日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-05] Future Earth - 持続可能な地球へ向けた統合的研究

2015年5月25日(月) 14:15 〜 16:00 103 (1F)

コンビーナ:*氷見山 幸夫(北海道教育大学教育学部)、中島 映至(東京大学大気海洋研究所)、谷口 真人(総合地球環境学研究所)、大谷 栄治(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、座長:山形 与志樹(独立行政法人国立環境研究所)

14:40 〜 15:00

[U05-11] 生物多様性と生態系サービスの持続的保全・利用に向けた社会学・生態学統合研究の展開

*仲岡 雅裕1 (1.北海道大学北方生物圏フィールド科学センター厚岸臨海実験所)

キーワード:生態系連環, シナリオ解析, 生物多様性フットプリント, 共同管理, 土地利用変化, 多重空間スケールの相互作用

グローバル経済の拡大は、地球規模の気候変動や、土地・海域利用の大幅な改変等を通じて、自然生態系における生物多様性の喪失や生態系サービスの低下を引き起こしている。この問題は特に生物多様性のホットスポットであるアジア諸国で深刻であるが、先進国に比較すると、自然科学、社会科学の両側面とも研究が遅れている。生物多様性と生態系サービスの持続的利用を達成するためには、地域住民が政府、地方自治体、非営利団体、科学者などと共に、科学的知識に基づいた共同計画、共同管理、共同生産を進める体制を作り、拡げていくことが重要である。しかし、そのような効果的な生態系の管理や利用システムを作るための科学的知識および社会学的基盤は不十分である。現在認識されるボトルネックとしては、生物多様性や生態系機能の詳細な分布情報の欠如、生物多様性や生態系サービスの変異をもたらすプロセスの不十分な理解、生態系間の関連性(例、陸域生態系と海域生態系の相互作用)に関する知識の不足、意思決定を行う地域ステークホルダー集団に対する科学的知識の伝達の不十分さ、異なるステークホルダー間の円滑なコミュニケーションの不足、などが挙げられる。これらを解決するためには、自然科学から社会科学にわたるさまざまな学問分野の専門家による分野横断的なネットワーク形成による、新たな超域科学の創設が求められている。
講演者を代表とする国際的な研究者のグループは、平成26年4月から2年間にわたって、ベルモントフォーラムの「生物多様性と生態系サービスのシナリオ」分野の共同研究活動事業を実施する。TSUNAGARI (Trans-System, UNified Approach for Global And Regional Integration of social-ecological study toward sustainable use of biodiversity and ecosystem services)を題された本プロジェクトは、アジア地域における生物多様性と生態系サービスの持続的な利用を実践するために、多様な分野にわたる社会経済学および生態科学の研究者の国際ネットワークを構築し、新たな研究課題、アプローチを提案することを目的とする。本プロジェクトは以下の4つの課題から構成される。(1)高解像度生態系空間情報を広域スケールでの解析に利用するための方法論の確立、(2)生物多様性・生態系サービスの変動に対する人間活動由来の負荷、および生物多様性・生態系サービスの利用に関する人間社会の意思決定方法における多重空間スケール依存性の検証、(3)森林から海洋に至る生態系間のつながりが、生物多様性・生態系サービスの変動、および集水域の異なる場所に住む地域住民の意思決定に与える影響の評価、(4)上記1-3の成果を踏まえた上での、生物多様性・生態系サービスの持続的な利用を達成するためのシナリオ解析に必要な指標やモデルの開発。
本プログラムの最終的な目標は、上記に挙げたボトルネックを解決して、アジアおよび世界における生物多様性と生態系サービスの持続的利用・管理の進展に貢献できるフレームワークを構築するところにある。机上の学問にとどまらず、実際の現場において、地域住民から国際社会に至るあらゆる階層での意思決定を向上させるための具体的な提言に結びつく研究アプローチの立案を目指したい。