10:36 〜 10:39
[SVC47-P06] 伊豆大島火山におけるカルデラ形成以降のマグマ変遷の解明
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:伊豆大島, 岩石学, 火山学, マグマ供給系
伊豆大島は伊豆-小笠原諸島の最北に位置し、伊豆-マリアナ弧に属する火山島である。伊豆大島火山の活動は、先カルデラ期・カルデラ形成期・後カルデラ期に分けられる。伊豆大島は約1500年前のカルデラ形成噴火以降は12回にわたる中規模噴火を発生させており、これらの噴火による噴出物は新期大島層群と呼ばれている(Nakamura, 1964)。伊豆大島火山におけるマグマの変遷については、これまで主に記載岩石学的特徴や全岩主成分化学組成について調べられ、その結果、たとえばカルデラ形成以降の噴出物の全岩化学組成では、Mg#の値がほぼ単調に減少していることが報告されている(藤井ほか, 1988)。そして、カルデラ形成以降の噴火噴出物は、新たなマグマの注入をほとんど受けずに継続的に分化が進行した、基本的に単一のマグマ溜まりに由来していると考えられている(川辺, 1991)。そこで本研究では、カルデラ形成以降のマグマプロセスの変遷についてさらに詳細に検討するため、新期大島層群の噴出物を対象に地球化学的解析を行う。今回はその第一段階として、岩石記載および全岩化学組成から新期大島層群の噴出物の変遷についてまとめ、特に火口列との関係に着目しながらマグマシステムについて考察する。
伊豆大島の火山地質図(川辺, 1998)をもとに、新期大島層群の12ユニットに加えて、1950年および1986年噴出物から、合計44試料採取した。採取した試料は溶岩およびスコリアであり、斑晶量1.5~10wt.%の玄武岩~玄武岩質安山岩である。斑晶組み合わせは斜長石、単斜輝石、斜方輝石であり、一部は磁鉄鉱微斑晶を含む。これらの試料は磁鉄鉱微斑晶を多く含むタイプ1、斜長石集斑晶を多く含むタイプ2、そのどちらも含まないタイプ3に分けられる。全岩化学組成で見ると噴出物はSiO2=52~58wt.%の範囲に分布しているが、1986年山腹噴火の噴出物を除くと、SiO2=52~54.5wt.%の狭い範囲に収まる。タイプ2の噴出物においてAl2O3量の変化が見られるものもあるが、大部分の噴出物については斜長石の斑晶量に関わらずAl2O3=14~15wt.%と狭い範囲に分布している。また、Ba/Zrなどの液相濃集元素の濃度比はほぼ一定である。斜長石斑晶のコア部のAn値は、分析したどの噴火ユニットにおいてもAn=90付近にピークを持っていた。一方、斜長石斑晶のリム部については、噴火年代が新しくなるに従ってAn値のピークが減少する傾向が見られた。また、カルデラ形成期の噴出物には逆累帯構造を示す斜長石斑晶が多く見られたが、その後の噴出物ではあまり見られなかった。
まず、全岩の液相濃集元素の比がほぼ一定であったことから、新期大島層群の噴出物は、基本的には単一の初生マグマ由来であることが示唆された。また、逆累帯構造をもつ斜長石斑晶が特にカルデラ形成期の噴出物に多く見られることから、カルデラ形成期にはマグマ混合が支配的であった一方で、それ以降は新たな高温のマグマの注入などはほぼ行われていないものと考えられる。さらに、伊豆大島では北西-南東方向に2列の顕著な側火口列が分布し、1986年噴火によって開いた側火口群はちょうどこの2列の間に開口しているように見えるが、この3つの火口列とそれからの噴出物の全岩化学組成を比較すると、火口列ごとに組成差が見られることが分かった。これらのことから、伊豆大島火山下には、ほぼ単一の初生マグマに由来しつつも、火口列ごとに異なった程度に進化した別々のマグマ溜まりが存在している可能性が示唆される。
伊豆大島の火山地質図(川辺, 1998)をもとに、新期大島層群の12ユニットに加えて、1950年および1986年噴出物から、合計44試料採取した。採取した試料は溶岩およびスコリアであり、斑晶量1.5~10wt.%の玄武岩~玄武岩質安山岩である。斑晶組み合わせは斜長石、単斜輝石、斜方輝石であり、一部は磁鉄鉱微斑晶を含む。これらの試料は磁鉄鉱微斑晶を多く含むタイプ1、斜長石集斑晶を多く含むタイプ2、そのどちらも含まないタイプ3に分けられる。全岩化学組成で見ると噴出物はSiO2=52~58wt.%の範囲に分布しているが、1986年山腹噴火の噴出物を除くと、SiO2=52~54.5wt.%の狭い範囲に収まる。タイプ2の噴出物においてAl2O3量の変化が見られるものもあるが、大部分の噴出物については斜長石の斑晶量に関わらずAl2O3=14~15wt.%と狭い範囲に分布している。また、Ba/Zrなどの液相濃集元素の濃度比はほぼ一定である。斜長石斑晶のコア部のAn値は、分析したどの噴火ユニットにおいてもAn=90付近にピークを持っていた。一方、斜長石斑晶のリム部については、噴火年代が新しくなるに従ってAn値のピークが減少する傾向が見られた。また、カルデラ形成期の噴出物には逆累帯構造を示す斜長石斑晶が多く見られたが、その後の噴出物ではあまり見られなかった。
まず、全岩の液相濃集元素の比がほぼ一定であったことから、新期大島層群の噴出物は、基本的には単一の初生マグマ由来であることが示唆された。また、逆累帯構造をもつ斜長石斑晶が特にカルデラ形成期の噴出物に多く見られることから、カルデラ形成期にはマグマ混合が支配的であった一方で、それ以降は新たな高温のマグマの注入などはほぼ行われていないものと考えられる。さらに、伊豆大島では北西-南東方向に2列の顕著な側火口列が分布し、1986年噴火によって開いた側火口群はちょうどこの2列の間に開口しているように見えるが、この3つの火口列とそれからの噴出物の全岩化学組成を比較すると、火口列ごとに組成差が見られることが分かった。これらのことから、伊豆大島火山下には、ほぼ単一の初生マグマに由来しつつも、火口列ごとに異なった程度に進化した別々のマグマ溜まりが存在している可能性が示唆される。