11:15 〜 11:30
[MIS35-09] 地球内部への水輸送 - 海洋プレートの実態研究 -
キーワード:海洋プレート, アウターライズ, 含水化, 地震構造探査, 水輸送, Vp/Vs
地球表層に豊富に存在する水が地球内部に運ばれると、地震火山活動やマントル対流など固体地球のダイナミクスに多大な影響を及ぼす。地球の進化は、地球表層から地球内部への水輸送を抜きにしては語ることはできないだろう。では、表層の水はどのようにして地球内部へ運ばれているのだろうか?高温高圧な地球内部に液体の水は浸透できない。そのため、水はマントル対流による物質循環の一環として、含水鉱物の形で地球内部へと運ばれることになる。すなわち、含水化した海洋プレートの沈み込みが地球内部への水輸送を担っている。
海洋プレートの含水化は、従来、中央海嶺におけるプレート生成時の地殻の含水化が主要なものであると考えられていた。しかし、最近になって、海底面からマントルまで貫くアウターライズ断層のような大規模な亀裂が水の浸透経路として作用することで、マントル含水化(蛇紋岩化)が大規模に生じている可能性が指摘されるようになってきた。蛇紋岩化することでマントルは地殻に比べて大量の水を含み得るため、蛇紋岩化が大規模に進行しているならば海洋プレートが輸送する水量は従来の想定より遥かに大きいことになる。
このような可能性を検証するために、近年、世界各地のアウターライズ海域で盛んに構造研究が実施されている。海洋研究開発機構でも、日本列島に沈み込む直前の太平洋プレートにおいて海底地震計と人工震源を用いた大規模な地震構造探査研究を2009年より実施しており、アウターライズ断層の発達に伴い地震波速度が低下するだけでなく、ポアソン比(Vp/Vs比)が上昇することなどを世界に先駆けて明らかにしてきた。これらの結果は、アウターライズ断層の発達に伴い海洋プレート内に水が浸透しているという解釈と整合的であり、沈み込む直前のプレート折れ曲りが地球内部への水輸送、ひいては地球の進化を解き明かす一つの鍵になっていることを示唆している。
本講演では、海洋研究開発機構が太平洋プレート上で実施してきた地震構造探査研究の成果を中心に、アウターライズにおける構造研究の現状を紹介する。さらに、たとえば水輸送量の定量化や空間不均質性など、地球内部への水輸送史の把握を目指す上で残された課題を議論し、今後進むべき観測研究について提案をしていきたい。
海洋プレートの含水化は、従来、中央海嶺におけるプレート生成時の地殻の含水化が主要なものであると考えられていた。しかし、最近になって、海底面からマントルまで貫くアウターライズ断層のような大規模な亀裂が水の浸透経路として作用することで、マントル含水化(蛇紋岩化)が大規模に生じている可能性が指摘されるようになってきた。蛇紋岩化することでマントルは地殻に比べて大量の水を含み得るため、蛇紋岩化が大規模に進行しているならば海洋プレートが輸送する水量は従来の想定より遥かに大きいことになる。
このような可能性を検証するために、近年、世界各地のアウターライズ海域で盛んに構造研究が実施されている。海洋研究開発機構でも、日本列島に沈み込む直前の太平洋プレートにおいて海底地震計と人工震源を用いた大規模な地震構造探査研究を2009年より実施しており、アウターライズ断層の発達に伴い地震波速度が低下するだけでなく、ポアソン比(Vp/Vs比)が上昇することなどを世界に先駆けて明らかにしてきた。これらの結果は、アウターライズ断層の発達に伴い海洋プレート内に水が浸透しているという解釈と整合的であり、沈み込む直前のプレート折れ曲りが地球内部への水輸送、ひいては地球の進化を解き明かす一つの鍵になっていることを示唆している。
本講演では、海洋研究開発機構が太平洋プレート上で実施してきた地震構造探査研究の成果を中心に、アウターライズにおける構造研究の現状を紹介する。さらに、たとえば水輸送量の定量化や空間不均質性など、地球内部への水輸送史の把握を目指す上で残された課題を議論し、今後進むべき観測研究について提案をしていきたい。