日本地球惑星科学連合2015年大会

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[O-01] ジオパークへ行こう

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

18:15 〜 19:30

[O01-P31] 世界の「かんらん岩ジオパーク」の魅力と共同計画

*新井田 清信1原田 卓見2児玉 正敏2 (1.北海道大学総合博物館、2.様似町アポイ岳ジオパーク推進協議会)

キーワード:アポイ岳ジオパーク, かんらん岩, 上部マントル, マグマ, 地球内部, 地球変動

アポイ岳は,日高山脈南端にある標高810mのかんらん岩の山である.ちょうど.地理学的にも地質学的にも千島弧と本州弧の2つの島弧の境界部に位置し,かんらん岩は日高山脈の上昇とともに玄武岩質マグマのふるさと「上部マントル」から持ち上げられ,千島弧側の北米プレートが西側ユーラシアプレートに衝上して地表に露出した(新井田,1999, 2010)と解説されている.アポイ岳ジオパークでは「地球深部からの贈りものがつなぐ大地と自然と人々の物語」を共通テーマに35のジオサイトが展開されており,そのサブテーマの1つに「かんらん岩から地球の深部と大地の変動を学ぶ」という目標がある.世界的には,アポイ岳以外にも「かんらん岩ジオパーク」が知られている.ここでは,以下の事例から,世界の「かんらん岩ジオパーク」の特徴や魅力を整理し,近未来的な共同課題を検討してみる.

1.セシア‐バルグランデ(イタリア:Sesia-Val Grande Geopark):イタリア北西部のイブリア‐ベルバノ帯に新鮮なかんらん岩(造山帯レルゾライト)が伴われる.なかでもFinero岩体やBalmuccia岩体は有名で,アポイ岳の幌満かんらん岩と同様に世界的な岩体として多数の研究報告があり,主要なジオサイト(それぞれGeosite No. 4および16)に設定されている.
2.ハルツ ブラウンシュバイガー ランド オストファレン(ドイツ:Geopark Harz Braunschweiger Land Ostfalen):ハルツの山岳地域には,上部マントルかんらん岩の代表的タイプの1つになっている「ハルツバージャイト」(玄武岩質マグマ成分に著しく涸渇したタイプのかんらん岩)の模式地があり,ジオサイト(No. 100)に設定されている. その周辺地域では,古い地質時代のオフィオライト質岩石も観察できる.
3.騎士の大地(ポルトガル:Lands of Knights Global Geopark):ポルトガル北部に分布する極めて古いオフィオライト岩体(Iberian massif,560~245Ma バリスカン造山帯の一部)を地質遺産に,2014年に登録された新しい世界ジオパーク.多数のジオサイト(Nos.G01~42)で,上部マントルかんらん岩やはんれい岩,変成岩などが観察できる.
4.オマーンでも,テーチス海オフィオライトの世界ジオパークが企画されている.ここでは,上部マントルかんらん岩~はんれい岩~枕状溶岩まで,海洋リソスフェアをつくる代表的な岩石全体を連続的に観察でき,さらに大規模な地球変動が体感できる世界的な重要サイトが実現する.
5.かんらん岩ゼノリスのジオサイトをもつ世界ジオパーク:(1)韓国の済州島(チェジュ島)ジオパーク(Jeju Island Geopark)や(2)ポルトガル沖の大西洋に浮かぶアゾレス島のジオパーク(Azores Geopark)は,ともに火山島のジオパークで,上部マントルかんらん岩のゼノリスを含む溶岩のジオサイトがある.

このような「かんらん岩ジオパーク」では,地球深部の玄武岩質マグマのふるさと「上部マントル」の岩石を実際に手に取って観察でき,地球内部の構造やしくみなどに関心を寄せることができる.また,アポイ岳ジオパークのように,造山帯レルゾライトやオフィオライト質かんらん岩をジオサイトにもつ地域では,過去から現在にいたる地球変動の歴史に触れながら,大規模な大地の動きを体感できる.
この発表では,アポイ岳ジオパークと世界の他地域の「かんらん岩ジオパーク」が共同で取り組む企画を考えてみたい.ここでは,魅力的な共通テーマとして,「地球の深部」や「大地の変動」を世界に発信できる.

<文献>
新井田清信,1999,北海道大学総合博物館学術資料展示解説書,22-28.
新井田清信,2010,日本地質学会(編)日本地方地質誌1「北海道地方」,朝倉書店,1-15.