日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM34] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*望月 伸竜(熊本大学大学院先導機構)、松島 政貴(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)

18:15 〜 19:30

[SEM34-P05] 伊能忠敬山島方位記に基づく19世紀初頭の日本地磁気偏角の解析 第9回報告

*辻本 元博1面谷 明俊2宮内 敏3 (1.日本地図学会、2.山陰システムコンサルタント、3.銚子ジオパーク)

キーワード:地磁気偏角, 伊能忠敬, 山島方位記, 測量基点, 測量対象, 学際

国宝「山島方位記」は伊能忠敬による1800年から1816年迄の北海道東岸から屋久島迄の推計約20万件の精度0°05′の陸上磁針測量方位角を記録した67巻でなる台帳である。1917年に唯一詳細位置が既知であった江戸(東京)深川伊能隠宅での1802年、1803年の磁針測量方位角データからの地磁気偏角の解析後に頓挫した解析を理科系と文科系間の学際同時解析で進めている。我々はこの地球惑星科学、測量学、古地図学、郷土史、人文科学を横断する学際同時解析により、分野に分かれた伝統的な研究方法よりも真北方位、地磁気偏角及び山島方位記に記載の磁針測量実施基点の短い記述や測量対象地点の歴史的地名を解明する詳細な根拠を増やすことができる。
(1)「山島方位記」には 伊能忠敬の測量実施基点の短い記述、測量対象地点名、0°05′精度の磁針測量方位角が記載されている。
(2)解析の手順  景観再現ソフトと国土地理院GSI電子国土地図により個々の測量対象地点の緯度経度と測量実施基点概略位置の緯度経度を知り、測量実施基点概略位置から各測量対象地点への真北方位角の概略を把握する。
地磁気偏角=真北方位角-山島方位記に記載の磁針コンパス測量方位角。
測量実施基点概略緯度経度(精度0°00′01″)の位置から複数の測量対象地点位置への真北方位角から磁針コンパス測量方位角を差し引いた総ての地磁気偏角の値(0°00′00.01″単位)が互いにより近似になる測量実施基点詳細位置の緯度経度(精度0°00′00.01″)を逆算計算する。各地磁気偏角の値の平均値を0°00′00.001″で計算し、その測量実施基点に於ける伊能忠敬測量実施当日の地磁気偏角として0°01′単位で発表する。計算速度向上と精度確保の為にエクセルの連続式を使う。可能な限り測量実施基点の現地に行き実景を確認し、GPS送受信機で緯度経度を測り、地磁気偏角の数値を再計算する。
(3)「山島方位記」を解析し、19世紀初頭に遡り日本を地磁気偏角データの過疎地から正確な地磁気偏角データの集中地域に変え、北東アジアに新しいデータを提供する。解析済み地点数は183を超えた。 当時の日本列島の等偏角線の概要と西日本沿岸での0°15′毎の偏角の分布が現れ始めた。解析は沿岸から本州内陸部へ進みつつある。
(4)「山島方位記」から解析した当時の日本列島の等偏角線とアメリカ海洋大気庁NOAA作成Historical Magnetic Declination in.1800,
1805,1810,1815 を比較すると概ね同一である。小さな相違はアメリカ海洋大気庁HMDの西偏が約5年遅いことである。
(5)但し、「山島方位記」の解析からはアメリカ海洋大気庁HMDに描けない地域的な磁気異常と考えられる地磁気偏角も北海道東部南
岸、能登半島の一部、伊勢の浅熊山、九州の延岡等で判明した。 「山島方位記」の解析はますます重要になる。