18:15 〜 19:30
[PPS21-P19] 衝突実験による玄武岩標的中の密度・誘電率・クラック量の測定
約46億円前に形成された月は、その表面に多くの隕石が衝突し、多くのクレーター地形が残されている。月の表側には、巨大な隕石衝突による盆地構造が形成されており、その内側では、玄武岩が厚く堆積し、海領域が形成されている。月周回衛星SELENE(かぐや)に搭載された月レーダーサウンダーは、月の海領域における地下構造探査に成功した[Ono et al., 2009]。この観測データを使って、湿りの海において推定された最上層の玄武岩の誘電率からこの玄武岩層が20%以上の空隙率をもつことが示唆された[Ishiyama et al., 2013]。この空隙率は、アポロサンプルの空隙率を上回ることから月表層の玄武岩には隕石衝突で形成されたクラックによるものと推定されているが、衝突によるクラックが実際に地下にどのような分布で形成され、誘電率にどのように反映されていたかは、空隙が均等に混合された媒質を想定する等価誘電率モデルでは正確に検討できない。そこで、本研究では、衝突実験により玄武岩標的にクレーターを形成し、その内部の密度・クラック量・誘電率の測定を行った。
衝突実験は、2014年12月に宇宙科学研究所の横型二段式軽ガス(水素)銃を使用して行われた。標的には20 cm×20 cm×10 cmの玄武岩、弾丸には直径0.32cmのステンレス球(質量0.133g)を用い、衝突速度依存性を調べるため、3.5, 4.5, 5.5, 6.5 km/sの各速度で衝突させた。再現性確認のため、同じ条件の実験を2回ずつ行った。次に、形成されたクレーター周辺部で、クラック異方性による誘電率の相違を調べるため、1つの試料から衝突に平行な方向と垂直な方向に沿った直径2.5cm・長さ約8〜10cmの円柱状のコアサンプルを切り出した。このクラックの異方性の調査により、空隙が不均一に混合された媒質を想定する誘電率モデル[e.g., Sihvola, 1988]で説明できるかどうかがわかる。最後に、切り出したコアサンプルを約4mmの厚さごとに切断し、厚片を作成した。また、厚片内のクラック分布の同定をしやすくするため、厚片の表面を研磨した。密度は、厚片の重量と体積の測定から見積もり、クラック量は厚片の表面をスキャナで読み取ることで調べた。誘電率は、東陽テクニカ社の誘電体測定システム(12962A型誘電率測定インターファイスと1260型インピーダンスアナライザ)で5MHzの周波数で測定した。講演では、この衝突実験で得られた試料の初期解析結果を報告する。
謝辞 : 実験は、JAXA宇宙科学研究所のスペースプラズマ共同利用により行われた。
衝突実験は、2014年12月に宇宙科学研究所の横型二段式軽ガス(水素)銃を使用して行われた。標的には20 cm×20 cm×10 cmの玄武岩、弾丸には直径0.32cmのステンレス球(質量0.133g)を用い、衝突速度依存性を調べるため、3.5, 4.5, 5.5, 6.5 km/sの各速度で衝突させた。再現性確認のため、同じ条件の実験を2回ずつ行った。次に、形成されたクレーター周辺部で、クラック異方性による誘電率の相違を調べるため、1つの試料から衝突に平行な方向と垂直な方向に沿った直径2.5cm・長さ約8〜10cmの円柱状のコアサンプルを切り出した。このクラックの異方性の調査により、空隙が不均一に混合された媒質を想定する誘電率モデル[e.g., Sihvola, 1988]で説明できるかどうかがわかる。最後に、切り出したコアサンプルを約4mmの厚さごとに切断し、厚片を作成した。また、厚片内のクラック分布の同定をしやすくするため、厚片の表面を研磨した。密度は、厚片の重量と体積の測定から見積もり、クラック量は厚片の表面をスキャナで読み取ることで調べた。誘電率は、東陽テクニカ社の誘電体測定システム(12962A型誘電率測定インターファイスと1260型インピーダンスアナライザ)で5MHzの周波数で測定した。講演では、この衝突実験で得られた試料の初期解析結果を報告する。
謝辞 : 実験は、JAXA宇宙科学研究所のスペースプラズマ共同利用により行われた。