14:30 〜 14:45
[G02-02] 沖縄県に特有な自然災害の理解と防災教育のためのカリキュラム案
キーワード:防災教育, 亜熱帯, 地震, 津波, 台風
亜熱帯域に位置し海に囲まれた弧状列島より成る沖縄県では、日本の他県と異なる特有の自然災害が多発している。南西諸島海溝沿いの海溝型巨大地震、特に、宮古・八重山域ではマグニチュード7を超える地震も頻繁に発生している。プレート内活断層も数多く見られ、島内、周辺海域を問わず、徳之島から与那国島に至る島弧を胴切りするタイプの断層の多くが活断層と認定されている。狭い島嶼から成る県域での地震は殆どが海底で発生するため、地震が発生すると常に津波被害を警戒しなければならない。2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震以降、沖縄県でも津波浸水高の想定を見直し、複数の断層の連動など、「東日本大震災級」の地震が発生した際の想定結果が2013年3月に公表されている。
一方、2013年台風30号によるフィリピンでの高潮被害は「気象津波」とも呼ばれる現象に近く、台風により持ち上げられた海水に台風の強風が吹き込み、津波と同じメカニズムで奥まった湾の海岸地帯を襲ったものである。津波浸水高の予測がそのまま高潮にも当てはまることから、海岸付近では今後同様の警戒を行う必要がある。
狭い島嶼から成る県であるため、海岸に隣接した学校も多い。幾つかの例を示すと、石垣市では小学校のうち、標高10m未満に位置する学校が30%、30m未満では実に90%となる。竹富町では、標高10m未満が64%、30m未満では91%となる。このため、常日頃から「海洋災害」への備えを行い、学校教育の中に、沖縄県に特有な防災教育を取り入れていく必要がある。
高校新課程「地学基礎」の開始に伴い、地学現象を自然災害の観点から捉える単元が入ることとなった。しかし、多くの教科書では、「防災」と云う観点からの記載は少なく、また、「防災」と「環境」とを併せて扱うものも多い。これまで、学校教育の中で防災(人為災害を含む)が取上げられているのは、中学校の「技術・家庭」の中の「家庭」分野、高等学校の「家庭」(家庭基礎・家庭総合)である。家庭科は、衣生活・食生活・住生活を中心として、環境への配慮なども含め、安心・安全な家庭生活や社会生活を送るための知識を扱う科目である。防災・減災については、「住生活」の単元の中で扱われる。
本報告者は、教員免許更新制度の中の免許更新講習で、沖縄県内の防災教育を取り上げ、東日本大震災の翌年の2012年度から、「災害に強い沖縄を目指して―自然災害の正しい理解のための教材作りの実践」と題した免許更新講習を行うこととし、中学・高校の理科・家庭科教員を主対象として、琉球大学キャンパスで毎年1回、宮古・石垣地区で隔年に1回ずつ開講した。それぞれ現在担当している学校種・学年を対象とした教材を作成することを最終目標として、出来上がった教材を持ち帰る方式としている。
2014年度にこれらの結果作成された幾つかの教材の中には、高校家庭担当教員から、「地震から自分の身を守るために~安心・安全な住まいを考えよう~」と題した教材が提出された。これは、家庭科の立場から、「住居の安全」を生徒に考えさせる内容のもので、解説資料に加えてワークシートが用意された。また、中学校理科教員による「台風から身を守ろう」では、台風のとき、どのような家が安全、「台風に強い家」の設計を含めた内容の提案があった。
以上を考慮の上、2014年度の実践例も参考とし、アクティブラーニングを取り入れた中学校・高等学校の1日コースの防災教育カリキュラムとして、以下の授業計画を仮提案する。第2校時以降は、5名程度の班×8班に分かれ、班毎に行動する。
第1校時:(講義)沖縄の自然災害を知ろう-地震・津波・台風・土砂災害の実例から学ぶ。
第2校時:津波が来たらどこに逃げる-沖縄県による津波浸水高想定図をもとに、自分たちの学校の位置・標高、周辺の高台の有無、高台に通じる道路などを地図から抽出し、避難場所、避難経路を検討。これは前述の通り、台風の際にも役に立つ。
第3校時:第2校時の避難経路を実際に通り、所要時間、途中の障害物の有無などの実地検証。
第4校時:第3校時の反省会、課題抽出、解決法を検討。
第5校時:地震組4班、台風組4班に分かれ、それぞれの防災対策を話し合う。
