日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG64] 海洋底地球科学

2015年5月28日(木) 14:15 〜 16:00 A05 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)、石塚 治(産業技術総合研究所活断層火山研究部門)、土岐 知弘(琉球大学理学部)、高橋 成実(海洋研究開発機構地震津波海域観測研究開発センター)、座長:山下 幹也(海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター)、土岐 知弘(琉球大学理学部)

15:30 〜 15:45

[SCG64-35] 海底環境放射線・長期変動測定のためのNaI γ線計測装置の開発と最初の測定

*蜷川 清隆1豊田 新1藤原 泰誠1中川 益生1山本 勲1熊谷 英憲2木下 正高2久保 信3芦 寿一郎4 (1.岡山理科大学、2.海洋研究開発機構、3.クリアパルス株式会社、4.東京大学大学院新領域創成科学研究科)

キーワード:放射線, 海底, 長期変動, NaI, γ線計測装置

日本列島においては数十年以内に東海・東南海・南海における巨大地震が予想されており、人命及び社会的基盤の被害軽減のためにも、海溝型地震の機構と地震発生帯において起きている物理的化学的プロセスを理解することは極めて重要な科学的課題である.1995年の兵庫県南部地震において、地震の前に空気中及び地下水中ラドン濃度が増加したという観測結果を踏まえ、この研究では、予想される東南海地震の震源域である熊野灘沖海底において、ガンマ線計測によって連続的に水中の放射線濃度の測定を行い、微小地震との相関を調べて、地殻の変動に対する地殻内の流体の応答についての基礎的な研究に資することを目的としている.
これまでの海底の環境放射線測定は,海洋調査船の遠隔操作無人探査機「ハイパードルフィン」や有人潜水調査船「しんかい6500」とNaIγ線計測装置をケーブルでつないで(ケーブル式NaI),探査機や潜水調査船の潜航とともに目的の場所に赴き,到着点での放射線を測定することによって,放射線線量の測定、及び空間の分布を測定することで主におこなわれてきた.しかしこのシステムでは,一定の場所での時間変動測定はおこなうことはできなかった.その後自己記録式γ線計測システム(GRAMS [Gamma Ray Monitoring System])が開発され,一定の場所で海底γ線計測がおこなわれたが,12日間の短い期間の測定に終わっている.今回新たに,「1.消費電力を抑えるために間欠運転モードを備えている.2.電源電圧が一定電圧(例えば6V)以下に低下した場合は自動的に測定を停止し,電源を切断する.このため,電池の液漏れ,ガス発生を抑えることができ,電池用耐圧容器の内圧を高める危険性を防げる.3.ケーブル式NaIは12V 170mA (2W) であるのに対して,今回開発した深海用低電力消費型γ線記録装置(独立式NaI)は6V 110mA (0.66W)であるので,計測時の消費電力も1/3に減っている.」の特色と持った仕様の海底設置型電池搭載長期NaI γ線計測装置(独立式NaI)を開発・製作し,一定の場所での海底環境放射線の長期時間変動計測を可能にした.開発した独立式NaIγ線計測システムの電力は単3アルカリ電池180本で供給しているので,経費的にも安くすんでいる.
初めての測定として、4月24日から8月3日の約3.5ヶ月間、熊野沖南海トラフの冷湧水域においておこなった.途中原因不明のNaIの感度変化が起こったが,測定結果は換算U含有量0.19±0.07ppm,Th 0.07±0.07ppm,K 0.05±0.01wt.%でのほぼ一定の値を示し,大きな変動は見られなかった.しかし,フーリエ解析したところ微弱ながら潮汐と思われる25時間のピークがでてきた.