16:30 〜 16:45
[SCG57-32] 水平短縮している堆積盆がなぜ沈降するのか?
キーワード:歪み集中帯, 応力, 堆積盆, 沈降, 内陸地震, 活断層
新潟平野,大阪平野や濃尾平野などでは,数km以上の厚い堆積層が発達しており,これらの盆地は,新第3紀あるいは第4紀以降,沈降を続けていると考えられている (例えば,藤田,1993).また、これらの堆積盆は,新潟-神戸歪集中帯あるいはその周辺に位置し,大きな水平短縮速度で特徴付けられる(Sagiya et al., 2000).地層が水平に短縮すると,直感的には,そこでは物質が過剰となるため短縮した部分で地層が厚くなり、隆起が起こるものと考えられるが,上記の堆積盆では大規模な沈降が続いている.どうしてだろうか?
これらの堆積盆と周辺の山地の境界付近には活断層がある。その運動の逆断層成分により、上盤・下盤側で相対的な隆起・沈降が期待される。しかしながら、絶対的な隆起・沈降については、問題は単純ではない。例えば、半無限弾性体の単純な平面逆断層では、高角でないとそもそも下盤側に絶対的な(遠方から見て)沈降が表れない。断層のある弾性層より下部に粘弾性的な層を導入すると、粘性緩和とアイソスタシーの効果により沈降は生じる。しかしながら、この沈降は、そもそも隆起域の荷重に起因するものであり沈降量は隆起量とせいぜい同程度であるが(例えば、西村・他, 2012)、新潟平野や大阪平野では、沈降量が隆起量に比べて圧倒的に大きい。淡路島では標高数百mの山の上にも大阪層群があるが、盆地下では、対応する層の深さは2km程度である(例えば、堀川・他, 2003)。新潟平野では、西端付近にある変位速度の大きな角田・弥彦断層の上盤側には顕著な山地は存在していない(例えば、石山・他, 2000).
飯尾(2009)は、水平短縮による物質過剰を除去するために、地殻下部でデラミネーションが起こり、地殻が薄くなるために沈降すると考えた。短縮により厚くなった地殻下部で高温・高圧の変成作用が起こり、最上部マントルより重くなって脱落するという考えである。しかし、隆起から一転して沈降となるためには、相当大規模なものが脱落する必要があると考えられる.
飯尾(2009)は短縮域で物質過剰が生じると考えたわけであるが、それは例えば、粘土を短縮するようなイメージである。一方、薄い弾性板の短縮では、バックリングと呼ばれる上か下への一方的な曲がりが起こる可能性も知られている。上への曲がりにおいては、空気中には障害物は無いが、重力に抗するための仕事を必要とする。下への曲がりの場合、海面下の同じ深度で比較すると、沈降域において上載岩圧が小さくなるため、周囲より鉛直応力が小さくなると考えられる.そのため、沈降域において、水平最大圧縮応力と鉛直応力の差が大きくなり、変形が進みやすくなる可能性がある。
短縮変形において、一旦下向きのバックリングが起こるとそこでは差応力が大きくなり、さらに短縮変形が進行するという正のフィードバックが働く可能性がある。そのため、歪み速度の大きな堆積盆が形成されると考えられる.水平圧縮応力の絶対値が大きい場合、つまり、地殻が高応力状態にある場合は、1,2kmの沈降はそれほど効かないかもしれないが、低応力状態にある場合は大きな効果を持つと考えられる(例えば、吉田・他(2014)による地形とメカニズム解の関係に見られるように).
これらの堆積盆と周辺の山地の境界付近には活断層がある。その運動の逆断層成分により、上盤・下盤側で相対的な隆起・沈降が期待される。しかしながら、絶対的な隆起・沈降については、問題は単純ではない。例えば、半無限弾性体の単純な平面逆断層では、高角でないとそもそも下盤側に絶対的な(遠方から見て)沈降が表れない。断層のある弾性層より下部に粘弾性的な層を導入すると、粘性緩和とアイソスタシーの効果により沈降は生じる。しかしながら、この沈降は、そもそも隆起域の荷重に起因するものであり沈降量は隆起量とせいぜい同程度であるが(例えば、西村・他, 2012)、新潟平野や大阪平野では、沈降量が隆起量に比べて圧倒的に大きい。淡路島では標高数百mの山の上にも大阪層群があるが、盆地下では、対応する層の深さは2km程度である(例えば、堀川・他, 2003)。新潟平野では、西端付近にある変位速度の大きな角田・弥彦断層の上盤側には顕著な山地は存在していない(例えば、石山・他, 2000).
飯尾(2009)は、水平短縮による物質過剰を除去するために、地殻下部でデラミネーションが起こり、地殻が薄くなるために沈降すると考えた。短縮により厚くなった地殻下部で高温・高圧の変成作用が起こり、最上部マントルより重くなって脱落するという考えである。しかし、隆起から一転して沈降となるためには、相当大規模なものが脱落する必要があると考えられる.
飯尾(2009)は短縮域で物質過剰が生じると考えたわけであるが、それは例えば、粘土を短縮するようなイメージである。一方、薄い弾性板の短縮では、バックリングと呼ばれる上か下への一方的な曲がりが起こる可能性も知られている。上への曲がりにおいては、空気中には障害物は無いが、重力に抗するための仕事を必要とする。下への曲がりの場合、海面下の同じ深度で比較すると、沈降域において上載岩圧が小さくなるため、周囲より鉛直応力が小さくなると考えられる.そのため、沈降域において、水平最大圧縮応力と鉛直応力の差が大きくなり、変形が進みやすくなる可能性がある。
短縮変形において、一旦下向きのバックリングが起こるとそこでは差応力が大きくなり、さらに短縮変形が進行するという正のフィードバックが働く可能性がある。そのため、歪み速度の大きな堆積盆が形成されると考えられる.水平圧縮応力の絶対値が大きい場合、つまり、地殻が高応力状態にある場合は、1,2kmの沈降はそれほど効かないかもしれないが、低応力状態にある場合は大きな効果を持つと考えられる(例えば、吉田・他(2014)による地形とメカニズム解の関係に見られるように).