日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS25] 津波堆積物

2015年5月24日(日) 11:00 〜 12:45 201B (2F)

コンビーナ:*後藤 和久(東北大学災害科学国際研究所)、宍倉 正展(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、西村 裕一(北海道大学大学院理学研究院)、座長:西村 裕一(北海道大学大学院理学研究院)、宍倉 正展(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

11:45 〜 12:00

[MIS25-11] 津波堆積物に関する水理実験および数値計算の現状と課題 -津波波源推定に向けて-

*高橋 智幸1 (1.関西大学社会安全学部)

キーワード:津波遡上, 砂移動, 掃流砂, 浮遊砂, 地形変化, 逆解析

津波が浅海域に到達すると大きな掃流力や乱れにより大量の掃流砂と浮遊砂が発生する.これらの砂移動は海岸構造物の倒壊,航路の埋没,発電所の取水口閉塞などの被害の原因となるため,事前に評価することが防災上重要であり,このような現象を再現できる数値モデルが求められている.そこで,水理実験や現地調査が多数行われ,これらのデータを基にして,津波による砂移動を再現できる数値モデルが構築されている.ただし,これらの被害は海水中で発生するため,従来の砂移動に関する研究は常時浸水している状態を想定して行われてきた.すなわち,浅海域での津波による砂移動とそれに伴う地形変化の再現に重きが置かれてきた.一方,津波により運搬された砂は陸上や湖沼で津波堆積物を形成し,これらの津波堆積物を解析することにより,歴史津波に関する貴重な資料が得られている.そこで,最近では陸域での砂移動に関する水理実験が行われるようになっており,数値モデルも陸域に拡張する試みが行われている.
 現在の数値モデルは,津波波源から,外洋伝播,海域での砂移動までをカバーしている.よって,断層モデルが与えられれば,津波による海底地形の変化を評価することが可能である.例えば,防波堤などの複雑な海岸構造物を有する小規模漁港などの計算では数値不安定を生じやすいが,2m格子を用いた詳細な砂移動の計算が実務レベルでも安定して実施されている.よって,津波遡上に伴う陸域への砂の運搬と津波堆積物の形成までを数値モデルが再現できるようになれば,津波堆積物の分布から津波波源を解析することも可能になると期待される.
 このような背景を踏まえて,まず浸水状態で実施されてきた津波による砂移動に関する水理実験とそれを基に構築された数値モデルを説明する.また,数値モデルの津波遡上域への拡張を目指して実施されている陸上での水理実験を紹介する.次に,実海域への適用例を紹介しながら,数値モデルの現状と課題を整理する.最後に,津波堆積物分布から津波波源を推定する技術に関して考察する.