にある周波数比較技術としての衛星双方向に比べて、多地点の比較が一度に可能で通信衛星の有無に依存せず、GPSを使った方法に比べて衛星の軌道情報の誤差に影響されないなどの利点がある。広帯域観測という点では次世代の測地VLBI 技術の国際標準仕様として各国が開発をすすめているVGOS(VLBI2010 Global Observing System)に準拠しており、周波数比較だけでなく精密測地学にも利用できる。NICTは広帯域フィードと受信機を独自に開発して34mアンテナに搭載し、小型のVLBIアンテナをつくばの産業技術総合研究所(以下、産総研)と、東京小金井市のNICTに設置し、NICTの維持する日本標準時であるNICTのUTC[NICT]と産総研の維持するUTC[NMIJ]との比較実験を行っている。測地学への寄与としては、国内のVGOS局として完成した国土地理院の石岡測地観測局との試験観測を実施し、世界初となる8GHz帯域幅の超広帯域信号の合成に成功した。これによりVLBIの遅延計測精度が格段に向上することが期待される。また米国MITのWestford局との9500kmの基線で広帯域VLBIシステムを使った初の国際観測を実施して、MITとNICTそれぞれの相関処理でフリンジを検出し、システムの互換性の調整確認を実施している。
2.産総研―NICT小金井間の周波数比較VLBI実験
GALA-V周波数比較プロジェクトでは、日本標準時を維持するNICTと原子周波数標準を開発している産総研に小型VLBIアンテナを設置し、VLBI技術を使った周波数比較のテストベッドとしてUTC[NICT] とUTC[NMIJ]の比較実験を行っている。8GHzの周波数で1GHz帯域幅を使った観測では、GPSとほぼ同程度の比較ができることを確認した。今後、長期の周波数比較試験や、以下に述べる広帯域の受信システムへ帯域幅を広げた実験を行っていく予定である。
3.国土地理院石岡局との超広帯域のVLBI試験観測
国土地理院が2014年に石岡測地観測局に完成したVGOS仕様の口径13mの広帯域VLBIアンテナ(以下「石岡13mアンテナ」)は、鹿島34mアンテナに次いで国内で2番目に大きな広帯域観測が可能なVLBI観測局である。我々は2014年末から2015年はじめに掛けて、 NICT鹿島34mアンテナと石岡13mアンテナの基線で試験観測を実施した。電波星から来る6-14GHzの周波数帯域の電波を、6つのバンド(バンド幅1GHz)でデータ取得し、相関処理した結果すべてのチャンネルでフリンジを検出した。更に広帯域のバンド幅合成ソフトによって6つのバンドのトータル8GHz帯域幅の位相を合成することに成功した。このような超広帯域のVLBI計測は世界初であり、理論的には数十フェムト秒の遅延計測精度となる。しかし実際にはさまざまな誤差要因により精度は低下するため、今後実際の計測精度検証を進めていく。
4.広帯域VLBIシステム初の国際VLBI実験
NICTの進めるGALA-Vプロジェクトでは、ダイレクトサンプリング方式の新しい独自のデータ取得系を開発するのと並行して、VGOSとの共同観測も視野に入れたデータ収集システムの開発を進めている。2015年1月には、米国MITのHaystack観測所のWestford18mアンテナと鹿島34mアンテナとの間で世界初となる、広帯域VLBIシステムを使った9500km基線の国際VLBI観測を成功させた。Haystack観測所とNICTそれぞれの取得データはJGN-X, APAN, Internet2 の高速インターネット回線を通して交換され、検証のため両機関でデータ処理を行ってフリンジが確認された。
5. まとめ
GALA-V周波数比較プロジェクトでは、広帯域VLBI観測システムを使って、国土地理院石岡測地観測局との広帯域観測や、米国との試験観測に成功し、VGOSシステムとの互換性を考慮しつつ、新しい広帯域のVLBI観測システムの整備を進めている。2015年度はこのシステムを使って広帯域化の効果を確認し、長期の周波数比較実験等を行ってVLBI周波数比較の精度検証を進める。