(地震組)地震から自分の身を守るために~安心・安全な住まいを考えよう~-イラストをもとに、固定されていない家具など危険要素を抽出し、危険防止のための対策を考える。
(台風組)台風のとき、どのような家が安全か考えよう-塀や防風林などを含む安全な家の設計図を考える。
第6校時:非常持ち出し品など、日常の備え、情報の入手、家族や近隣の人びととの協力、避難と復旧の際の連携について話し合う。本日のまとめとして、班ごとに発表資料を作成(模造紙1枚にまとめる)。
第7校時:教員・他学年の生徒も集めて、講堂・体育館などで発表会。
一方、2013年台風30号によるフィリピンでの高潮被害は「気象津波」とも呼ばれる現象に近く、台風により持ち上げられた海水に台風の強風が吹き込み、津波と同じメカニズムで奥まった湾の海岸地帯を襲ったものである。津波浸水高の予測がそのまま高潮にも当てはまることから、海岸付近では今後同様の警戒を行う必要がある。
狭い島嶼から成る県であるため、海岸に隣接した学校も多い。幾つかの例を示すと、石垣市では小学校のうち、標高10m未満に位置する学校が30%、30m未満では実に90%となる。竹富町では、標高10m未満が64%、30m未満では91%となる。このため、常日頃から「海洋災害」への備えを行い、学校教育の中に、沖縄県に特有な防災教育を取り入れていく必要がある。
高校新課程「地学基礎」の開始に伴い、地学現象を自然災害の観点から捉える単元が入ることとなった。しかし、多くの教科書では、「防災」と云う観点からの記載は少なく、また、「防災」と「環境」とを併せて扱うものも多い。これまで、学校教育の中で防災(人為災害を含む)が取上げられているのは、中学校の「技術・家庭」の中の「家庭」分野、高等学校の「家庭」(家庭基礎・家庭総合)である。家庭科は、衣生活・食生活・住生活を中心として、環境への配慮なども含め、安心・安全な家庭生活や社会生活を送るための知識を扱う科目である。防災・減災については、「住生活」の単元の中で扱われる。
本報告者は、教員免許更新制度の中の免許更新講習で、沖縄県内の防災教育を取り上げ、東日本大震災の翌年の2012年度から、「災害に強い沖縄を目指して―自然災害の正しい理解のための教材作りの実践」と題した免許更新講習を行うこととし、中学・高校の理科・家庭科教員を主対象として、琉球大学キャンパスで毎年1回、宮古・石垣地区で隔年に1回ずつ開講した。それぞれ現在担当している学校種・学年を対象とした教材を作成することを最終目標として、出来上がった教材を持ち帰る方式としている。
2014年度にこれらの結果作成された幾つかの教材の中には、高校家庭担当教員から、「地震から自分の身を守るために~安心・安全な住まいを考えよう~」と題した教材が提出された。これは、家庭科の立場から、「住居の安全」を生徒に考えさせる内容のもので、解説資料に加えてワークシートが用意された。また、中学校理科教員による「台風から身を守ろう」では、台風のとき、どのような家が安全、「台風に強い家」の設計を含めた内容の提案があった。
以上を考慮の上、2014年度の実践例も参考とし、アクティブラーニングを取り入れた中学校・高等学校の1日コースの防災教育カリキュラムとして、以下の授業計画を仮提案する。第2校時以降は、5名程度の班×8班に分かれ、班毎に行動する。
第1校時:(講義)沖縄の自然災害を知ろう-地震・津波・台風・土砂災害の実例から学ぶ。
第2校時:津波が来たらどこに逃げる-沖縄県による津波浸水高想定図をもとに、自分たちの学校の位置・標高、周辺の高台の有無、高台に通じる道路などを地図から抽出し、避難場所、避難経路を検討。これは前述の通り、台風の際にも役に立つ。
第3校時:第2校時の避難経路を実際に通り、所要時間、途中の障害物の有無などの実地検証。
第4校時:第3校時の反省会、課題抽出、解決法を検討。
第5校時:地震組4班、台風組4班に分かれ、それぞれの防災対策を話し合う。
(地震組)地震から自分の身を守るために~安心・安全な住まいを考えよう~-イラストをもとに、固定されていない家具など危険要素を抽出し、危険防止のための対策を考える。
(台風組)台風のとき、どのような家が安全か考えよう-塀や防風林などを含む安全な家の設計図を考える。
第6校時:非常持ち出し品など、日常の備え、情報の入手、家族や近隣の人びととの協力、避難と復旧の際の連携について話し合う。本日のまとめとして、班ごとに発表資料を作成(模造紙1枚にまとめる)。
第7校時:教員・他学年の生徒も集めて、講堂・体育館などで発表会。